プライベート・ユートピア ここだけの場所

「壁のない美術館」ブリティッシュ・カウンシルによる選りすぐりの作品達

poster for Private Utopia: Contemporary Art from the British Council Collection

「プライベート・ユートピア ここだけの場所 - ブリティッシュ・カウンシル・コレクションにみる英国美術の現在 - 」展

兵庫県(その他)エリアにある
伊丹市立美術館にて
このイベントは終了しました。 - (2014-04-12 - 2014-05-25)

In フォトレポート by Chiaki Ogura 2014-05-07

ブリティッシュ・カウンシルのコレクション展が、伊丹市立美術館で開催されています。同展覧会は2014年1月~2015年2月、東京、伊丹、高知、岡山の4都市を巡回する展覧会になります。ブリティッシュ・カウンシルは、ロンドンに本部を置き、アート分野で積極的に活動を行っている英国の国際文化交流機関です。

20、21世紀の英国美術コレクションとしては世界屈指の規模を誇り、その作品数は約9000点にのぼり、彫刻・絵画・ドローイング・映像からインスタレーションまで多岐にわたっています。常設の展示場を持たないところが、特徴的であり、「壁のない美術館(Museum Without Walls)」と称されています。

会場は5つに分かれていて、ゆるやかなテーマ性に沿って作品が展示されています。学芸員の藤巻さんの「作品を見た方が自由に感じて、それぞれを繋げてもらいたい」という思いにも納得の展示となっています。

今回の展示約120作品の中には、ターナー賞の受賞作家の作品が多数見られます。ターナー賞は、現代美術の最も重要な賞のひとつとして注目を集めているものです。

また、ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)と呼ばれる、1990年代の若手作家の作品も見られます。彼らが注目されるようになり、英国では現代アートのマーケットも広がったとも言われています。

Tシャツやカードなど商品化されている作品も多い、デヴィット・シュリグリー。そのウィットにとんだ作品は、日常の疑問をダジャレや皮肉で拾い上げ、ユーモアを感じさせます。まるで生きているかのように見える剥製の犬が、「アイム・デッド(私、死んでいます)」というプラカードを掲げるこの作品。「ナンセンス」な題材を「メイク・センス」に置き換える感性の豊かさが感じられます。

マーカス・コーツの《自画像》シリーズは、自らの体をシェービングクリームの泡やコットンなどの日常的な素材で覆っています。自分自身を別の存在に変化させるために、アレンジするという、人間が誰しも持つ「変身願望」を、子どものような無邪気さとともに具現化しています。

マイク・ネルソンは、あるアーティストのスタジオを再現しています。作品を制作中のアーティストが部屋を離れ、戻ってくるまでの不在時の様子を切り取っています。机の上の道具や石やおもちゃは、何かしらの目的や意味を持って配置されているようです。

主に、立体やインスタレーションを行うアーティストのコーネリア・パーカー。「日常」にある素材を加工し、また破壊することで、普段見えている景色を特別な景色に変えさせます。「隕石落下」シリーズでは、実在する街の地図帳にもしこの場所に隕石が落ちたら…」と仮定して、隕石を使用して焦げ穴をあける作品を制作しています。自然の力の強大さと人間の無力さを、黙示録的に考えさせるものとなっています。

既製品や日用品を作品に汎用することで、美術の概念も拡大してきました。「流用」や「汎用」といった表現手法を鮮やかに使いこなしている作品も見られます。そして、英国アーティストの多くはみなその手法をとる際に、ちょっとしたいたずらや遊びの要素を取り入れ、ユーモアを欠かしません。

サラ・ルーカスの生々しいセルフポートレイトは、メディアや他者の視線を導入することで、自らを客体化しています。タバコ・食べ物などのオブジェと自分を組み合わせて、様々なポーズで撮影された彼女の作品は、洒落の効いたタイトルも合わさり、鑑賞者の好奇心をくすぐります。

記憶と忘却をテーマとしているローラ・ランカスターの作品は、オークションや廃棄場所などからよせ集めた、ポラロイドや紙焼き写真をアレンジしたものです。のちに思い返すために撮影られた私的な思い出の品、それを曖昧に色づけすることで、歴史と記憶と想像の境界がぼやける世界が広がります。

会場に飾られているブリティッシュ・カウンシル・コレクションの2点のバナーは、エド・ホールによって制作されています。1つのバナーには、コレクションの「古典的な」作品が、もう1つは「より現代的な」側面を示す作品が描かれています。

途中のコーナーでぜひ見て欲しい展示が、英国美術を世界中に運ぶための特製のクレート(木箱)です。展覧会がある度にこの箱ごと、世界を旅しているのです。

公式HPよりメイキング映像などを視聴することができます。

その他にも作家のインタビューなどを視聴することが出来ます。
https://www.youtube.com/user/BritishCouncilJapan

ぜひこの機会に、英国ならではのユーモアを体験してみませんか。

Chiaki Ogura

Chiaki Ogura . 岡山県出身。広告代理店・広報部にて勤め、現在はフリーライター・フォトグラファーとして活動中。ジャンルは幅広く、雑誌やWEB媒体などで執筆。ベンシャーンやアンディ・ウォーホルに感銘を受け、アートの世界に。ギャラリーや美術館の空間をこよなく愛する。作品を目の前にしたときの、右脳がぐらっと動かされる感覚がたまらない。comocomo.cafe ≫ 他の記事

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