KAB読みもの探訪!《第2弾》

映像作家の愛読書とは?

In インタビュー by KAB Interns 2014-08-22

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本紹介インタビュー、第2回はアニメーション作家の水井翔さんにお答え頂きました。水井さんは大阪の映像制作会社に勤務しながら、作家として活躍しています。可愛らしくもどこか切ない作品は、数々の映画祭などで高い評価を受けています。

水井さんの作品はこちらから。

Q1. 現在のお仕事や進行中の企画など、近況についてお聞かせください。

「2014年3月に、尾道市立大学大学院を修了しました。大学ではデザインコースに所属し、ストップモーションとCGを活かしたアニメーション作品を制作しました。現在は株式会社タケナカで、プロジェクションマッピングやイベント映像などを担当しています。修了制作の『WORMY』は、国内コンペやイタリアのModix International Animation Festivalにもノミネートされました。10月には札幌国際短編映画祭のオフシアターでの上映が決定しています。」(水井)

水井さんの修了制作「WORMY」

大学時代から一貫して映像制作の技術を磨いている水井さん。いまは個展などの予定はないそうですが、今後のご活躍を期待したい作家さんです!(Chihiro)

Q2. キャリア形成において影響を受けた本や、人生の愛読書などをご紹介ください。

①白木彰『デザイン屋の散歩道』(みずほ出版、2010年)Amazon

「著者の白木先生は愛知県立芸術大学の教授で、私の母校でもデザイン論などの授業で教鞭をとっています。先生の話はいつも簡潔ながら、文字1つ1つの意味を紐解くように、内在する言葉の意味を考えさせてくれます。私が受けた授業で印象に残っている話は「抽象」の意味と各々の「真骨頂」の話です。
ここで端的に述べるのは難しいですが、まず「抽象」の「抽」、つまり「抽出」の「抽」の意味を考える所から始まります。自身の、あらゆる場面で「美しい」と思う感情が最も抽出されたものが抽象であり、その理想の先にあるものが真骨頂なのだという内容でした。(一方向ではなく生活や趣味、様々な刺激がもの作りを形成しているのだと改めて理解出来る内容でした。)この本では、タイトルに「散歩道」とあるように、日々の生活においてデザイン屋の視点から時にはまじめに、そしてユーモラスに語ってくれます。」(水井)

主にグラフィックデザインの分野で活躍されている白木先生。かたちや色彩によって人の感情にどのように訴えかけるかという部分は、デザイナーにとって大切にしなければならない要素かもしれませんね。(Chihiro)

②佐藤英次『京都洛北岩倉 蝶々図鑑 佐藤英次コレクション』(コトコト、2008年)Amazon

「京都岩倉の里山で観察できる蝶々の図鑑です。それぞれの個体が標本のように写真で掲載されている為、絵を描く資料としても見やすいです。著者の里山での観察記録や活動が書かれており、蝶と環境への愛情を感じられます。また、暮らしの変化による里山とギフ蝶への影響なども書かれています。種の存続が危ぶまれる個体は奇形が多くなる様ですが、何気なく見ている蝶もそういった個体を見ると『大丈夫かな?』と思ってしまいます。今でもよく本を開きますが、改めて蝶って綺麗だなと思います。」(水井)

蝶々の羽はとても色鮮やかで、まさに自然の芸術ですよね!著者の昆虫採集日記なども併せて紹介されており、眺めているだけでも楽しそう。自然の中にある美にも目を向けて、インスピレーションの源にしているのですね。(Chihiro)

③山村浩二『アニメーションの世界へようこそ』(岩波書店、2006年)Amazon

「世界のアニメーションの歴史と技法・技術や著者自身の制作を交えて、アニメーションの世界が描かれています。学生の頃、アニメーションを制作する中で好きな作家や作品はありましたが、映像の歴史や技法についてほとんど感心がありませんでした。でもこれから研究するのに少しくらいは知っておかないと、と思って読み始めた本です。様々な作家や技術、歴史について小学生でも興味が持てるようにわかりやすく書いてあります。世界には自分の知らない表現のアニメーションがたくさんある事を知れたし、各々の表現の効果に興味が湧きました。表現方法について考えるきっかけになった本です。」(水井)

著者の山村浩二さんは、CMや教育番組で数多くのアニメーションを制作されています。アニメはいまや日本を代表する文化のひとつ。この本で、アニメの歴史をおさらいしてみてはいかがでしょうか?(Chihiro)

Q3. よく行く書店や、ご利用されるネット書店についてご紹介ください。

「社会人になってあまり本屋に行く時間がないですが、どうしても見ておきたい、チェックしたい本があるときは心斎橋のStandard Book Cafe、もしくは昼休みに職場近くのデパートの本屋に行きます。」(水井)

ネット書店が拡大していても、気になる本は自分の目で確かめてから買いたいものですよね。夜遅くまで開いている書店は、忙しい方には重宝すると思います。(Chihiro)

デザインやアニメーションについて、作り手の視点から本をご紹介頂きました。デザイナーの心得は、私たちの普段の生活においても参考になるのではないでしょうか。
水井さん、ありがとうございました!

[KABインターン]
渡辺千尋:兵庫県生まれの瀬戸内海育ち。大学院でフランス近代美術を研究中。現代のアートマーケットの仕組みに関心があります。アートとサッカーをこよなく愛しています。

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KAB Interns . 学生からキャリアのある人まで、KABの理念に触発されて多くの人達が参加しています。2名からなるチームを6ヶ月毎に結成、KABの中核といえる膨大なアート情報を相手に日々奮闘中!業務の傍ら、「課外活動」として各々のプロジェクトにも取り組んでいます。そのほんの一部を、KABlogでも発信していきます。 ≫ 他の記事

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