DESIGNEAST05 CAMP in Shodo-shima

デザインする状況をデザイン

In フォトレポート by Chiaki Ogura 2015-01-12

日常にとけこむアート

アートは美術館の中だけで楽しむ、といった特別なものでは、もはやありません。日々の暮らしになじむように、そっと寄り添うように存在しています。生活の中に自分らしい個性を表現することが、アートの主流になりつつあるのかもしれません。衣・食・住・プロダクト開発・空間デザインなど、様々なアプローチからアートと関わる企業、団体やメディアを取材します。

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DESIGNEAST05 CAMP in Shodo-shima
デザインする状況をデザインする

先日の2014年12月20・21日、香川県の小豆島に行ってきました。開催されていたのは、DESIGNEAST05 CAMP in Shodo-shima。1泊2泊、約30人で、離島・小豆島を体感できるイベントです。

「デザインする状況をデザインする」というコンセプトから誕生したDESIGNEAST(デザインイースト)は、大阪を拠点に2009年から開催されています。世界全体から見ると大阪も東京もイースト(東)。もっと日本外に視野を広げて、世界に発信していこうという想いから名付けられていました。

実行委員は、建築家の家成俊勝さん、プロダクト・空間デザイナーの柳原照弘さん、環境情報学部専任講師の水野大二郎さん、小豆島「醤の郷+坂手港プロジェクト」を進めているアートディレクターの原田祐馬さんと編集者の多田智美さんの5名。今回はゲストとしてFabLab Kitakagayaの津田和俊さんと白石晃一さんも参加し、社会とデザインの間で、問題定義をしつつ行動を起こしているメンバーが勢揃いしていました。

これまで様々なテーマを設定し、国内外から様々なゲストを呼んで、トークイベントやワークショップを開催してきたDESIGNEASTが、今年選んだテーマは「CAMP」。最低限の物を持って旅に出かけ、現場にあるものを最大限に使って状況を作ろうという想いのもと、場としてのコンテイナーと、コンテンツ(中身)の関係性を考え直そうという趣旨があります。これまで有田・浜松・京都の3地域で開催されており、今年度の締めくりとなる最期の地が小豆島。フラットな地域関係性とその社会を実現させることがなにをもたらすのかを、小豆島の現場で考えようとするものでした。

訪れる土地によってテーマが異なるのも、このCAMPの面白いところです。小豆島のテーマは「INTER LOCAL(インターローカル)」。国境とは関係のない地域間や、近隣地域との関係性を示す意味のある用語です。このテーマを軸にして、小豆島在住の有志3名が主体となってワークショップを企画。小豆島をまるごと体験できるプログラムが盛りだくさんでした。

最初のワークショップは、「山おにぎりをつくろう」。醤油ソムリエ兼オリーブソムリエの黒島慶子さん監修によるもので、イノシシや昆布を使用した小豆島の佃煮などが10種類以上。お米から塩、海苔まで小豆島の素材を使ったものばかりです。各人が思い思いに具材をつめ、オリジナリティあふれるおにぎりが完成していました。

その後は、ネイチャーガイドの山本貴道さんによる「山歩き」。碁石山は、小豆島八十八ヶ所霊場として、かつては修行僧が祈念と修練のために訪れたという歴史のある山。小豆島の守り木とも言われるウバメガシの樹林の中を歩いたり、洞雲山の岩肌に夏至の頃にだけ現れる不思議な夏至観音を見たり、内海湾の景勝美を楽しみながら、歩いて登る山道は、小豆島の自然と歴史をより身近に体感できる内容でした。

頂上の常光寺では、天然の洞窟(岩屋)で大林慈空(じくう)さんによる神聖な護摩焚きも行われました。岩屋の中はこれまで聞こえていた雨音が消え、本当の無音。心静まる空間で穏やか気持ちになり、自分自身をゆっくり見つめ直す時間となりました。

下山してからは、今回メインのワークショップである「小豆島鍋づくり」に取りかかります。

まずは3チーム7、8人ずつに分かれて、鍋に入れる食材を集めてきます。
山班は、生きている鶏(烏骨鶏)を捕まえて解体!
海班は、小豆島の魚を釣る係。
町班は、小豆島の町を巡って、調味料を集めてくる係。

私は、町班を選択。それぞれ担当の記録方法を担って、具材集めに出かけました。

町班では、調味料に必要なゆず・醤油・鰹節を調達しに町へ繰り出します。オリーブ農家の岩ちゃんに、ゆずだけでなく、ポンカンやかぼす、レモングラスやハーブなど山のようにいただきました。摘みたてのオリーブの塩漬けは新鮮で、本当に美味しかったです。

醤油は、正金醤油さんの蔵へ。100年以上の歴史を持つ”西諸味蔵”は、内海町最古の蔵で、国指定登録有形文化財です。小豆島の特産物でもある醤油が、どういう経緯で作られるようになったのかを四代目の藤井泰人さんに教えていただきました。今回は特別に、濾して醤油にする前の諸味(もろみ)をいただけることに。諸味蔵には、甘くて優しい醤油の香りが漂っていました。

最後のミッションは、だし取りのための鰹節。この道60年という鰹節屋さん(宮谷商店)では、鰹を干している真っ最中でした。鰹節の高級さやうまさの分かれ道は、カビの付け方によるそうです。

それぞれの班が集めてきた食材が、ei cafeに集結。知らず知らずの内に各人が、自分の役割りを見つけて調理に取りかかっていました。小豆島鍋以外にも、刺身や唐揚げなども準備される食卓は、どれも本日とれたての食材ばかり。「美味しい!」の声があちこちから飛び交っていました。

全てのワークショップを終了して、リレー型のトークセッションに移ります。議題は、インターローカルとDESIGNEAST05 CAMPの振り返り。今回のワークショップを通して、実行委員の5人がそれぞれ考えたことについて語っていきます。

インターネットを介して、いつでもどこでも人と繋がれる時代。実空間で、顔を突き合わせて話をするのと同じくらい、ネット上でも人々は意見を交換できます。この両方をうまく繋げていくにはどうすればよいのかというのが、「インターローカル」の大きな課題となっています。「半商品性」という重要なキーワードも挙がっていました。消費の方法が変わりつつある中で、商品自体よりも商品の背景やストーリーが重視されつつあること。デザインやアートに関しても同様で、かっこ良ければいいというのではなく、その背景にある物語が重視されつつあるということ。ただ新しく作ればいい時代ではないということが、議論されていました。

今回使われたei studioは、色んな人が利用し、出入りできる特殊な場所。瀬戸内国際芸術祭2013に完成した施設です。より個性の強い物語を生んでいくためには、こういう場所や状況が、今後もっと必要になるのかもしれません。地方創世が叫ばれている今、ただ単に地元同士で繋がろうというだけでなく、前提として、それぞれの地方の独自の固有性をまず尊重する必要があること。それぞれの点を繋げることで、やっと人の流動が可能になり、そこで初めて新しい”面”としての日本を作り上げられるのではないかという意見もありました。

経済や社会の仕組みの中で、小豆島がどういった役割りを担っているのかを考えると、「インターローカル」という話に繋がっていくのかもしれません。自分の足元を再認識するきっかけを与えてくれた、DESIGNEAST05。この企画自体は、10回開催予定中の現在6回目。最終的な結果として、いったい何が見えてくるのか、今後の展開が楽しみです。1月24日には今年度のDESIGNEAST05の閉会式が大阪で行われるようです。興味のある方は是非参加してみてください。

■DESIGNEAST 05 CAMP 閉会式
日時:2015年1月24日18:00
場所:コーポ北加賀屋 大阪府 大阪市 559-0011
大阪市営地下鉄四ツ橋線「北加賀屋」駅4番出口より徒歩10分
参加費:投げ銭
■プログラム CAMP報告会:DESIGNEAST 実行委員会によるプレゼンテーション
CAMP TALK:各地実行委員(調整中)×DESIGNEAST実行委員会
FOOD:森林食堂、Bar tatjana
■ゲスト 調整中
https://www.facebook.com/events/842380325828359/

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DESIGNEAST05_CAMP
http://designeast.jp/

DESIGNEAST実行委員会
家成俊勝(建築家、dot architects共同主宰)
原田祐馬(デザイナー、UMA/design farm代表)
多田智美(編集者、MUESUM代表)
水野大二郎(デザイン研究者、慶應義塾大学SFC専任講師)
柳原照弘(デザイナー、teruhiro yanagihara/代表)

共催
DESIGNEAST小豆島実行委員会(いのうえただひろ、大塚一歩、向井達也)

Chiaki Ogura

Chiaki Ogura . 岡山県出身。広告代理店・広報部にて勤め、現在はフリーライター・フォトグラファーとして活動中。ジャンルは幅広く、雑誌やWEB媒体などで執筆。ベンシャーンやアンディ・ウォーホルに感銘を受け、アートの世界に。ギャラリーや美術館の空間をこよなく愛する。作品を目の前にしたときの、右脳がぐらっと動かされる感覚がたまらない。comocomo.cafe ≫ 他の記事

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