今年2015年の京都は「琳派400年」を掲げた展覧会が目白押し。数ある展覧会の中でも、「琳派の作家って誰だっけ」とか「技法の特徴は」と美術史のお勉強のような見方を「したくない」方にオススメなのが、この「琳派四百年 古今展 ―細見コレクションと京の現代美術作家―」である。
「これは古美術だからいいものだ」「やっぱり現代美術は分かりにくい」と言うのはなぜだろう?美術という言葉が指すモノが実に幅広いからこそ、細見美術館はその垣根を外す試みをした。
いつもの細見美術館の展覧会は、重要文化財のような貴重なものも含まれた、いわゆる「古美術」が並んでいる。その繊細さ、上手さ、やっぱり昔の人はすごい、など感心しながら、ガラス越しに季節を感じ取ったり、花鳥風月を楽しんだり。だったらこの、美術館の古美術コレクションと1975年生まれで彫刻家として第一線で活躍する名和晃平の作品が並ぶ部屋はどうだろう?古美術も名和の作品も、うまいなあ、すごいなあ、と感じる。名和のことを知らない人だと、写真右手に見える屏風は「前衛的な古美術」のように見えるかもしれない。
展示室を移動すると、今度は山本太郎の作品が並ぶ。これまで山本は、キャラクターをモチーフにするような「いまの時代」を取り入れた画風を展開してきた。そういった作品と、美術館コレクションの掛軸や屏風が対になって並ぶとき、「あれ?昔の人もウィットに富んでいたのかも」と気づかされる。並ぶ作品の違いは「経年劣化した表面」だけなのかもしれない。
陶芸界で活躍する近藤高弘は、頭像の作品を並べた。いや、顔が正面に向くように並列で並べた、という意味ではなく、写真のようにひっくり返っているものもあれば、顔があちこちに向くように置かれていたのだ。そして美術館の所蔵品である仏具とともに、普段は茶碗など小さなものを愛でるような展示室に、バランスよくインスタレーションされていた。頭像のせいか「どきっ」とするが、仏像と向き合ったときのような「ありがたみ」も感じる。
企画者である細見美術館からすれば、これまで古美術しか扱ったことがなかったことから、出品交渉から展示室の設置までの「生きている作家とのやりとり」が新鮮だった、という。作品が置かれたその間合い、目線の高さ、といったものは、3人の作家が決めている。つまり、作品そのものだけでなく、彼らは琳派400年を意識しながらも、展示室の空間全体も「いま」あるいは「生」なのだ。そんなぜいたくな展覧会を、自分のペースで向き合ってみてはどうだろうか。
※近藤高弘の「高」という字はハシゴタカです。
※吉田翔の「吉」は土+口です。
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【概要】琳派四百年 古今展 ―細見コレクションと京の現代美術作家―
【会場】細見美術館
【会期】2015(平成27)年5月23日(土)―7月12日(日)
【開館時間】10:00~18:00(入場は17:30 まで)
【公式サイト】http://www.emuseum.or.jp/