神戸を拠点に文化活動を推進する非営利団体「C.A.P.」(芸術と計画会議)のスタジオにてユニークな作品展が開催されています。
「フレームズ展」は、通常は作品を装丁するフレーム(額)自体をテーマにした作品展です。
陶芸家、彫刻家、絵画作家など、ジャンルを問わず各分野で製作活動をしている作家たちによる、様々な額を用いた表現が作品として展示されています。
今回の作品展の発端として、美術作品用の額を専門に扱っている「一風堂」というお店より、使われていない額を有効利用して欲しいという申し出が「C.A.P.」にあったそうです。
そして、様々な種類の額を抽選で作家に割り当て、額のために作品を制作するという試みをテーマとした今回の作品展へと至りました。約二か月の製作期間を経て出来あがった作品群は、枠にとらわれない多様な表現となっています。
作家の中には、普段とは全く違う試み(例えば陶芸作家によるコンセプト重視の作品作りなど)をされている方もいます。中には割り当てられた額自体を使わなかった作品もあります。
彫刻家として活動する築山氏は、木製の額を壁に対して斜めに取り付けライティングを施し、その影の重なりににより作品を成立させています。
普段から自身の作品を額装するときにその影の出方を注意深く意識している藤本氏は、今回の作品展では、大判のアクリルの額をテーマに割り当てられました。アクリル板の表面に付着した水や埃が影となり浮かび上がる独特の質感を、ライティングで捉えた状態を展示しています。
「C.A.P.」の代表をつとめる杉山氏は、画面を2等分していくことで現れる額内のエリアに、サイコロを振って出た目に依って色を塗るという行為を、毎日積み重ねることで「額に絵を選んでもらう」という作品を展示しています。毎日決められたルールに従って塗っていくことと、偶然性によって塗っていくことのバランスにより仕上がった作品です。
山村氏は、本来、支持体があって初めて成り立つ額に対して、「額に何も支持体を与えない」というテーマに至り作品を制作しました。コンセプトを考えるにあたり「額にとってしてはいけないこと」をまず考たそうです。ただし、氏は額の制作者と知り合いということもあり、額を壊す、燃やす、といった破壊的な行為は除外しました。最終的に自分の真上に「額を投げる」という行為を作品テーマに定め、実際に「額を投げる」という行為を執り行い、その瞬間を捉えた写真作品を、「投げられた額」の中に装丁し展示するという作品となりました。
展示会場である、CAP STUDIO Y3が入っている建物は、もともとはブラジルに移住する人たちが、移民としてブラジルに渡る航海の前に、厳しい船旅に備えて一週間研修するためのという移民センターでした。その後、一時は看護学校だったこともあるそうです。現在は、建物の一部が「C.A.P.」の作家たちのための創作活動の拠点になっています。
今回の展示を観ると、フレームや枠の機能、入れ物と中身の関係性から普段は考えつかないような発想を促す頭の体操になるかもしれません。神戸の北野坂から程近い丘に位置する「C.A.P.」のY3スタジオで開催中のフレームズ展に、枠を外す思考のための散歩はいかがでしょうか?