奈良県立美術館にて特別展「語り継ぐココロとコトバ 大古事記展」が12月14日(日)まで開催されています。
本展示では、三種の神器のひとつであり国宝の「七支刀」をはじめとする宝物や遺跡の出土品、考古、文献資料から、絵画、現代アートに至るまで、122点が出品されています。美術、考古学、国文学、民俗学等の様々な視点から鑑賞することができます。
展示は、フロアごとに5章からなる構成されていて、それぞれ以下のような内容になっています。
第一章「古代の人々が紡いだ物語」
「古事記」のなかでもとりわけ有名な場面をテーマにした作品を中心に、「創」「旅」「愛」をキーワードに厳選された、近現代の美術作家による作品が展示されています。江戸時代~昭和に至るまで、時代を超えて、絵画、演劇、芸能などのモチーフとされている様子とともに、古事記に登場する神々や人物が紹介されています。
第二章「古事記の1300年」
最近では、編纂1300年を迎えた2012年に、関連書籍や雑誌の出版が相次ぐなど、全国的な「古事記ブーム」が起こりました。それ以前にも、江戸時代後半の国文学者本居宣長が「古事記伝」を著し庶民に親しまれるきっかけになったことや、近代では第2次世界大戦中になされた読まれ方の反動で、戦後あまり顧みられなくなったことなど、時代ごとに「古事記」がどのように受け入れられてきたのかを、うかがい知ることが出来ます。
第三章「古事記に登場するアイテムたち」
考古資料をもとに「古事記」世界感や「古事記」の時代の文化や暮らしを具体的に想像させる、装飾品、食器類、楽器、武器等の出土品が展示されています。「古事記」の内容はすべてが歴史的事実ではありませんが、考古学の成果をふまえて検証することで、史実を反映している部分を見極めることができます。それはキリスト教圏の「聖書考古学」という分野に相当するそうです。このフロアでは考古学の研究をもとに「古事記」を読み解きながら鑑賞することができます。
第四章「身近に今も息づく古事記」
奈良県に現存し、古事記の物語にも登場する、大神神社、石上神宮、春日大社について、それぞれの神社に伝わる神宝や文献資料が展示されています。
また全国各地に現存する神楽のなかから、島根県の諸神楽と宮崎県の高千穂神楽が、能に使われる面とともに紹介されていて、「古事記」が神宝や芸能というかたちで現代に受け継がれていることが分かります。
第五章「未来へ語り継ぐ古事記」
EXONEMO、トーチカ、山口藍といった、現代アートの分野で活躍する作家たちの興味深い作品が展示されていて、これまでに紹介した各フロアの中でも異彩を放っています。暗室に展示されている「ゲームセンターアマテラス」は、天岩戸神話の1シーンを、モーションセンサーを用いたゲームとしてプレイし体感できる、アーティスト・トーチカによるインタラクティブな作品です。
また、各フロア間には、古事記をモチーフにした文学、漫画作品を網羅的に展示しているコーナーも設置されています。本展示をきっかけに「古事記」により興味を持たれた方へのさらなる探求に、多いに役立つリファレンスとなるでしょう。
本展示では、古来より日本人が受け継いで来た「古事記」の成り立ちや歴史とともに、その豊饒な世界感を、数多くの貴重な展示品を通じて知る手がかりとなるでしょう。また、「古事記」がジャンルを問わず、時代を超えて、多くの作家の創作活動のインスピレーションとなっていたことも確認できます。
日本人のココロの源流、価値観や感覚の源泉ともいわれ、古代より語り継がれる「古事記」の世界へいざなう特別展へ、是非この機会に足を運んでみてはいかがでしょうか?
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【開催概要】
語り継ぐココロとコトバ 大古事記展
平成26年10月18日(土)〜12月14日(日)
奈良県立美術館
10月20日(月)
11月17日(月)、25日(火)
12月1日(月)、8日(月)
午前9時~午後5時(金・土曜日は午後7時まで)
*入館は閉館の30分前まで
一般 800円(600円)
大学・高校生 600円(400円)
中学・小学生 400円(200円)
*( )内は20名以上の団体料金
*身体障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳をお持ちの方と介助の方1名は無料
*外国人観光客はパスポート提示により無料。付添の観光ボランティアガイドの方も無料
*留学生は無料入館パスポート(まほろばパス)提示により無料
【関連講座】
トーチカによるワークショップ「八百万の神を描こう」
日程: 12月7日(日)14:00~16:30
定員:20名、対象年齢小学生以上(小学1~2年生の方は保護者同伴)
詳細 http://www.pref.nara.jp/11842.htm