琳派400年記念 新鋭選抜展〜琳派の伝統から、RIMPAの創造へ〜

現代のデザインやアートに深く関わる”琳派”。若手の選抜作家による展覧会

In フォトレポート by Chiaki Ogura 2015-02-05

今年は、「琳派400年記念祭」の開催の年。京都を中心に活動する、新進若手作家を紹介し、作家が創造する新しい作品展が、京都文化博物館で行われています。京都が生んだ「琳派」の美意識や精神を作家が現代の感性で解釈し、新しい表現を試みています。京都を本拠地として活躍する、椿昇氏の作品も展示されています。

屏風をイメージして配置された2台のモニターに、花や蝶のモノクロ映像が映し出されている。それが、人の動きに反応するごとにカラフルに変化する。ところで、琳派とは一体何なのでしょうか。要約して言えば、琳派とは、生活用品から絵画までの、生活空間を飾る、日本における生活美術の大きな潮流のことです。琳派の「琳」は尾形光琳の字に由来しています。光琳が400年余りの琳派の流れを通じて琳派の表現をもっともよく表していたと言われており、1960年代以降にこの用語が一般化したそうです。

燕子花の配置のリズムが、幻想的なメロディに置き換えられ、ピアノとハープのハーモニーとして表現されている。その昔、江戸の町民たちが育て上げた大衆文化である「粋」。これは、日本人の美意識の底流にある、琳派の流れです。日本人の鋭い感性は、四季のある日本の自然環境が育んだ自然主義的な人間観に由来しています。衣装や生活雑器やしつらえも季節ごとに選び抜き、日常生活を愉しんできました。春には梅や桜の模様の器を、秋には紅葉や月と兎の絵柄で季節の料理を愉しむ。日本人にとって、やはり四季と花鳥風月は欠くことのできない条件のひとつであり、日本人独自の感覚です。

琳派の美学は、二十世紀に入ると、世界初の「バウハウス」に結実しました。その美学は従来の西洋の造形理論と合わせて統合され、現代デザイン学として普遍化し、現代デザインやアートの基盤を作り上げたといっても過言ではありません。メディアとして大きな役割りを果たすポスターが、パリやロンドンをはじめ欧米の街中に張り巡らされるようになった頃、浮世絵にならった表現性を受け継いだものが多く見られました。これは、琳派の美学がデザインに影響したといえるでしょう。

現代アートに取り入れられるようになった、アニメやマンガも浮世絵、黄表紙と同様、大衆の娯楽であり、”サブカルチャー”です。民衆のパワーが浮世絵、黄表紙、歌舞伎や文楽のマスメディアを育んだように、現代の”クールジャパン”は、アニメやマンガを中心として日本の若者達に好奇心と生活を楽しむ余裕を与えたメディアといえるのではないでしょうか。

現代の若手作家にとって、琳派とは、どのような存在なのでしょうか。時代を確認できる絶好の機会。ぜひ、京都文化博物館に足を運んで、自分の目で確かめてみてください。

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【開催概要】
琳派400年記念
新鋭選抜展〜琳派の伝統から、RIMPAの創造へ〜

期間:2014年1月24日〜2月8日
会場:京都文化博物館 4階 特別展示室・別館ホール
http://www.bunpaku.or.jp/exhi_shineisenbatsu.html

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Chiaki Ogura

Chiaki Ogura . 岡山県出身。広告代理店・広報部にて勤め、現在はフリーライター・フォトグラファーとして活動中。ジャンルは幅広く、雑誌やWEB媒体などで執筆。ベンシャーンやアンディ・ウォーホルに感銘を受け、アートの世界に。ギャラリーや美術館の空間をこよなく愛する。作品を目の前にしたときの、右脳がぐらっと動かされる感覚がたまらない。comocomo.cafe ≫ 他の記事

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