森山大道写真展 「凶区〜Erotica〜」

写真家・森山大道氏の個展「凶区~Erotica~」(5月16日~5月28日)は大阪・梅田駅前、赤い観覧車横のビル「HEP FIVE」の8階で開催されている。

poster for Daido Moriyama

森山大道 「凶区 Erotica」

大阪市北区エリアにある
HEP HALLにて
このイベントは終了しました。 - (2008-05-16 - 2008-05-28)

In レビュー by KABlog2008 2008-05-26

by YAYA

写真家・森山大道氏の個展「凶区~Erotica~」(5月16日~5月28日)は大阪・梅田駅前、赤い観覧車横のビル「HEP FIVE」の8階で開催されている。深いグレートーンの写真は大阪、神戸、長野、山梨、福井、松江、札幌、ニューヨーク、ボストン、サンフランシスコ、サンディエゴ、パリ、ロンドン、アムステルダム、上海、バンコク、ホーチミン、ブエノスアイレス、シドニー、さまざまな都市の空気や人、生き様、日常のスナップショットが映し出されている。ぐいっと飲んでみたいショットだと思う。後味もいい。これらは森山氏が1999年以降の数年間に訪れた街で撮りためた作品である。

会場に飾られた写真の深いグレーの微妙な色合いと動きのある構図、表情は魅力的で、国際的にも高く評価されている。

展示作品の隣の細長い小部屋は観客でいっぱいだった。ドキュメントフィルムを上映している。森山氏の独白に近いインタビュー、新宿での写真撮影の過程、作家のスタジオでの撮影を収録したドキュメントフィルムは大変興味深い。作家の考えや生き様を堪能できるだけでなく、60年代、70年代の日本の写真界の流れが作家と交流の深いアラーキーや関係者達のコメントと共に分かりやすく理解できる。森山氏の「グレートーンがいい」とアラーキーはコメントしている。「アレ、ブレ、ボケ」と形容される荒々しい写真表現で「写真とは何か」を、当時の写真界に問いかけた創作活動についても語っている。

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【画像:HEP HALL 会場風景 】

現世で起きている事象をインスタントにぽっぽっとシャッターを切り、フィルムに収める。独特のプリント方法で色調や風合いを出す。作家自身も二度と同じ写真は焼けないとコメントしている。
森山氏は「あらゆるものを複写する装置がカメラ」なので「はじめから複写するところから始める方がカメラの本質に合っている」と言う。「美意識や観念的なものを0から作り上げるのがアート」とするならば、森山氏にとっての写真は「社会にあるバラバラの観念を複写する」ことなのだ。つまり「都会の断片をインスタントに撮る」感覚でカメラに収めていく。

使用するカメラは一眼レフより、感じたらすぐ撮れるコンパクトカメラがいいという。「スナップは一眼レフより抵抗感なく撮れる。隠し撮りしやすい。」何よりも「気分に合う」らしい。美しい観念をイメージ化した写真だけが写真ではない。「写真とは何か」を時代に問い続ける森山氏。
「HEP FIVE」の赤い観覧車へは同ビル7階から乗車できる。1周約15分間。
ワン・コインで大阪の都市を上空から、あなた自身のスナップショットを感じてみるのもいいかもしれない。

YAYA
現代アーティスト。NY大学アート学部アート学科卒。NY大学ベニス・プログラム受講。その他ロンドンのセントラル・セントマーティン・カレッジ・アーツ&デザインで学ぶ。2003年より東京大手町でJAXA,三菱地所等の企業とコラボレーションし発表する。2007年夏スペイン政府、サンタンデール港湾局がスポンサーでアーティスト・イン・レジデンス・プログラムに選ばれる。サンタンデールで制作発表をする。猫好き。

KABlog 2008

KABlog 2008 . 関西アートビートが、大阪のベルギーフランドル交流センターとNPO法人GADAGOの共催で運営されていた2007年4月〜2008年7月当時の記事です。 ≫ 他の記事

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