兵庫県芦屋市立美術博物館にて大規模な土器の展示が開催されています。現在の芦屋市付近からは、多様かつ膨大な量の土器が出土しており、考古学的に重要なものも多く含まれています。
大阪と神戸のあいだの阪神間と呼ばれる地域に位置する芦屋は、古くから交通の要所であり、中央政権、西国との交流が複雑に絡み合う独特の地域でした。芦屋付近で発掘された出土品や考古学的資料に基づく研究は、一地方の歴史にとどまらず、日本古代史にまで広く発展する問題をさまざまに投げかけています。
国、群、里と3段階の行政区分で地方統治を行う律令国家体制が敷かれていた当時、現在の芦屋〜神戸市東部に相当する地域は、摂津国菟原郡(うばらぐん)に属していました。菟原郡の官営的な諸施設が芦屋界隈に集中することが、埋蔵文化財調査により判明したそうです。とくに、寺田遺跡から出土した「大領」「小領」と記された墨書土器は、群の高官の往来を如実に示すなど、示唆に富む土器のひとつであり、最近(2015年1月)、芦屋市の指定文化財となったそうです。ちなみに、現在阪急電鉄の芦屋川駅が位置する付近に、群の庁舎があったものと推定され、調査が進められています。
本展では、芦屋付近の最も古い歴史を物語るナウマン象の化石や旧石器をはじめ重要な歴史資料が数多く展示されており、先史時代〜縄文時代〜弥生時代〜古墳時代〜奈良時代に至るまで、土器を通じて古代の歴史を総ざらいできる程に、幅広い時代の出土品の数々を鑑賞できます。
また本企画展と同時に、「光の空ー阪神・淡路大震災から20年」が開催されています。被災地域となった芦屋にゆかりのある作家たちによる、震災にまつわる作品展示のほか、震災後に芦屋市立美術博物館が行った被災地域の文化財を救出する活動「文化財レスキュー」など、震災に関わる文化事業のアーカイブが公開されています。
あるひとつの土地の記憶として、はるか古代より近現代に至る膨大な時間の幅をもって人間の営みに想像を巡らせることのできる貴重な展示に、是非足を運んでみてはいかがでしょうか?
■主な展示品
ナイフ形石器 打出小槌遺跡出土 旧石器時代
弥生土器 寺田遺跡出土 弥生時代前期
弥生土器 月若遺跡出土 弥生時代後期
須恵器・土師器 旭塚古墳出土 古墳時代
墨書土器「大領」・「少領」寺田遺跡出土 奈良時代
など総展示数約200点
【開催概要】
芦屋市立美術博物館
「土器どき芦屋の物語-遺跡が語る芦屋の歴史-」展
http://ashiya-museum.jp/
開館時間: 午前10時-午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日: 月曜日(ただし祝日の場合は翌火曜日休館)
観覧料:一般500(400)円、大高生300(240)円、中学生以下無料
※同時開催「昔の暮らし―みんな昔は子どもだった」展・「光の空―阪神・淡路大震災から20年―芦屋」展の観覧料含む
※( )内は20名以上の団体料金
※ 高齢者(65歳以上)および身体障がい者手帳・精神障がい者保健福祉手帳・療育手帳をお持ちの方ならびにその介護の方は各当日料金の半額になります。
主催: 芦屋市立美術博物館
後援: 兵庫県、兵庫県教育委員会、公益財団法人兵庫県芸術文化協会、神戸新聞社、NHK神戸放送局、ラジオ関西、ジュンク堂書店芦屋店