龍野アートプロジェクト2014日波現代芸術祭 流れ Flowは、兵庫県たつの市で、11月2日から16日まで開催されている現代芸術祭です。
龍野は江戸時代からの地場産業の拠点である醤油蔵などが存在し、古い城下町として栄えてきました。2005年には、近隣の地域(新宮・御津・揖保川)と合併してたつの市となりました。龍野アートプロジェクトの会場である、ヒガシマル醤油元本社工場一帯は、100年以上の歴史を誇り、昨年、国登録有形文化財となりました。これらを保存するだけではなく、その魅力を活用、発信することによって地域の活性化を図り、すぐれた芸術を国内外に発信すると共に、多くの人々の集まる場を創設していくことを目的として、アートプロジェクトは2011年から活動を開始しました。
ヒガシマル醤油元本社工場は、江戸時代後期から大正期にかけての建造物群です。たつの醤油業の歴史を伝える産業遺産として貴重なもので、漆喰塗の壁や虫籠窓、本瓦葺きの屋根、水路に面した街区構成などが特徴的です。展示作品と共に町並みや建造物を鑑賞するものこの芸術祭の魅力の一つかもしれません。
このヒガシマル醤油元本社工場の中には、4人の作家の作品が飾られています。
谷澤紗和子さんの切り絵をつかったインスタレーション作品は、とても大きな作品で建物自体の持つ歴史の重みというものと、展示空間に流れている音楽と相まって、重厚感をおび、印象的な作品となっていました。
ポーランドの作家アレクサンデル・ヤニツキの映像作品は、日本の伝統的なリズムで構成された東海道の映像は、海外作家の目によって切り取られることで異国間を感じるとともに、日本という国の美しさを改めて感じることの出来る作品です。
工場跡向かいの旧銀行洋館[兵庫県信用組合跡]には、宮永匡和さんの作品が飾られています。ポーランド在住の作家でもある宮永の作品は、絵画作品でありながら、工芸品の様な美しさがあり、それぞれにつけられたタイトルから作品の背景にある物語のようなものを想起し、読み解くのが非常に面白い作品です。写真では感じることの出来ない美しさは、是非脚を運んでご覧ください。
年々規模や形式をかえて開催されてきたこのプロジェクトは、今年「流れ Flow」をテーマに実演芸術に注目し、音楽と映像、インスタレーション、ダンスパフォーマンスなどが融合した現代芸術祭となっています。そのため展示以外にイベントが多数用意されているのも特徴の一つです。
取材にうかがった日には、『響演2014「流れ」』が行われていました。現代音楽家の薮田翔一と映像/バレエ/パフォーマンスという異色の舞台で、仕込蔵という会場一番奥の建物の特設舞台で開催されました。
現代音楽という聞き慣れないジャンルの音楽は、非常にスリリングで音楽と映像、インスタレーション、ダンスパフォーマンスなどの融合は、演奏会というよりは舞台に近い印象を受けました。なお会場では、前期と後期で作品が展示替えされるそうで、前期は、現代音楽家の薮田翔一とアレクサンデル・ヤニツキの映像のインスタレーション作品が、後期は大舩真言さんのインスタレーション作品に、薮田翔一さんが音楽をつけます。
音楽家、芸術家の今を見ることの出来る芸術祭、会期中はイベントも数多く開催されていますので、歴史ある建物で触れる芸術体験を是非お楽しみください。
【開催概要】
龍野アートプロジェクト2014日波現代芸術祭 流れ Flow
【日時】
2014年11月2日(日)−16日(日)
10時−16時 11月10日(月)休館
【場所】
ヒガシマル醤油元本社工場[国登録有形文化財]/ 旧銀行洋館[兵庫県信用組合跡]
入場券:300円(当日券のみ / 高校生以下無料 / 会期中再入場可能)※コンサートは別途チケット代が必要
【作曲・舞台監修】薮田翔一
【演奏】小野村友恵 / 山内静 / 岩崎宇紀 / 松尾京子 / 高原里紗 / 薮田瑞穂 / 三木香代(特別出演)
【パフォーマンス】岩田美保 / 片岡典子
【美術】大舩真言 / 谷澤紗和子 / 宮永匡和 / ミロスワフ・バウカ / アレクサンデル・ヤニツキ
【芸術監督】加須屋明子(京都市立芸術大学美術学部准教授)