PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015

芸術祭参加作家第1弾が発表!

In ニュース by Megumi Takashima 2014-04-18

2015年3月に開幕する「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015」(以下PARASOPHIA)の第2回記者会見が開かれ、展覧会構成と参加作家第1弾が発表された。

「PARASOPHIA」という造語には、sophia(叡智、学問体系)な物事をpara(別の、逆の、対抗的な)的な視点で調査・研究し、独自の解釈を探っていくという意味が込められている。アーティスティック・ディレクターの河本信治氏は、「京都は、学者や科学者を生み出してきた、知の蓄積がある街。PARASOPHIAによって、文化的・理的な知性が京都に集まり、新しい知を生み出すプラットフォームができれば。また、世界中で数百にのぼる国際展が開催されている中、巨大なフェスティバルでなく、都市の大きさに合った規模の国際展にしたい」と展望を述べた。

PARASOPHIAのメイン会場は、京都市美術館と京都府京都文化博物館の2つが発表された。
また、参加作家第1弾として、予定数約40名の2割にあたる、8名が発表された。
河本氏によれば、京都との結びつき、play(遊び)の要素、視覚的に楽しめ、かつ深い読み解きが可能であること、が選考のポイントであるという。

蔡國強(1957年中国生まれ)は、北京オリンピック開会式の花火の演出や、火薬で描く「火薬絵画」で世界的に知られる。また、中国僻地の農民が日常的な材料で自作したロボットや飛行機などを収集する「農民ダ・ヴィンチ」プロジェクトを10年近く続けており、この一部が出品作の核となる。

ヘフナー/ザックスは、フランツ・ヘフナー(1970年ドイツ生まれ)とハリー・ザックス(1974年ドイツ生まれ)によるユニット。都市環境下の建築と居住の問題を、過激なユーモアを盛り込んで作品化している。2006年の《Honey Neustadt》プロジェクトでは、旧東ドイツの労働者向けプレハブ住宅を模したミニ住宅を作り、駆除の対象になったミツバチ用の住居とし、収穫した蜂蜜を美術作品として販売した。PARASOPHIAでは、京都での長期滞在と都市調査に基づくプロジェクトが構想されている。

石橋義正氏(1968年京都生まれ)は、ダムタイプと並んで京都における分野横断的なパフォーマンスグループである「キュピキュピ」を主宰。美術、音楽、映像の融合と、3D映像を使用したエンターテイメント性の高い作品で知られる。2010年に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で個展を開催し、世界各地の美術館や国際展に招待されている。


ピピロッティ・リスト(1962年スイス生まれ)は、男性社会が女性に投げかけるクリシェを 巧みに逆用し、男性の眼差しの偏見を暴露するようなフェミニズム的要素の強い映像インスタレーション作品で知られる。近年は、抽象的かつ装飾的な表現を通して、映像における豊かな色彩を追求している。


ウィリアム・ケントリッジ(1955年南アフリカ共和国生まれ)は、「動くドローイング」とも呼ばれる素描をコマ撮りした手描きアニメーション・フィルムで世界的に知られる。2009–10年に京都国立近代美術館ほか2都市での大規模な個展を開催、2010年に第26回京都賞(思想・芸術部門)を受賞するなど、京都との関係も深い。2012年ドクメンタ13に出品されたビデオ・インスタレーション《時間の抵抗》は、PARASOPHIAのプレイベントとして、今年2~3月に京都市の元・立誠小学校講堂で展示された。


スーザン・フィリップス(1965年イギリス生まれ)は、サウンドインスタレーションを制作するアーティスト。作品は、高架下やスーパーマーケットなど、日常的な騒音がある場所に置かれることが多く、設置場所に応じて選ばれる歌は、しばしば政治的、社会的な意味を持つ。2007年ミュンスター彫刻プロジェクト、2012年ドクメンタ13に参加し、2010年ターナー賞を受賞。

ドミニク・ゴンザレス=フォルステル(1965年フランス生まれ)は、自身が「ルーム」と呼ぶ一連の部屋のインスタレーションを制作している。映像、光、音、家具を組み合わせた作品は、知覚を通じて鑑賞者の記憶を刺激し、室内を物語に満ちた本であるかのように変容させる。昨年9月のオープンリサーチプログラム03では、PARASOPHIAのための最新の習作《M.2062 (Scarlett)》が実演された。


やなぎみわ氏(1967年神戸生まれ)は、制服姿のエレベーターガールの写真シリーズなど、現代社会に生きる女性を扱った作品で90年代半ばから注目を集める。近年は演劇志向をより強め、築地小劇場を題材とした演劇三部作『1924』(2011–12)を上演。今年8月開幕のヨコハマトリエンナーレ2014では、中上健次の『日輪の翼』を舞台化する移動舞台車を発表。PARASOPHIAでは、その舞台車を引き継ぎ、京都での移動演劇の上演を目指す。

日本国内では2000年代以降、越後妻有アートトリエンナーレ(2000年~)、ヨコハマトリエンナーレ(2001年~)、瀬戸内国際芸術祭(2010年~)、あいちトリエンナーレ(2010年~)、また今年7月には札幌国際芸術祭が開催されるなど、大型国際展が相次いで開催されている。そうした中、後発の京都がどう独自性を出せるかが今後注目される。

京都ならではの特色として、PARASOPHIAでは作家と京都との対話を重視し、「テクニカルサポート」を行うことを発表した。現代美術作家のヤノベケンジ氏が率いる京都造形芸術大学内の「ウルトラファクトリー」と、彫刻家の名和晃平氏が主宰する「SANDWICH」という、トップレベルの現代美術の工房が、招聘作家の作品制作やプロジェクト実現に協力する。

また、大学関係者と協同し、将来、京都で国際展を運営できるような人材育成を目指すことも盛り込まれた。PARASOPHIAプロフェッショナルアドバイザリーボードの吉岡洋氏(京都大学大学院文学研究科美学美術史学教授)および学生ボランティアが制作に関わり、オフィシャルマガジン『パラ人』創刊が発表された。今後は季刊として年4回発行し、5回目はPARASOPHIA開催時のプログラム冊子としての発行を目指す。

なお、参加作家の残り7割は、第2弾として9月末に発表され、残り1割は直前まで伏せられたまま進行する。
PARASOPHIAでは、準備期間に行われる調査研究プロセスの一般公開として、「オープンリサーチプログラム」が昨年6月より開催されてきた。4月20日(日)にはスーザン・フィリップス、29日(火・祝)にはピピロッティ・リストのレクチャーが予定されている。同芸術祭の今後の方向性を知るためにも、注目のイベントと言えるだろう。

PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015
http://www.parasophia.jp/
会期:2015年3月7日(土)~5月10日(日)
会場:京都市美術館、京都府京都文化博物館ほか府・市関連施設など

Megumi Takashima

Megumi Takashima . 美術批評。京都大学大学院博士課程。現在、artscapeにて現代美術や舞台芸術に関するレビューを連載中。企画した展覧会に、「Project ‘Mirrors’ 稲垣智子個展:はざまをひらく」(2013年、京都芸術センター)、「egØ-『主体』を問い直す-」展(2014年、punto、京都)。 ≫ 他の記事

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