神戸ファッション美術館「1950-70年代の阪神間スタイル 」

阪神間エリアで花開いた戦後のファッション文化

poster for 1950s–1970s Style From Osaka–Kobe

「1950-70年代の阪神間スタイル」

神戸市エリアにある
神戸ファッション美術館にて
このイベントは終了しました。 - (2015-01-17 - 2015-04-07)

In フォトレポート by Reiji Isoi 2015-04-03

只今、神戸ファッション美術館にて、特別展示「1950-70年代の阪神間スタイル 」が開催されています。

阪神間と呼ばれる大阪と神戸を結ぶエリアは、古くから交通の要所として栄え、明治期に国内初のインターバーン(都市間鉄道)が敷設されたのを機に、急速な交通インフラの発展を伴う近代化が起こりました。また、明治の開港以降、舶来文化をいち早く吸収し独自のモダニズム文化を発展させた場所としても知られています。本展示では、戦後の復興期~高度成長期にファッション業界で活躍した、阪神間にゆかりのあるデザイナーたちの足跡を辿ることのできる衣装や資料が公開されています。

上田安子服飾学院(現上田安子服飾専門学校)を創設した上田安子、神戸ドレスメーカー女学院(現神戸ファッション専門学校)を創設した福冨芳美、田中千代服装学園(現田中千代ファッションカレッジ)創設者の田中千代のほか原田和枝、コシノヒロコらの、戦後日本のファッションや衣服の本質的な向上を目指し尽力したデザイナーたちの手がけた衣装や雑誌、スライドなどの資料展示です。

田中千代は、戦前から欧米でデザインや洋裁、芸術を学び、国内外で日本人デザイナーとして活躍するだけでなく、阪神間に位置する東灘区・岡本にいち早く洋裁学校を立ち上げ、服飾のプロフェッショナルを養成する専門学校へと発展させました。

1947年にパリでブランドを創設したクリスチャン・ディオールは、年に2回のコレクションを発表し、時代を先取るスタイルは世界の人々を虜にしました。1953年には関西でも日本人の手による2つのショーが開催されました。大丸とディオールの提携により大丸の婦人部のチーフデザイナーを務めた上田安子が手がけたものと、カネボウ(株式会社)の命を受けた田中千代がディオールの型紙を買い付け、カネボウの布地を用いて仕立て発表したもので、当時を辿る資料も紹介されています。現在でこそ、デザイナーズブランドと企業がライセンス契約のもとで製品販売をすることは広く行われていますが、百貨店と海外メゾンとの連携で生まれたドレスは、国内初となる画期的なものとして当時の人々を魅了しました。

1960年代にミニスカートのセンセーションを巻き起こし、現在に至るまで世界のファッションに多大な影響を与えるマリークヮントは、英国ガラコスメチックス社より化粧品も販売していました。1903年に神戸で創業した化粧品雑貨卸業の中山太陽堂(現株式会社クラブコスメチックス)は、1970年に英国ガラコスメチックス社と技術提携し、株式会社マリークヮントコスメチックスジャパンを設立し、国内で初めて販売展開した当時の製品や広告等が、マリークヮント初来日時の様子を伝える写真資料とともに展示されています。

1951年に「ヴァンヂャケット(VAN)」を大阪で創業し、メンズファッションに大きな影響を与えた石津謙介は、欧米のファッションを文化的な背景とともにスタイルとして紹介しました。ブレザーとボタンダウンシャツをベースとしたアイビールックスタイルは、当時の流行に敏感な若者に取り入れられ、現在でもファッションのジャンルとして広く認知されています。石津氏が手掛けたそれらの衣装や、当時創刊された男性ファッション誌とともに、丹頂株式会社の丹頂チック(現株式会社マンダム)など一世を風靡した男性用整髪料も展示されています。

常設展示には、服飾史年表としてヨーロッパを中心とした1730年代~現代の当時の衣装作品や服飾小物、ファッションプレートの他、収蔵している世界70の国と地域の民族衣装の一部を紹介しています。

また、当美術館の3階では、国内外のファッション関連の蔵書約36,000冊のほか、仏・米・伊のヴォーグやエルなど、20世紀初頭からのファッション雑誌のバックナンバーを閲覧可能なライブラリーも備えています。ライブラリー内のミュージアムショップ【museum in museum】では、クリエイターの支援・育成を目的として、公募によって選ばれた作家作品を展示・販売しています。古今東西のファッションや服飾文化についての興味や好奇心を満たしてくれるでしょう。

ライフスタイルのなかでも中心的な位置を占める衣服・ファッションについて、文化・歴史的な背景をふまえ多面的に鑑賞することのできる神戸ファッション美術館の展示に、是非足を運んでみてはいかがでしょうか?

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開催概要:「1950-70年代の阪神間スタイル 」
場所:神戸ファッション美術館
日時:~4月7日(火)
開館時間:10:00 – 18:00(入館は17:30まで)
休館日:水曜日、1月8日(木)―16日(金)、2/12(2/11は開館)
入館料:(特別展示・特集展示・ベーシック展示あわせて)
《一般》500円 《小中高65歳以上》250円
詳細:http://www.fashionmuseum.or.jp/museum/index150117.html

Reiji Isoi

Reiji Isoi . 1978年生まれ。00年代前半より音楽業界を中心に写真の撮影活動を始め、音楽・美術・文芸誌に写真・インタビュー記事等を寄稿するほか、映像撮影・制作の仕事に携わる。仲間と突発的に結成した『宇宙メガネ』からも不定期に発信することがある。各地で起こる皆既日食、米国のバーニングマン、インドのクンブメーラ祭、古代遺跡でのイベントなど、津々浦々で出会う作品や表現者たちとの交流を通じ、森羅万象の片影を捉えようとカメラを携え日々撮り続けている。 http://razyisoi.jp/ ≫ 他の記事

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