アンスティチュ・フランセ日本がパリ本部と連携して運営するヴィラ九条山が、2014年10月4日にリニューアルオープンした。
ヴィラ九条山は、フランス政府が国外で運営する3つのアーティスト・イン・レジデンスの1つであり、1992年以来、20年以上に渡って、270名近くのフランスのアーティストや創作家をレジデントとして受け入れてきた。レジデントは数か月間の滞在中、日本の芸術・学術・文化関係者と交流しながら制作活動を行う。対象となる領域は、建築、文学、音楽、パフォーマンス、演劇、映画、デジタル・アート、美術評論・キュレーション、デザイン、モードなど幅広い分野にまたがっている。
ヴィラ九条山は、建築家・加藤邦男氏の設計で、京都の市街地が見渡せる東山の丘に建てられている。2012年から一時的に閉館していたが、今回、建物のリニューアルに加えて、2つの新しいレジデンス・プログラムが打ち出された。
1つ目は、これまで日本人アーティストの支援が行われていなかった点を考慮し、フランス人アーティストと日本人アーティストの共同制作を支援する「ヴィラ九条山デュオ」が開始される。2015年には、京都をベースとする現代美術作家の名和晃平氏とベルギーで活動する振付家のダミアン・ジャレ氏が初のデュオとして滞在する予定。名和氏は、「昨年のあいちトリエンナーレ2013で発表した、泡のインスタレーション作品《フォーム》を見たジャレから、一緒に仕事をしたいというコンタクトがあった。ダンサーと仕事をするのは初めてだが、時間と空間を共有し、コンセプトを立ち上げるところから共にスタートしたい。京都での滞在を通して、新しい舞台作りと、展覧会にも発展できるようなことができれば」と抱負を述べた。
また2つ目の新プログラムとして、これまでにはなかった「工芸部門」の枠を設け、フランスの優れた工芸家と日本の伝統工芸との対話をはかる。いずれの新プログラムとも、京都という土地に根差すことと日仏の双方向の交流が目指されている。
今回のリニューアルにあたり、アーティストを支える側も日仏共同体制が採られており、フランス人の映画作家であるクリスチャン・メルリオ氏と、アート・プロデューサーである大江ゴティニ純子氏が日仏共同館長という形で運営にあたる。
今後は、滞在期間だけでなく、レジデンス開始前の準備期間や終了後の継続的な支援を行い、具体的な方法として、レジデンス期間中(終了後も含む)に制作された作品には「ヴィラ九条山」のラベルを付与し、国内外の展覧会、フェスティバル、出版、音楽イベントなどを通して発表される予定という。日本でのリサーチや交流、また日仏の共同制作を通して、どのような成果が生み出されていくのか、今後の展開が楽しみである。