by Toshiki Minamiguchi
なんだかわからないけど、なんだかわかる、この感覚はなんだろう?
CDジャケット、企業広告など、数々のビジュアルワークで知られる小澄源太の5年ぶりとなる個展が、&’s SCENE(アンヅ ギャラリー)であった。ひとこと「おもしろいなぁ」というのが、僕のストレートな感想だ。とてもかっこいいし、とてもへんなのもあるし、すんごく心にとどくのもあるし、作家のスピリットみたいなのが、ひしひしと感じられるすばらしいショウだった。そこには、ポートレート、風景、動物(鳥)など、モチーフも、タッチも異なる、さまざまな作品があってギャラリースペースを埋め尽くすかのように展示されていた。これらすべての作品を約3ヶ月で描き上げたという。ほとんどが「妄想」を描いてるのだとか。そのエネルギーのかたまりみたいなのがスパークしてた。引き込まれた。小澄源太の内面のうねりが観る者をまきこみ、はなさないように僕には思えた。
多くは「妄想」を描いたものだが、なかには、マガジンに掲載されてる写真や、ニューヨークの蚤の市で手に入れた誰のものだかわかんない古びた写真を元にしたのもある。想像だけに頼らず、現実、かたち、を確認するためにも、これらの素材を用いてるのだとか。
作品に対して「かっこよさも、ダサさも、気持ちわるさも、許せるようになった。」という作家のコトバにもあるように、さまざまな作品があったので、訪れた人の、作品に対する好みもばらばらだったらしい。が、そこには、悩みも、よろこびも、おかしみも、いろいろあって、なんてったって血がかよってる。
絵の設定もユニークで、たとえば、「美術が得意な中学生の絵」だとか、「過去に自分が描いたかわいくてキャッチーな絵」といった具合に。この、妄想、現実、かっこよさ、おもしろさ、モチーフ、タッチ、メッセージなど、縦横無尽にレベル設定なくスイッチングを繰り返していくスリリングな感覚は、作家の右脳のハンドリングから生まれる本人ならではのズバ抜けたセンスなのだろう。4月には、小澄源太自身が信頼を寄せるアーティスト、コタケマンとのコラボレーション(ライブペインティング)が予定されている。必見かも。なんせ、「妄想」から生まれるマスターピースたちは、笑えるくらいに本質的でかっこいいのだから。
南口俊樹
Toshiki Minamiguchi. ギャラリスト、クリエイター。大阪府在住。コマーシャルギャラリー、fabre8710(ファーブル芸術事務所)のオーナー、ディレクターとして、ギャラリー内外の展覧会企画に携わる。所属アーティストのプロモーション、マネージメントを、国内外において積極的に展開している。また、クリエイターとしても、企業広告のクリエイティブディレクション、コピー制作など、さまざまなコミュニケーション活動に携わっている。