魔女の秘密展~ベールに包まれた美と異端の真実~大阪文化館 天保山

ヨーロッパ各地で頻発した魔女狩りや、魔女裁判の実際とは?

poster for The Secrets of Witches Exhibition

魔女の秘密 展

大阪市港区エリアにある
大阪文化館・天保山にて
このイベントは終了しました。 - (2015-03-07 - 2015-05-10)

In フォトレポート by Reiji Isoi 2015-05-02

中世~近世のヨーロッパで、ルネッサンスやバロックなどきらびやかな文化・芸術活動が興った一方、多くの人々が実態のない魔女のレッテルを貼られ、拷問、処刑された魔女狩り、魔女裁判とは一体何だったのだろう?そんな疑問について考えるヒントを与える「魔女の秘密」展が、大阪文化館にて開催されています。

本展示は、2009年にドイツ・プファルツ歴史博物館で開催され、大きな注目とセンセーションを起こした「魔女ー伝説と真実」展を新たに企画構成した特別展です。「後期中世と近世の時代の危機」「中央ヨーロッパ世界が直面した魔女信仰の歴史的起源」をコンセプトに、近世の魔女狩りなど歴史的にもっとも暗黒な側面を紹介しています。ドイツ・プファルツ歴史博物館、ローテンブルク中世犯罪博物館のほか、オーストリア、フランスの各美術館・博物館の全面協力のもと、絵画やまじない道具、魔女裁判に関する書物や資料、拷問道具など、日本初公開を含む約100点を一堂に紹介しています。歴史の闇としてイメージされることの多い魔女狩り・魔女裁判という事象に光をあて、ヨーロッパの近代化をはじめ、視覚芸術、科学技術、メディアの進歩や、現実認識の変化などについて知る多くの手がかりを与えます。

本展示は4章立てで、以下の展示内容で構成されています。

第1章(信じる)

このコーナーでは当時の人々の生活の中で魔術や神秘的な力が根付いていたことを伝える様々な展示品が公開されています。
魔除けのための護符、処方箋、魔法の巻物のほか、当時の科学者や知識人たちを虜にした錬金術にまつわる書物や道具など、超自然的な力とともに魔女の存在がリアリティを持ち、広く信じられていた当時の状況を伝えています。

第2章(盲信する)

当時の世相を伝える書物や絵画作品のほか、武器や活版印刷機なども展示されています。
16~18世紀にかけ魔女狩りが盛んに行われた時期は、小氷期と呼ばれる大規模な気候の悪化による不作や飢饉、長引く戦乱による荒廃、さらには疫病の流行などによる厳しい状況が重なり、世の中には不安感が増大し、厭世的な気分が蔓延していました。

一方で、道路の整備、印刷機の普及に伴うメディアの進歩も著しく、書物による情報がより広範囲に届くようになった時代でもあります。
当時の知識人である神学者や法律家たちが記した魔女論が広く受け入れるようになります。魔女という存在の根拠や定義、魔女を裁くための手続きなどが、理論的、体系的に著されました。そうした本の挿画を通じて、魔女のイメージがより具体的に一般に浸透していくようになりました。

この頃に描かれた絵画や銅版画のなかには、バロック美術の特徴である奇抜な強調表現や過剰な細部表現により、魔女やサバト(魔女たちの集会)の様子をリアルに伝えようとする作品もあります。そうした作品の邪悪で陰惨なイメージは、同じ頃に描かれた、国王や教会の権威を伝える宮廷美術の豪壮華麗で天国的なイメージと比べると、ネガとポジのように対象的です。

第3章(裁く)

このコーナーでは、異端審問、拷問・処刑のための道具のほか、火あぶりの刑の状況をヴィジュアルとサウンドで表現したインスタレーションが展示されており、魔女裁判の様子をリアルに伝えています。天災や戦乱、疫病の蔓延する時代に、人々は行き場のない不安から魔女という存在をスケープゴートとしてつくりだし、多くの無実の人々が犠牲になりました。

また魔女裁判という語は中世の異端審問、封建的な圧政など前近代的なイメージと結びつけらることも多いですが、実際には、16世紀後半から17世紀前半にかけて最も多く行われており、国や自治体の裁判所で、領主や教会だけでなく市民も訴えを起こすことができるという司法の近代化と民主化が進む時代に生まれた悲劇であったことなどもわかります。現代の魔女研究によると、ヨーロッパでは15世紀半ばからの300年間でおよそ6万人強の人たちが魔女として裁かれ、拷問・処刑されたと報告されています。犠牲者の割合は女性が多く、貧民、老人、病人など社会的弱者や、異教徒、異文化に属する社会的周縁者が、魔女として社会から抹殺されました。ときには裕福な人も妬みから魔女として告発、処刑されることもありましたが、高い階級や権力者たち、医者や弁護士や大学教授といった知識人が犠牲者となることはめったにありませんでした。18世紀末まで続いた魔女狩りは、自然科学、哲学の進歩とともに終焉を迎えました。

第4章(想う)

魔女狩りの時代が終っても、魔女は消えることなく時代とともにゆっくりとイメージを変化させていきました。魔女や魔法のもつミステリアスなイメージは時代を超えて多くの作家たちにインスピレーションを与え続けています。このフロアでは、魔女をモチーフにした近代の絵画や銅版画、彫刻作品のほか、現代の日本人漫画家が本展示のために描き下ろした「魔女」のイラストや原画などが展示されています。かつては忌むべき悪魔的なものとして描かれていた魔女ですが、現代では漫画や映画作品の主人公として愛される存在となっています。近現代の魔女の描かれ方やそのイメージの変遷を観ることができます。

本展示は、魔女狩り、魔女裁判の実際とは、ヨーロッパの近代化の過程で、気候変動などの外部的要因とともに、社会、文化、人間心理に関わる様々な要因が複合的に作用し引き起こされたものであることを伝えています。なかでも、異文化の衝突、社会的な権力とシステムによる疎外、ある集団や社会を維持するときに生じる排他性や周縁者を排除する集団心理などの要因は、人類が文明を持って以来、多くの地域でかたちを変えて起こり続ける大小様々な社会問題にも通じるものでしょう。想像の産物である魔女という存在が現実の人間に与えた歴史的悲劇は、かつてないほどの勢いで進むグローバル化とともに、仮想空間が解像度を高めながら果てしなく広がり続ける現代社会に、警鐘を鳴らすものともいえます。

その起源は古代に遡り、現代に至るまでイメージを大きく変えながらも常に人々を惹きつける魔女を、様々な角度から検証することのできる特別展示「魔女の秘密」をのぞきに、是非足を運んでみてはいかがでしょうか?

参考文献:
魔女の秘密展公式図録 中日新聞社・東映
黒川正剛「魔女狩り」講談社 2014年
マーヴィン ハリス「文化の謎を解く―牛・豚・戦争・魔女」東京創元社 1988年

********************************
開催概要:「魔女の秘密展~ベールに包まれた美と異端の真実~ 」
場所:大阪文化館・天保山(海遊館となり)
日時:~5月10日(日)会期中無休
開館時間:10:00 – 17:00(土・日・祝は18:00まで)*入館は閉館30分前まで
入館料:《一般》1500円 《大学・高校生》1200円《中学・小学生》600円
*団体割引あり、以下のリンクをご参照ください
詳細:http://majo-himitsu.com/
********************************

Reiji Isoi

Reiji Isoi . 1978年生まれ。00年代前半より音楽業界を中心に写真の撮影活動を始め、音楽・美術・文芸誌に写真・インタビュー記事等を寄稿するほか、映像撮影・制作の仕事に携わる。仲間と突発的に結成した『宇宙メガネ』からも不定期に発信することがある。各地で起こる皆既日食、米国のバーニングマン、インドのクンブメーラ祭、古代遺跡でのイベントなど、津々浦々で出会う作品や表現者たちとの交流を通じ、森羅万象の片影を捉えようとカメラを携え日々撮り続けている。 http://razyisoi.jp/ ≫ 他の記事

KABlogについて

Kansai Art Beatの運営チームにまつわるニュースをお伝えします。

Facebook

KABlogのそれぞれの記事は著者個人の文責によるものであり、その雇用主、Kansai Art Beat、NPO法人GADAGOの見解、意向を示すものではありません。

All content on this site is © their respective owner(s).
Kansai Art Beat (2004 - 2021) - About - Contact - Privacy - Terms of Use