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デザインとアートの境界線でプロダクトをつくるということ

In フォトレポート by Chiaki Ogura 2014-10-10

アートは美術館の中だけで楽しむ、といった特別なものでは、もはやありません。日々の暮らしになじむように、そっと寄り添うように存在しています。生活の中に自分らしい個性を表現することが、アートの主流になりつつあるのかもしれません。衣・食・住・プロダクト開発・空間デザインなど、様々なアプローチからアートと関わる企業、団体やメディアを取材します。

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「デザインとアートの境界線でプロダクトをつくるということ」
gallery ondo produced by G_GRAPHICS INC.

大阪市西区、2013年1月にひとつの場所がオープンしました。ondoは、デザイン事務所G_GRAPHICS INC.が運営するギャラリーです。様々な作家やイラストレーターの展示をしつつ、展示に合わせ、本を中心に様々なプロダクトを制作しています。活動の想いについて、代表の池田敦さんとグラフィックデザイナーの松木カオリさんにお話を伺いました。

「作家さんと一緒に、社会に発信できる場所をつくりたい」

ーgallery ondoをオープンする、きっかけになった出来事はありますか?

松木さん: コミュニケーションの場となるデザイン事務所が作りたい、と思ったのがはじまりです。現在も継続しているのですが、移転前の事務所の一角を開放して、知り合いのイラストレーターさんの企画で絵画教室をスタートしたんです。すると、近所の子どもさんやお母さん方も集まってくれたりして、普段仕事しているだけでは接することのない方や、知ることのできない外の世界に接することができたのが純粋に、嬉しくて。また、作家さんとお仕事することも多いので、社会に発信できる場所を一緒につくりたいという想いもあり、ギャラリーを開きました。

展示に関しては、基本的に企画展です。 展示は月に1組ペースで、約3週間が会期期間。作家さんとしっかり打合せをして、丁寧に作り込んでいく作業は楽しいですね。

「社会にどう届けるか、がミッションだと思っていて」

ーondoさんは、展示開催と合わせて、作家さんとコラボレーションして、オリジナルのプロダクトをつくるという部分が面白いですよね。つくる上で、こだわっていることはありますか?

池田さん: 作品や作家さんの魅力を、展覧会だけで終わらせずに、プロダクトとして別のアプローチで発信していくことで、もっと社会に派生させたいと考えています。そこで、僕らが仕事の基盤としているデザインが役に立てるのではと。例えば、作家さんと本をつくる上で、ISBNの書籍コードを取っています。このコードがあれば書店で販売できます。書店に流通させることで、より一般の人に届きやすいツールに仕上げています。

本にも色々なデザイン的な仕掛けを試みています。あるテキスタイルの作品集はページ毎に、切り取り線があって、切り取って手紙に使えたり、そのまま壁に飾るとインテリアに使えたりもします。形状や紙質、手触りなどにもこだわっています。

松木さん: 他には年に一度、額縁とドローイングを合わせて展示する、絵額(えがく)展を開催しています。以前、いいなと思ったドローイングの絵を買ったことがあるのですが、意外に家で上手に飾れなかったという経験をしたことがあって。”額縁を一緒に提案すれば、飾りやすいのでは”と考え、木工作家さんと額縁を開発しました。こういうアプローチは、絵に親しめるきっかけにもなると思うんです。

池田さん: 一緒に制作した本やプロダクトが、新しい世界へと繋がるきっかけになってくれたら嬉しいです。イラストレーションや現代アート、コミックアートなど様々な方とご一緒しますが、一部のコミュニティで人気を得るだけではなく、もっと広い社会に広がって欲しいという想いがあります。シンプルにいいものは、やっぱりいいし、フラットにこんな良いものがあるぞって、より多くの人に知ってもらいたいんです。

展示やプロダクトがきっかけとなり、本の挿画のお仕事に繋がったり、作家さん自身がメディアに取り上げられたり、次の展示に繋がったりと少しずつ成果も出始めてきました。展示する喜び、プラスαの広がりをもっと一緒に作っていきたいです。

「コミュニケーションを介して、繋がれる場所」

ーデザイン事務所がギャラリーを持つ、面白さってなんでしょう?

松木さん: 展示会毎にオープニングパーティを開くのですが、その際には、作家さんやその友人、作品に興味のある方や私たちの知り合いのデザイナーさん、ギャラリー関係の方など、多くの方が足を運んでくれます。私たちは出来るだけ、人を繋いで行きたいと思っているので、初対面の方同士でも、コミュニケーションを取りやすいような雰囲気づくりを心がけています。

池田さん: ギャラリーを併設したことによって、いい効果がたくさん生まれています。実際に、お仕事でもご一緒する機会が増えています。「いい作家さんやイラストレーターさんはいないかな・・」など、クライアントやデザイナーさんによく聞かれるんです。みんな、実は知らないだけなのかもしれません。デザインやアート業界、全体として底上げをしていかなくては厳しい時代だとも思っていますので・・。色々な方が繋がることで、状況って変えていけると考えています。色々と悩みながらもしっかりと成長し、次のステップにみんなで一緒に登って行けたら面白いですよね。

池田さん: 全ての体験がデザイン自体にも生きてきています。基本的には、クライアントと消費者を繋ぐことが、デザインの仕事だと思っているので、消費者になりうる一般の人たちと接せられる場所や、接点はとても大切です。展示の仕方によって、お客さんの反応が全然違ったり、POPやレイアウトひとつでプロダクトの売れ行きが変わったりと、実際に肌で感じることが出来ています。クライアントの知り得ない、消費者のことを僕らは知っていますよとも言えるのも、強みかもしれません。

「温度を感じて、温度を発信していく、そんな場所にしていきたい」

ーgallery ondoさんが、展示やプロダクトをつくる上で心がけていることはなんですか?

池田さん: 人感、温度感、体温みたいなものを大事にしています。「ondo」というギャラリー名も「温度」に由来しています。作りながら、お互いの温度感を感じることも大事ですし、それを自分たちと自分たちの周りの人と一緒に発信していくことで、社会の中にも伝えていけると信じています。

告知物や本などのプロダクトに関しては、作家さんとコミュニケーションを取る中で、作品や作家さんの空気感を、誰にどうやって伝えて行くのかを考えています。デザインはもちろん、印刷や加工にも工夫を施しています。これは通常のクライアントワークでも同じで、お客さんと、密度の濃いコミュニケーションを取りながらつくることを心がけていますね。

「デザインの力を、とても信じています」

ー1年半たった今、これからどうなっていきたいですか?

松木さん: そうですね。少しずつ今後に向けての土台は出来てきている感触はあります。

池田さん: 作家さんが、成果に繋がらずに折れてしまう、そういうことがないように、デザイン側としてサポートしていきたいです。そういう意味では、デザインの力はとても信じています。どう世の中に作家さんの良さを伝えていくのかという部分や、社会のニーズを意識していく必要がありますね。

継続すること。これがひとつの答えかもしれません。しっかりと考えて、努力を重ね、効果的なアプローチで発信し続けていく。カッコつけずに、当たり前のことを当たり前に頑張っていきたいです。人間臭く、僕たちはこう思うんだということを丁寧に届けて行く、そういう活動を続けていきたいと思います。

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http://ondo-info.net

G_GRAPHICS INC.
http://www.g-graphics.net

オンラインショップ
http://ondo-info.net/product

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【今後の展覧会予定】
「MICAO 個展 ”時間旅行”」

http://ondo-info.net/gallerys

■オープニングパーティー
10月17日(金)19:00〜21:30

参加費:¥500
(フリードリンク&フード・MICAOポストカード3枚付)
どなたさまもご参加いただけますので、お気軽にお越しください。

場所: gallery ondo
日時: 10月14日(火)〜11月1日(日)
時間: 12:00〜19:00 (最終日は17:00まで)

Chiaki Ogura

Chiaki Ogura . 岡山県出身。広告代理店・広報部にて勤め、現在はフリーライター・フォトグラファーとして活動中。ジャンルは幅広く、雑誌やWEB媒体などで執筆。ベンシャーンやアンディ・ウォーホルに感銘を受け、アートの世界に。ギャラリーや美術館の空間をこよなく愛する。作品を目の前にしたときの、右脳がぐらっと動かされる感覚がたまらない。comocomo.cafe ≫ 他の記事

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