上本ひとし「海域」

大阪ニコンサロン

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瀬戸内海、周防市徳山湾沖合にある大津島に、人間魚雷「回天」の基地跡と資料を展示した回天記念館がある。太平洋戦争末期、悪化した戦局を逆転させる願いを込めて発案命名された「回天」は、大型魚雷を人が操縦し、敵艦に体当たりする特攻兵器である。作者がこの島を初めて訪れたのは二十代前半の、写真を始めた頃で、買ったばかりのカメラを肩に、少し気取った格好で題材探しに大津島に渡った。同年代の青年が祖国のため、愛する家族を守るため、自らの命を犠牲にして散っていった事実を目の前に、高度経済成長期(物欲時代)を育った自分の甘さが情けなく、逃げるようにこの島をあとにしたという。そして還暦を前にして、やっとこの島を再び訪れ、カメラを向ける気持ちになった。基地は周防灘周辺の大津島、光、平生と大分湾大神にあり、出撃を果たすため猛訓練に勤しんだ訓練海域がある。大型魚雷を改造して作られた回天は、操舵が極めて難しく、訓練中の事故で多くの殉職者を出している。この海景はその訓練海域である。とうてい当時の緊迫した精神状態を写真に表現することは出来ないが、海の色、島影は今も変わらずここにある。戦後七十年を迎える今、作者は当時の事実を少しでも次の世代に残したいと願っている。モノクロ40点。

メディア

スケジュール

2013年12月19日 10:30 ~ 2013年12月28日 15:00

アーティスト

上本ひとし

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