PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015

芸術祭参加作家第2弾が発表!

In ニュース by Megumi Takashima 2014-10-08

2015年3月7日に開幕する「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015」(以下PARASOPHIA)の第3回記者会見が開かれ、参加作家第2弾として新たに18名が発表された。4月に第1弾として発表済みの8名を加え、参加が明らかとなった作家は現在計26名。予定数約40名の残りは、来年1月に発表予定という。

日本からの参加作家は、美術、音楽、映像が融合するグループ「キュピキュピ」を主宰し、領域横断的で娯楽性に満ちた作品で知られる石橋義正、女性的な感性を感じさせる素材や質感でオブジェを作り変え、フェミニズム的な問いかけを行う笠原恵実子、資料のリサーチにフィクションを織り交ぜて作品化することで日本の近代美術史を再考する眞島竜男、空間を彫刻的に分節し、ダンス、言葉、モノを用いて即興的なパフォーマンスを行う笹本晃、インスタレーション、映像、テキスト、パフォーマンスなど様々な表現手段を用いて、ユーモアを交えつつ現代社会を鋭く批判する高嶺格、2013年のヴェネツィア・ビエンナーレ参加作家の田中功起、またヨコハマトリエンナーレ2014にて中上健次の『日輪の翼』を舞台化する移動舞台車を発表したやなぎみわは、この舞台車を引き継ぎ、展示・パフォーマンス・演劇公演の実現を目指すという。

海外からは、既に発表された蔡國強、ヘフナー/ザックス、ピピロッティ・リスト、ウィリアム・ケントリッジ、スーザン・フィリップス、ドミニク・ゴンザレス=フォルステルに加え、各地の大型国際展で活躍する作家たちが並ぶ。以下、その一部を紹介したい。

リサ・アン・アワーバック(1967年アメリカ生まれ)は、2004年のアメリカ合衆国大統領選挙に際してメッセージを編み込んだニットや、アメリカ各地の巨大教会の写真を掲載した約150×100cmの巨大なZINE『American Magazine #1』を制作している。PARASOPHIAでは、ZINEシリーズ最新作『American Magazine #3』を構想中であり、10月に初来日して京都でリサーチを行う予定。

ヨースト・コナイン(1971年アムステルダム生まれ)は、手製の飛行機による飛行、木炭ガスのエンジンを搭載した木製自動車によるヨーロッパ15カ国の横断といった試みの記録を、映画や写真、書籍など様々な媒体の作品として発表している。自分の好奇心や衝動を、既成の交通手段ではなく手作りの乗り物で実現し、国や文化の境界線を自由に往来するその態度は、既存の諸システムに依存する現代について再考を促す。

スタン・ダグラス(1960年バンクーバー生まれ)は、1980年代中頃から、特定の事件や出来事を調査し、ドキュメンタリーとフィクションの狭間で、忘れられた歴史を再考する写真やビデオ、映像作品を制作。PARASOPHIAに出品予定の最新作《Luanda-Kinshasa》(2014)は、「The Church」と呼ばれた伝説的なニューヨーク30番街スタジオ(1949–81)の再構成を舞台にしたビデオインスタレーション。本作に登場する10人のミュージシャンは、マイルス・デイヴィスのアルバム『On the Corner』(1972)と当時のアフロビートが融合した音楽をつくり出している。

アーノウト・ミック(1962年オランダ生まれ)は、2007年のヴェネツィア・ビエンナーレ、横浜トリエンナーレ2001、あいちトリエンナーレ2013などへの出品で知られるビデオインスタレーション作家。映像は一見ドキュメンタリーのように見えるが、実際には現実の社会問題などに基づいたシナリオを俳優が演じている。しかしインスタレーションにおいて、観客の身体的空間と映像内の空間との融合が生まれるため、演じられた映像の方が本物のドキュメンタリーよりもリアルな体験として伝わる。

参加作家のラインナップを見ると、地政学的な関心や、歴史的・文化的記憶の掘り起こし、個人の記憶と共同体の形成、現代社会とメディアといったテーマ性やコンセプチュアルな要素が強く、リサーチベースの制作を行う作家も多い。視覚的な刺激や祝祭感を楽しむというよりは、じっくりと深い思索を誘うような展示構成になるのではと期待される。

アーティスティック・ディレクターの河本信治氏は、「京都で開催する国際展の意義として、他とは異なる展覧会を目指したい。一過性のイベントをやって消費されるのではなく、5年先、10年先の文化資産を作るためのプロジェクトになれば」と語っている。PARASOPHIAはこれまで、準備段階を観客と共有するプログラムとして、参加候補作家によるレクチャー、海外の国際展のリサーチ、映像・映画の研究者や建築家、小説家などをゲストに招いた「オープンリサーチプログラム」を開催してきた。また、パブリックプログラムの一環として、討論イベント「Parasophia Conversations」第1弾である、アレクサンダー・ザルテン×北野圭介「21世紀のイメージ・トラフィックを考える」が11月16日(日)に予定されている。こうした積み上げの成果として、同国際展がどのような全貌で現れるのか、来年3月の開催が期待される。

なお、チケット料金(カッコ内は前売り)も発表され、一般1,800(1,400)円、大学生1,200(900)円、70歳以上1,200(900)円。前売券の発売は12月を予定している。

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PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015
http://www.parasophia.jp/

会期:2015年3月7日(土)~5月10日(日)
会場:京都市美術館、京都府京都文化博物館ほか府・市関連施設など

Megumi Takashima

Megumi Takashima . 美術批評。京都大学大学院博士課程。現在、artscapeにて現代美術や舞台芸術に関するレビューを連載中。企画した展覧会に、「Project ‘Mirrors’ 稲垣智子個展:はざまをひらく」(2013年、京都芸術センター)、「egØ-『主体』を問い直す-」展(2014年、punto、京都)。 ≫ 他の記事

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