KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2014

全11組のアーティストによるプログラム全容発表!

In ニュース by Megumi Takashima 2014-07-22

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2014年9月27日〜10月19日に開催される「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2014」(以下KYOTO EXPERIMENT)の記者会見が行われ、全11組のアーティストによる公式プログラム12作品の全容が発表された。

5回目となる今年は、次代を担う国内の若手アーティストを積極的に選出するとともに、ニューヨーク、ベルリン、ブエノスアイレス、パリといった海外のアーティストを招聘。同芸術祭実行委員長の森山直人氏は、「『experiment=実験』という言葉の意味を改めて問いたい。今年は第一次世界大戦勃発の100年目にあたるが、当時は時代の激変の一方で前衛芸術の様々な実験が行われていた。時代の趨勢に対して違う価値観を問いかけることが、『experiment=実験』ではないか。多面的に現代と向き合うフェスティバルにしたい」と述べた。

会場は、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、元・立誠小学校、京都府立府民ホール“アルティ”などこれまでの開催会場に加えて、西京極スタジアムを使用する初めての試みもある。プログラムの特徴としては、「1)過去4回の開催で培った国際的なネットワークを活かし、公式プログラムの半数以上が共同製作であり、アーティストの創作の場としても機能すること。2)公式プログラム以外にも、フリンジ企画「使えるプログラム」、「オープンエントリー」計25作品、トークや展覧会など関連イベントを開催することで、京都の街へ面として広がる試みであること。3)スポーツと芸術、親子関係、古典とどう向き合うか、震災後の日本社会など、複数の現代的なトピックが含まれること」が挙げられた。

以下では、公式プログラムの中から、特に現代美術の観客にも興味深いと思われるものを中心に紹介する。

●高嶺格『ジャパン・シンドローム〜 step3. “球の外側”』(2014年9月27日〜29日 元・立 誠小学校 講堂)
美術作家の高嶺格は、2011年から「ジャパン・シンドローム」シリーズを展開し、継続的にKYOTO EXPERIMENTに参加している。映像インスタレーション、舞台パフォーマンス、京都市役所前広場でのパブリックビューイングなど、形を変えながら発表されてきたシリーズ作品は、震災後の日本社会の変化や私たちの心理的な反応をすくい上げてきた。シリーズ完結編となる本作では、高嶺のテキストを核とした舞台作品が予定されており、「これまで以上に直球の作品になるのでは」と高嶺は述べている。

●contact Gonzo『xapaxnannan(ザパックス・ナンナン):私たちの未来のスポーツ』 (2014年10月15日 西京極スタジアム)
殴り合いのような即興的パフォーマンスで知られ、サウンドインスタレーションも制作するなど、国内外の美術展にも多数参加しているcontact Gonzo。今回は、収容規模2万人を超える巨大なサッカースタジアムでパフォーマンス作品を発表し、バンド「にせんねんもんだい」が生演奏でバックアップする。その理由として、「スポーツの背後にある訓練が、どのような感情や意味で変遷していくのか」「観客との距離の遠さや音楽など、どのような状態で視覚的な肉体を見せられるか」という問題意識があると述べるcontact Gonzo。パフォーマンス、スポーツ、ライブが一体となった試みが期待される。

●悪魔のしるし『わが父、ジャコメッティ』(2014年10月16日〜19日 京都芸術センター 講堂)
複雑な形の構造物を作って参加者とともに建物の中に運び込む「搬入プロジェクト」で知られる悪魔のしるし。本作は、痴呆が始まった画家の父が、若い頃に憧れたジャコメッティと自分を混同し、息子をモデルの矢内原伊作だと思い込み、父と子が奇妙な演劇的生活を始める物語。主宰の危口統之と実際に画家である彼の父親がそれぞれの役を演じるという、虚実入り混じった設定も注目される。

●金氏徹平『四角い液体、メタリックなメモリー』(2014年10月4日〜11月3日 京都芸術 センター ギャラリー北・南)
美術作家の金氏徹平は、チェルフィッチュの岡田利規演出作品やARICAなどの舞台美術も近年手がけている。今回は、「中身のない舞台美術」という発想を出発点に、琳派400周年記念祭事業の一環として、琳派との接点を探る試みでもあるという。ギャラリー北では、虚構の舞台を思わせる「Model of Unknown Stage」シリーズの最新作を展示予定。ギャラリー南では、会期中、美術作家、ミュージシャン、役者らが参加する4つのイベントが予定されている。

この他にも、タップダンス教室を舞台に人生の機微を描くティナ・サッター/ハーフ・ストラドル『House of Dance』、日時や行動の指示を出演者(候補)に手紙で送り、従った者たちが当日舞台に集うという村川拓也『エヴェレットゴーストラインズ』、アルゼンチンを拠点とする新鋭振付家のルイス・ガレー『マネリエス』『メンタルアクティヴィティ』、古典的バレエ音楽「春の祭典」や母親との対話を通して現代社会の女性の存在を問うShe She Pop 『春の祭典―She She Pop とその母親たちによる』、演出家とのコラボレーションによって歌舞伎演目の現代化を試みてきた木ノ下歌舞伎『三人吉三』、ナイトクラブの熱狂のようなダンスとジェンダー観を兼ね備えたフランソワ・シェニョー&セシリア・ベンゴレア『TWERK』、東日本大震災と原発事故を題材にした、ノーベル賞作家エルフリーデ・イェリネクのテキストを舞台化した地点『光のない。』が上演される。

公式プログラム以外にも、関連イベントとして、contact Gonzoの展覧会がGallery PARCで9月18日~28日に開催。また提携プログラムとして、hyslomの展覧会「美整物―< 例えば>を巡る」が京都芸術センター ギャラリー北・南で9月5日~28日に開催される。 普段は舞台芸術になじみがない方も、美術との接点があるプログラム観劇をきっかけに、この秋は、ダンスや演劇作品に触れてみてはいかがだろうか。

KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2014
会期:2014年9月27日〜10月19日
会場:京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、元・立誠小学校、京都府立府民ホール “アルティ”、西京極スタジアム、Gallery PARCほか

Megumi Takashima

Megumi Takashima . 美術批評。京都大学大学院博士課程。現在、artscapeにて現代美術や舞台芸術に関するレビューを連載中。企画した展覧会に、「Project ‘Mirrors’ 稲垣智子個展:はざまをひらく」(2013年、京都芸術センター)、「egØ-『主体』を問い直す-」展(2014年、punto、京都)。 ≫ 他の記事

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