和歌山と関西の美術家たち リアルのリアルのリアルの

和歌山県で、関西・若手作家5人の作品を見られる機会

poster for Really Realistic Reality

「リアルのリアルのリアルの」

和歌山県エリアにある
和歌山県立近代美術館にて
このイベントは終了しました。 - (2015-03-14 - 2015-05-10)

In フォトレポート by Chiaki Ogura 2015-05-08

和歌山県出身者を含め、関西を拠点に活躍する1970年〜80年代生まれの、いわゆる若手作家の展覧会が行われています。タイトルである「リアル」とは「現実の」「本物の」といった意味があります。しかし近年、インターネットの発達による仮想現実世界の拡大は、現実世界が持っていたはずの実体性を脅かしています。現代における「リアリティ」とはなんなのか。5人の作家たちは、身近な風景や物、実際の動植物や自然現象など、それぞれにとって何らかの現実感を持ったモチーフを利用しています。そして、異なる素材とメディアを介して、「リアリティ」との関わりについて表現しています。

岡田一郎(奈良市生まれ)
岡田さんは、「あたりまえ」になってしまった身の回りの環境をリサーチし、視点を変えたり要素を限定して捉え直すことで、見過ごしていた意味や価値を見いだし、常に新鮮な驚きを持って日常と向き合うことを提案しています。例えば、普段聞こえているはずの空調の音を抽出した作品「《MOVING AIR’08》」や、景色を写し出した写真に物理的な手を加えて、まるで別の国のようににイメージを変えてしまう「《exchanged landscape》」シリーズなど、私たちが普段見ているものを無意識にしか捉えられていないことについて気づかされます。

小柳裕(和歌山市生まれ)
小柳さんは近年、街灯などの夜にまつわる光を描いている作家さんです。作品の中のハイライト部分は、キャンバス地を露出させていますが、これは光をイメージとして描ききらないことで、リアル(現実)との間に回路を開くことができないかと考えているから。キャンバスを写真に撮ってしまうと逆にリアルに見えなくなってしまうところも興味深いところです。対象物として描かれるもののリアリティと、絵画のあり方を見せようとしているのかもしれません。

大久保陽平(和歌山市生まれ)
スポンジや掃除機、ぞうきんなどの生活用品を型取り、陶器に仕上げた作品たちです。日常的な行為である掃除は、自分の手が届く範囲で体に直接伝わる生きた知識と情報なのかもしれないと大久保さんは言います。また、型に泥を流し入れる時や手を洗う時の水の冷たさなどの、陶芸作品が出来上がるまでの工程は、とてもダイレクトにリアルに情報が伝わる作業です。本人が語るように、生活に感じるリアルと陶芸に感じるリアルという2つのリアルは、とても似ている部分があるように思えてきます。

君平(名古屋市生まれ)
君平さんは、鉄を介してリアルを表現しています。例えば、一見抽象的な形に見える緑と黄色の鉄製の巨大な立体造形は、実は、ツヅミモという植物プランクトンやひまわりの花粉をモチーフにしたものです。自然界や日常には、幾何学的な形がたくさん存在しています。普段目には見えないが、確実にそこに存在している存在を改めて目の前にしたときに、なにを感じるかはあなた次第です。

伊藤彩(有田市生まれ)
約5mの高さの壁に、27枚の絵画がパズルのピースのようにはめられた空間。彼女は絵画を描く過程のなかで、まず思いついた空想の生きものを紙などに描きます。そしてそのドローイング類や布、過去の作品などを組み合わせて、一度、現実の空間として作り上げるのです。その空間の一部一部を写真に撮り、キャンバスに描くという手法をとります。今回は、その空間の中心にカメラを据え、一周360度を分割して撮影した写真を平面に再構成しました。まるで空想の世界を描いているように見えますが、実際には見えているものしか描いていないのです。

関西から若手の勢いのあるパワーを感じることができる展示内容となっています。同時に「コレクション展 2015ー春」も開催されています。近代日本美術の名品や現代版画コレクション、国内外の戦後美術など、出展数はおよそ100点に及び、今につながる関西の現代美術の一端をみることができます。和歌山を訪れた際は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょう。

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【概要】
和歌山と関西の美術家たち リアルのリアルのリアルの
【会場】和歌山県立近代美術館 2階展示室
【会期】2015(平成27)年3月14日(土)―5月10日(日)
【開館時間】9:30~17:00(入場は16:30 まで)
【公式サイト】http://www.momaw.jp/exhibit/after/post-82.php
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Chiaki Ogura

Chiaki Ogura . 岡山県出身。広告代理店・広報部にて勤め、現在はフリーライター・フォトグラファーとして活動中。ジャンルは幅広く、雑誌やWEB媒体などで執筆。ベンシャーンやアンディ・ウォーホルに感銘を受け、アートの世界に。ギャラリーや美術館の空間をこよなく愛する。作品を目の前にしたときの、右脳がぐらっと動かされる感覚がたまらない。comocomo.cafe ≫ 他の記事

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