関西のアートシーンで活躍する皆さんの愛読書をめぐるKAB読みもの探訪、第4回はアート写真家の増田貴俊さんです。主に神戸に拠点をおき、ギャラリーや芸術祭の運営にも携わりながら活動されています。
増田さんの作品はこちらから。
Q1. 現在のお仕事や進行中の企画など、近況についてお聞かせください。
「写真作家を目指して活動すると同時に、六甲山国際写真祭を運営しているRAIEC-六甲山教育と交流の芸術構想-にインターンで参加しています。」(増田)
RAIECは写真を通じての教育やコミュニケーションを目的として、六甲山国際写真祭のようなイベントを運営するほか、写真分野の芸術的・学術的発展を目指しています。アートとしての写真に興味のある方は、RAIECの企画をチェックしてみてはいかがでしょうか?(Chihiro)
Q2. キャリア形成において影響を受けた本や、人生の愛読書などをご紹介ください。
①大和田良『ノーツ オン フォトグラフィー』(メディア・パル、2010年)Amazon
「社会人として働きながら写真作家を目指そうと考えはじめた時に、友人に勧められて読んだ本です。著者が大学で写真を学びはじめたところから話が始まり、大学生活やその後の写真活動など自身の半生を語りながら、写真家として活動するために必要な知識をわかりやすく解説されています。
これから写真家として活動するにはどうするべきか、何が必要となってくるのか、ビジョンが見えたことで写真家になろうと決心するきっかけになった一冊です。写真作家を目指す方や、写真作家の活動に興味がある方にぜひお勧めしたいです。同じ著者の『伝わる、写真。』(マイナビ、2012年)も併せて読んでいただきたいですね。」(増田)
私たちが趣味で撮影する写真と、報道写真、そしてアートとして扱われる写真では、方法論が異なってくるのかもしれません。写真家という職業について知るにも興味深い一冊です。(Chihiro)
②山中俊治『デザインの骨格』(日経BP社、2011年) Amazon
「長年プロダクトデザイナーとして活躍されている著者のブログ集です。身の回りの製品やデザインについて、デザイナー視点で思ったこと、興味深い活動をされている人物の紹介などがまとめられています。著者が関わったプロダクトデザインの裏側や、既製品を分解して見えた企業のデザインに対する姿勢など、多岐に渡る内容を通してモノ作りや考え方について知ることができます。
大学でプロダクトデザインを学び、メーカーで働きはじめて3年が過ぎた頃に読みました。デザインとは実に深いもので、細やかな配慮の必要性を再認識したことを覚えています。”こだわる”ということはこういうことなのかと。デザイナーはもちろんのことアーティストやエンジニアなど、モノを作ることに関わる人は一読の価値ありです。」(増田)
現在は東京大学教授として教鞭もとっている著者。義足デザインプロジェクトなど、デザインによって社会生活の質を高めようとしてきた著者ならではの視点から、非常に多様な製品について語っています。(Chihiro)
③多湖輝『頭の体操』シリーズ(光文社)Amazon
「中学生の頃から、父親の書棚にあったものをシリーズ順で読んでいました。1ページ1問ペースのパズル・クイズ集です。出題されるパズル・クイズが中々のくせ者で、ひとひねりもふたひねりもされた問題ばかり。頭をフル回転してもほとんど正解することはなかったですね。視点を変え、多面的に捉えることを体感的に学べる点が、このシリーズ最大の特徴だと思います。固定概念を崩しにかかる解答の数々に、やられた!と感じさせられますよ。
色々と煮詰まった時に読むことが多く、ほどよい頭のリフレッシュができます。発想の転換を促すための準備運動として読むこともあります。百聞は一見にしかず。数年前にベスト集が出ていますので、実際に読んで、ぜひ頭の体操を体験してみてください。いかに頭が固くなっているのか、驚くこと間違いなしです。」(増田)
約40年間に23冊ものシリーズ本が発刊された、いわずとしれたベストセラーです。問題は長過ぎたり、専門用語を使ったりすることもないので、なぞなぞを解く感覚で楽しめます。たしかに、作業に煮詰まったときの気分転換にもってこいです!(Chihiro)
Q3. よく行く書店や、ご利用されるネット書店についてご紹介ください。
「今年引っ越したばかりで、近所でよく行く書店はまだ無いですね。京都に住んでいた時は、JR長岡京駅の近くにある恵文社バンビオ店さんへ行っていました。品揃えも多く、落ち着いた雰囲気の書店です。よく仕事帰りに漫画を買っていました。」(増田)
KAB読みもの探訪!のなかでも、とても人気の高い恵文社さん。バンビオ店は、とくに絵本や漫画の品揃えが充実しています!(Chihiro)
ご自身の経歴なども交えて、幅広いジャンルの本をご紹介頂きました。今後神戸・六甲の地で、アートとしての写真が盛り上がっていくことを期待したいですね!
増田さん、ありがとうございました!
[KABインターン]
渡辺千尋:兵庫県生まれの瀬戸内海育ち。大学院でフランス近代美術を研究中。現代のアートマーケットの仕組みに関心があります。アートとサッカーをこよなく愛しています。