KAB読みもの探訪!《第5弾》

大阪を盛り上げるデザイナーの読みもの!

In インタビュー by KAB Interns 2014-09-26

KABINTERNS257x136

本紹介インタビュー、第5回は大阪を本拠に活動するデザイナーの後藤哲也さんです。デザインの仕事のほかにも、フリーアートマガジン『FLAG』を発行するなど、大阪の旬なアート情報を発信しています。今回はどんな本をご紹介頂けるのでしょうか。

Q1. 現在のお仕事や進行中の企画など、近況についてお聞かせください。

「デザイナーであり、OOO Projects代表です。グラフィックデザインの仕事を中心に,企画・編集などの仕事を行っています。バイリンガルアートガイド『FLAG』の発行や展覧会のオーガナイズなどアートにまつわる活動もしています。大阪市『生きた建築ミュージアム事業』有識者会議委員、韓国のタイポグラフィビエンナーレ『タイポジャンチ』2014年プレビエンナーレのアドバイザリーボードメンバーも務めています。2014年6月より、デザイン誌『アイデア』にてアジアのグラフィックデザイナーを紹介する『Yellow Pages』を連載中です。」(後藤)

OOO Projectsは、大阪のクリエイティブシーンの発展やデザインを通しての国際交流などを目指しています。『FLAG』はKABと同じくバイリンガルで情報を発信しており、外国の方が大阪のデザイン・アートシーンを知る手段にもなっています。(Chihiro)

Q2. キャリア形成において影響を受けた本や、人生の愛読書などをご紹介ください。

”愛読書”や”座右の銘”といったこととは無縁の、悲しくなるほどに根無し草な人生を送っているのですが、それゆえ、客観性を求めて多くの視点を獲得することを意識しています。今回紹介するのは、物事を見る際の”視点”、そしてその”翻訳”を考える上で影響を受けた3冊です。(後藤)

①日高敏隆『動物と人間の世界認識』(筑摩書房、2003年)Amazon

「”自分が見ている世界は本当に他の人と同じなのか?”と悶々としていた時期に出会った一冊です。動物と人間の世界の認識の違いについての本ですが、”全生物の上に君臨する客観的環境など存在しない”という事実には、デザインの仕事において、他者と共有できること・できないことを考えるうえで影響を受けています。」(後藤)

ヒトの見ている世界と犬の見ている世界に違いがあるのは想像しやすいですが、人間のなかでも個人によってモノに対する認識は様々です。他の生物や周りの人たちのモノの捉え方について考えるきっかけになりそうです!(Chihiro)

②リチャード・E・ニスベット『木を見る西洋人 森を見る東洋人』(ダイヤモンド社、2004年)Amazon

「京都在住のデザイナー・エッセイスト、Bianca Beuttelに紹介してもらった一冊。西洋人と東洋人の思考方法の違いについて科学的に書かれています。
この本をモチーフにフランクフルト(ドイツ)と大阪で日本のパッケージデザインについての展覧会を行いました。世界を分類し、規則で世界をコントロールしようとする西洋的な思考と、世界は関係性や文脈で変化するものだと捉える東洋的な思考との違いを知ることで、視野が広がったように思います。」(後藤)

こちらは西洋人と東洋人の間での思考法について、アリストテレスや孔子といった東西の哲学なども分析しながら比較します。外国人のお友達と一緒に討論しながら読んでみたらとても面白そうだと思いました。(Chihiro)

③米原万里『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』(新潮文庫、1997年)Amazon

「大学では英語を勉強していたこともあり、翻訳にもずっと興味があります。デザインの仕事も、ある意味”翻訳”という意識でのぞんでいるところがあります。どこまでが訳せて、どこからは訳せないのか。そして、いかにその間を埋めるのかということに関心があります。『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』という強烈な題名は、言語を訳すジレンマを表したもの。ロシア語通訳の米原万里さんによるユーモアと下ネタを織り交ぜた文章は、面白おかしく読み進めることができますが、同時に、言語とその文化を訳す大きな壁をつきつけられ、めまいがしてきます。」(後藤)

ロシア語通訳のスペシャリストとして活動してきた著者のエッセイ集。テレビで同時通訳を聴くとき、瞬時に原語を理解して日本語に置き換える通訳者の頭の中はどうなっているのだろう?とつねづね不思議に思っているので、私もぜひ読んでみたいです!(Chihiro)

Q3. よく行く書店や、ご利用されるネット書店についてご紹介ください。

「モヤモヤを感じつつも『Amazon』で買うことが正直多いです。
こだわった本屋さんだと、そのこだわりに共感できないと全く見るものがないので、街の普通の本屋さんに行くことが多いです。事務所から近いので、天神橋筋商店街の『西日本書店』に行くことが多いですね。時間があるときは、肥後橋の『calo bookshop & cafe』に足を伸ばします。本のセレクトはもちろん、カレーも絶品です。」(後藤)

ネット書店は送料無料、即日配達サービスなど、実店舗で本を買う場合との落差が少なくなっているのが現状なので、買いたいものが決まっているときなどにはとても便利です。『calo bookshop & cafe』のカレーは私からもオススメしたい一品です!(Chihiro)

ヒトと動物、西洋人と東洋人など、個々人のモノの認識について深く掘り下げる本をご紹介して頂きました。デザインにおいては、ひとつのものに対して様々な捉え方があることを理解するのはとても大切なことなのですね。
後藤さん、ありがとうございました!

[KABインターン]
渡辺千尋:兵庫県生まれの瀬戸内海育ち。大学院でフランス近代美術を研究中。現代のアートマーケットの仕組みに関心があります。アートとサッカーをこよなく愛しています。

KAB Interns

KAB Interns . 学生からキャリアのある人まで、KABの理念に触発されて多くの人達が参加しています。2名からなるチームを6ヶ月毎に結成、KABの中核といえる膨大なアート情報を相手に日々奮闘中!業務の傍ら、「課外活動」として各々のプロジェクトにも取り組んでいます。そのほんの一部を、KABlogでも発信していきます。 ≫ 他の記事

KABlogについて

Kansai Art Beatの運営チームにまつわるニュースをお伝えします。

Facebook

KABlogのそれぞれの記事は著者個人の文責によるものであり、その雇用主、Kansai Art Beat、NPO法人GADAGOの見解、意向を示すものではありません。

All content on this site is © their respective owner(s).
Kansai Art Beat (2004 - 2024) - About - Contact - Privacy - Terms of Use