アートバーゼル香港2014と香港のアートシーン

コンテンポラリーアートの祭典

In 特集記事 by Chisai Fujita 2014-05-21

今年2014年に2回目を迎える「アートバーゼル香港」。世界屈指のアートフェアのアジア版として知られ、会場には世界中から最新のコンテンポラリーアートを求める人たちであふれていた。

■日本の出展ギャラリーは全体の1割以下

「アートバーゼル香港」は、メインセクターの「ギャラリー」、アジアおよびアジア太平洋地域に展示スペースを持つギャラリーのディレクターによる「インサイト」、世界の若手アーティストを個展あるいは二人展の形式で見せる「ディスカバリー」、キュレーター長谷川祐子がキュレーションした「エンカウンター」、そして近接する香港アートセンターagnes b. CINEMAで上映する「フィルム」というセクターに分かれている。

39カ国245のギャラリーが出展し、これらのギャラリーはいずれかのセクターに作品を展示し、すべて販売している。日本のギャラリーは21、昨年の出展数では変わらないが、全体でみると1割以下にしかすぎない。世界でも選ばれたギャラリーしか出展できない、その審査に合格することがとても難しいのだろう。

そうはいっても、アーティストには国籍は必要がない。つまり、日本のギャラリーだから日本人を紹介するとは限らず、海外のギャラリーが日本人アーティストを展示する、という意味である。

■躍進する関西系アーティスト

まず、金氏徹平。

この画像はシンガポールの版画工房STPIのブースで撮影したもの。実は金氏は、今回のアートバーゼル香港に5つのギャラリーから出展している。カラフルでポップな彼のアートワークは、おそらく国というバリアを超えて親しまれているのだろう。

さらに、名和晃平。

韓国でのパブリックアートを成功させた名和は、今回韓国のARARIO GALLERYと日本のSCAI THE BATH HOUSEから作品を出している。全体からみれば小品とも言えるサイズだが、しかし名和の近作が並んだ。

そして、手塚愛子。

10年近く前に京都市立芸術大学の大学院を修了した手塚は、現在拠点を置くドイツ・ベルリンのギャラリーから出品していた。ブースを見上げるような形でのインスタレーションに、問い合わせをしている人がちらほらいた。

もちろん日本のギャラリーから出している日本人アーティストも見逃せなかった。

例えば、本堀雄二。

神戸出身の本堀は、仏像を輪切り状にして再構成した立体作品をつくっている。今回は色のある背景、周囲の仏像たちとともに軽やかな世界をつくりだした。

そして現代美術の先達、河口龍夫。

神戸にあるギャラリーヤマキファインアートからは、1960年代から日本の現代美術を牽引してきた河口龍夫の代表作が並んだ。折りからのGUTAIブームの流れに続く河口の作品を、ギャラリーが紹介すること、それをマーケットがどう評価するかということはとても興味深い。

また、関西の学校で学んだ風能奈々は、東京の 小山登美夫ギャラリーから 出品した2点の作品が25,000USドルで売れていた。このように関西ゆかりのアーティストたちは、確実に世界と戦い、共存している。私たちはどれだけ日本の外を見て、動いているのだろうか。

■香港のアートシーン

香港の中心地である中環エリアや上環エリアには、レベルやサイズはまちまちだが、コンテンポラリーのギャラリーがひしめいている。あるいはバスに乗って30分~1時間、香港島の南部エリアの倉庫や雑居ビルにも、ギャラリーが入るようになった。特にこの1年、アートバーゼル香港がはじまってからの1年のうちに、欧米系ギャラリーがアジア支店を持つようになっている。ちなみに日本には欧米系のギャラリーはほとんどなく、2008年のアートバブルがはじけて以降、新しくギャラリーができることも少なくなった。分かるように、世界的に見てもアジアンアートの中心は、今や香港であると断言しても間違いないだろう。

商業的な流れはガイドブックなどで知ることができるなか、今回アートバーゼル香港の期間中、会場となった香港コンベンションセンター、インディペンデントのアーティストたちが集う牛棚芸術村(Cattle Depot Artist Village)、アート系書店やパブリックアートが並ぶ観塘(Kwan Tong)エリアなどをまわる「アートバス」が走っていた。

この小さな無料のバスに乗ると、英語、中国語の両方でガイドを聞きながら、アートスポットに連れて行ってもらえる。停車場で降りると、参加者は各自で観覧し、30分ごとに走るバスに乗って次のアートスポットへ、と移動するという仕組み。日本でもゆとりのあるアートイベントで見かけるバスだが、ローカルの言語だけでなく英語で対応しているところが香港らしいと思う。

■Asia Contemporary Art Show 2014へ

香港のコンラッドホテルでのAsia Contemporary Art Show 2014も見に行った。ART OSAKAのようなホテルでのアートフェアである。このフェアには、イタリア、フランス、スペインなどのヨーロッパのギャラリーが多く出展していたことが印象的であった。

数少ない日本のギャラリーのなかでも、大阪にあるTEZUKAYAMA GALLERYが昨年に引き続き出展。部屋はお客さんで混んでおり、英語での交渉が飛び交っていた。今回は上原浩子やタムラサトルといったギャラリーの人気作家の立体作品だけでなく、ベッドの上に待場崇生の立体作品を置くことでインパクトのある部屋を演出していた。

■まとめ

日本のギャラリーというと、東京がメインに感じる。しかしアートフェアで販売される作品、つまり制作するアーティストは関西ゆかりの人たちが多い。どの国でもアーティストは首都で生活や制作をしているわけではないし、もはや国やエリアというくくりはアーティストにとって必要とも思えない見えないバリアであろう。それをくみ取るギャラリー、あるいは私のようなジャーナリストが、どう世界へ引っ張っていくか。アートという競争社会の中で、さらにグローバル化が叫ばれる現代において、私たちはひきこもってはいけない。みなぎるアーティストの野心とたくましさが並ぶアートバーゼル香港で、これからのマーケット、私たちの打つ一手を見極める必要があると私は勝手に想像していた。

写真撮影:藤田千彩

Chisai Fujita

Chisai Fujita . 藤田千彩アートライター/アートジャーナリスト。1974年岡山県生まれ。玉川大学文学部芸術学科芸術文化専攻卒業後、某大手通信会社で社内報の編集業務を手掛ける。5年半のOL生活中に、ギャラリーや横浜トリエンナーレでアートボランティアを経験。2002年独立後、フリーランスでアートライター、編集に携わっている。これまで「ぴあ」「週刊SPA!」「美術手帖」など雑誌、「AllAbout」「artscape」などウェブサイトに、展覧会紹介、レビューやインタビューの執筆、書籍編集を行っている。2005年から「PEELER」を運営する(共同編集:野田利也)。鑑賞活動にも力を入れ、定期的にアートに関心の高い一般人と美術館やギャラリーをまわる「アート巡り」を開催している。また現代アートの現状やアートシーンを伝える・鑑賞する授業として、2011年度、2014年度、2015年度愛知県立芸術大学非常勤講師、2012年度京都精華大学非常勤講師、2016年度愛知県立芸術大学非常勤研究員、2014~ 2017年度大阪成蹊大学非常勤講師などを担当している。 写真 (C) Takuya Matsumi ≫ 他の記事

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