D&DEPARTMENT KYOTO by 京都造形芸術大学

ロングライフデザインと京都

In インタビュー by Chiaki Ogura 2014-12-12

アートは美術館の中だけで楽しむ、といった特別なものでは、もはやありません。日々の暮らしになじむように、そっと寄り添うように存在しています。生活の中に自分らしい個性を表現することが、アートの主流になりつつあるのかもしれません。衣・食・住・プロダクト開発・空間デザインなど、様々なアプローチからアートと関わる企業、団体やメディアを取材します。

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ロングライフデザインと京都
D&DEPARTMENT KYOTO by 京都造形芸術大学

京都市内にある佛光寺は、真宗佛光寺派の本山。由緒あるこの境内に、D&DEPARTMENT KYOTOが11月29日にオープンしました。D&DEPARTMENTといえば、全国のロングライフデザインをテーマにセレクトした商品を販売し、韓国ソウル店を含め全国に9店舗を展開している企業。今回10店目となる京都店は、地元の京都造形芸術大学の学生と共に作り上げるプロジェクトとして注目を集めています。彼らの提案するロングライフデザインや、この場所で行っていきたい活動について、D&DEPARTMENTディレクターのナガオカケンメイ氏にお話を伺いました。

「デザインとお寺と大学がコラボレーション」

ーD&DEPARTMENT KYOTOは、どのような位置づけなのでしょうか?

ナガオカ:京都造形芸術大学とD&DEPARTMENTとの新しい教育実験の場所といえると思います。私が京都造形芸術大学の空間演出デザイン学科の教授に就任したことがきっかけなのですが、デザインを中心としたカリキュラムを開発するなかで、学生の実践的な学びの場となる開設店舗候補を探していました。その中で、真宗佛光寺さんとの素晴らしい出会いもあり、境内にショップとカフェをオープンする運びとなりました。

デザインの力で地域の魅力を伝える商業施設が、「お寺」と「大学」と協業する初めての取り組みでもあります。「寺子屋」ともいい、昔から、学びの場でもあり、地域社会交流の拠点でもあるお寺という場所で、ショップを運営できるということは、大変意味があります。

プロジェクトに参加してくれた学生は、11名。大学の学内募集で、約200名の中から選抜しました。2014年5月から、プロジェクトメンバーは、週に1回のペースで集まり、京都の「ロングライフデザイン」をリサーチしながら商品発掘にあたり、発掘した商品の生産者との交渉、現場見学、売場準備を行いました。オープン以後も店舗運営やワークショップなどの企画運営に携わっていきます。

ーロングライフデザインの授業では、どのようなことを教えられているのですか?

ナガオカ:その土地に昔から変わらずに続いており、人々に愛されているものを、私たちは「ロングライフデザイン」と呼んでいます。ロングライフデザインというのは時間軸がテーマで、各学科に潜んでいます。今まで、後ろ向きの矢印でデザインを考えるという授業がなかったので、学生さんは新鮮に感じているようです。授業では「作らなくていい」と教えているのですが、今まで作れ作れと言われてきたこととのギャップを感じるようで、授業の最初の方は質問の嵐でした(笑)私たちが伝えたいのは、考え方や生き方などの概念です。デザインとアートの境界線も、もちろんありません。自然科学やどんな学問であっても境界線はないですね。そういう概念を悟ってほしいという想いがあります。

「デザインって、特別扱いしたくないんです」

ーナガオカさんの思う、デザインって、なんでしょう?

ナガオカ:デザインって、わかりやすい専門分野で、例えば生活道具でも使い勝手の良さよりも奇抜な形が選ばれるような風潮が未だにあると思うんです。多少使いづらくても、名のあるデザイナーのデザインならいいだろう、みたいな、日常生活のことはちょっと置いておいて、デザインの形が美しければいいというような風潮ですね。

しかし私たちは日々、アートとか芸術に近い、生きるとか嬉しい悲しいなどの状況の中で生きている訳で。そんな状況とデザイン自体や売るという行為を、デザイン教育側が切り離しがちではないかと疑問を感じています。私は「売る」という部分や「生活する」「生きる」という近いポジションにデザインを持っていく必要があると考えています。

今までのデザイン教育では、「生み出す」ことを前提としているので、学生さんたちもそのための”手法”や”思考”はたくさん持っているんです。ただ、生み出さない思考というか、よりデザインをデザインとして特別扱いせずに、生活に取り入れていくものとして考えるデザイン教育が必要なのではないかと。「つくる」のではなく、「つくらない」という別の立場から、デザインに関われる手段を、学生達と一緒に確認し合いたいと考えています。既に出来上がっている素晴らしいものを見ながら、デザインはどうあるべきかを考えようとか、結果としてあるものにヒューチャリングしようというのが、私たちがやりたいことです。全国的にも新しい取り組みだと思います。

ーギャラリーではどういう展示をされるんでしょうか?

ナガオカ:京都のデザインやものづくりを伝える場所として、学生が中心となって運用を行います。教育の現場実習の場とも捉えています。例えば、ごま油という商品であれば、ごま油を使った料理教室や、正しい作り方の背景などを展覧会形式という発表の場です。見える状態にわかりやすく展示するというのも、これからのデザイナーにとっては必要ですから。ここも一番重要なんですよね。良き生活者を増やすという意味では、売れないといけないので。 現実社会としてはやはり、販売、最終的な結果として売れなければいけません。そこまでがデザイナーの仕事なんです。非常にハードルの高いことをやっていかないといけないと考えています。

「ロングライフデザインの集合体とも言えるような、京都の地で」

ナガオカ:私たちは、その土地の人たちが見失ってしまった自分たちの個性のようなものを紹介することをミッションに、活動しています。そういう意味では、京都は全国的にも特殊です。世界の中でも観光県としても有力な場所であり、自分たちの個性を自分たちで認識している場所で、その場所のらしさを売る訳ですから。また、京都自体が、ロングライフデザインの集合体といっても過言ではありません。そういう意味でも、私たちにとってもチャレンジで、どう展開していけるか楽しみでもあります。

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D&DEPARTMENT KYOTO by 京都造形芸術大学
http://www.d-department.com/jp/shop/kyoto/

【店舗情報】

電話   :ショップ/075-343-3217
      カフェ /075-343-3215
営業時間 :月~木・日 11:00~18:00(LO 17:00)
      金・土   11:00~20:00(LO 19:00)
定休日  :水曜日

場所:〒600-8084
京都府京都市下京区高倉通仏光寺下ル新開町397 本山佛光寺内

【ギャラリー情報】
あかよろし花札
−京都の花札文化を知ろう−

日時:2014年11月29日(土)〜12月23日(火)
11:00〜18:00(金、土は11:00〜20:00)
参加費:無料

Chiaki Ogura

Chiaki Ogura . 岡山県出身。広告代理店・広報部にて勤め、現在はフリーライター・フォトグラファーとして活動中。ジャンルは幅広く、雑誌やWEB媒体などで執筆。ベンシャーンやアンディ・ウォーホルに感銘を受け、アートの世界に。ギャラリーや美術館の空間をこよなく愛する。作品を目の前にしたときの、右脳がぐらっと動かされる感覚がたまらない。comocomo.cafe ≫ 他の記事

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