滋賀県守山市、佐川美術館の樂吉左衞門館にて「吉左衞門X 新兵衛の樂 吉左衞門の萩」が3月29日(日)まで開催されている。
今から約450年前、京都で千利休が理想の茶碗をつくらせたことから始まったとされる樂焼(らくやき)。
樂吉左衞門館は、樂焼の十五代樂吉左衞門氏(以下、樂氏)による設計創案・監修のもと、2000年以降の作品を収蔵・展示する美術館として2007年に開館した。年に2回行われる展覧会のうち、その1つを「吉左衞門X」と称し、毎回さまざまな人、事柄、物とのコラボレーションを展開している。
第6回目を迎える今回は、萩焼の十五代坂倉新兵衛氏(以下、坂倉氏)を迎え、樂焼と萩焼の十五代目同士による夢のコラボレーションが実現した。
樂焼と萩焼はいずれも茶人の間で好まれてきた焼物だが、その原材料となる土の性質や製作法は大きく異なる。
本展のみどころは、展示されている全ての作品が、互いの製作法を交換してつくられたものであるという点にある。さらに、交換したのは製作法のみならず、土や道具、窯に至るまで相手方のものを用いるという徹底ぶりだ。
轆轤(ろくろ)を使用せず、手でこねて原型をつくる樂焼は、長時間に及ぶ対峙の中であらゆる思考を巡らしながら自己表現を確立していく。一方、萩焼は轆轤の回転の中で、瞬間的な手の動きにより形が生み出されていく。つまり、インスピレーションと身体的なリズムの中で自己表現を確立していくのだ。
樂氏にとっては轆轤でつくる初めての茶碗であり、坂倉氏にとっては手で土をこねる手捏ね(てづくね)は大学以来の体験だったという。それぞれの製作法がもつ表現の可能性や本質、造形の根幹に深く迫る機会となった本企画が、経験豊かな名工にとっていかに冒険的であったかをうかがえる。
実は樂氏と坂倉氏は、東京藝術大学の彫刻科でともに学んだ同窓生でもある。400年以上の歴史をもつ焼物屋の十五代目同士で、どちらも若くに父を亡くして当代となっている。樂氏は2人の学生時代について、特に芸術や互いの家の話をすることはなかったが、共通する運命を背負っているということに言葉にはならない信頼を感じていたと振り返っている。
今回、日本屈指の名陶の十五代目が互いの工房にて制作を行うという前代未聞の企画が実現したのには、このような樂氏と坂倉氏の深い関係があるからこそだといえる。
ただ自分たちの茶碗を持ち寄っての展覧会ではなく、まさに「新兵衛の樂、吉左衞門の萩」を観ることのできるまたとない機会。日本の陶芸界の歴史に残る本展にぜひ足を運んでいただきたい。
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[開催概要]
「吉左衞門X 新兵衛の樂 吉左衞門の萩」
2014年9月27日(土)~2015年3月29日(日)(月曜日は休館)
9:30~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
会場:佐川美術館 樂吉左衞門館
観覧料:
一般 1,000(800)円
高校生・大学生 600(400)円
中学生以下 無料(保護者同伴)
※( )内は20名以上の団体
※専門学校・専修学校は大学に準じて適用
※障害者手帳提示でご本人様と付添者1名まで無料