京阪電車なにわ橋駅アートエリアB1で毎年行われている「鉄道芸術祭」も、今年で4回目。毎年異なる企画が楽しみであるが、今回はいわゆるサウンド系アーティストによる展覧会「音のステーション」と、それぞれのアーティストが京阪電車車内でライブパフォーマンスを行うなどの関連プログラムが多数開催されている。
12月23日(火・祝)まで開かれている展覧会「音のステーション」は、参加作家8人の立体およびインスタレーション作品、さらに彼らのインタビュー映像と音にまつわる映像がそれぞれプロジェクションしている、という会場構成だ。
会場のアートエリア B1 はなにわ橋駅の地上入口と地下改札の中間に位置するため、階段を上り下りするとき、ふと目に止まる空間である。ことに、宇治野宗輝《エレメンタリー・デュエット》は入口に展示されており、軽い驚きを感じながらスペースの中へと誘われる作品だ。
東京在住の宇治野は、この秋の「六甲ミーツ・アート」でノイズを発するバスを見せていたり、北加賀屋MASK「Open Storage 2014 -見せる収蔵庫」でもサウンドやノイズによるパフォーマンスを見せる車を出品するなど、関西でも精力的に作品を発表している。
今回のアートエリア B1 でも、先に挙げた《エレメンタリー・デュエット》、机上から心地よいノイズを発す《WAREHOUSE RITUAL》で、小さな宇治野ワールドを展開していた。
その隣には、木の箱とテレビモニターが連結した車両のように吊ってある。これは、12 月から神奈川県民ホールで個展「サイエンス/フィクション」を控える八木良太の作品で、外側から見るだけではなく、木の箱に頭を入れるとテレビモニターの映像を鑑賞できる、というもの。
「移動する電車から見える景色を写真に撮ったり、動く景色とその奥行きがずれていく感じが好きだった」と語る八木。並んだ木の箱の前や後ろのモニターは外の景色を、中のモニターでは京阪電車の車内のようすを映し出した。一見すると定点撮影、つまり自分が電車に乗って車内や車窓を眺めているような錯覚に陥るが、そうではない。「映像は普通にカメラで撮影していますが、位置と時間の関係性を表そうとした編集をしています。普通に動いている『再生』と座ったお客さんが立ち上がって後ろ歩きでドアからホームに出るような『逆再生』を組み合わせているのです」
実際木の箱に頭を入れてモニターと向き合うと、「私が風景や車内を見ている、しかし実は映像に私が見られている」という関係性についても考えることができるだろう。
会場の奥に歩を進めようとすると、水に入ったコップを持ったスタッフの女性が奥から来た。会場配布の紙を見ると、江崎將史《out of service》「※3 つのグラスに入った炭酸水はそれぞれ、なにわ橋駅/ソウル駅/香港九龍ホンハム駅の時刻表に則って交換しています。」と書いてある。そうか、この時間も大阪だけでなく、世界各地で電車は走ってる、人々は動いている、と気が付かされた。
壁を見ると、相川勝の CD ジャケット作品《CDs》が並んでいる。音楽は電車のお共であり、車内でヘッドホンで音楽を聞くことは読書をすることと同じような「楽しみ」でもある。
しかしよく見たらこのジャケットは手描きであり、掛かっている音楽もコピー(カラオケ?)である。電車での「楽しみ」は「現代社会の問題点」をあぶり出すことになろうとは!鑑賞していると「30 分おきに鳴らされる《警笛用ラッパ》を試しませんか」と声を掛けられる。近くにいた男性が同意し、《警笛用ラッパ》は思ったより大きな音を響かせた。そう、ここは「音のステーション」。
展覧会だけでなく、さまざまなアーティストがライブパフォーマンスなど関連イベントも行われる。駅と音のつながりの深さを体感しながら、楽しむことができるだろう。
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鉄道芸術祭 vol.4 音のステーション
期間:2014 年 10 月 18 日(土)~12 月 23 日(火・祝)
※12月14日〜23日は21:00まで開館
会場:京阪電車なにわ橋駅アートエリア B1 など
詳細はホームページをご確認ください。