The Ghost in You – 天国と地獄との結婚

夜しか鑑賞できない展覧会を宿泊型アートスペースart space AREで開催中。

In フォトレポート by Ai Kiyabu 2015-06-26

京都四条大宮の閑静な住宅街に2014年にオープンした「KYOTO ART HOSTEL kumagusuku」をご存知ですか? アーティストの矢津吉隆氏がオーナーを務めるこのスペースは、「アート(展覧会)」と「ホステル」を合わせ、展覧会の中に宿泊し、美術を「体験」として深く味わうための宿泊型アートスペース。

美術館やギャラリーといったいわゆる「ホワイトキューブ」のなかで作品を鑑賞するのとは、また違った感覚で作品と対峙できる希有な場所です。この1Fのart space AREで現在開催中の「The Ghost in You – 天国と地獄との結婚」展を紹介します。

夜の空気がよく似合う、ここでしかできない鑑賞体験

開館時間は17時から21時までということで、夜しか鑑賞できない珍しい展覧会。音楽が小さく流れるカウンターバーを通り過ぎると、会場奥に谷澤紗和子の切り紙作品が出迎えてくれます。ライトアップされた切り紙が、吹き抜けから舞い込む微かな風に揺れて神聖な雰囲気です。

建物の中心である吹き抜け部分には、小さな森が出現。まるで始めからここにあったかのように溶け込んでいるこの森は、西村知子のインスタレーションです。森自体をスクリーンに、結婚の民族儀礼の映像と、中国の慣習で赤犬を捌く映像を映し出したこの作品は、様々な「他者」との結びつきをつくる「結婚」の可能性、という展覧会のテーマと響き合います。深閑とした夜の雰囲気によく似合う展示です。

普段は宿泊客しか鑑賞できない2Fの展示も限定公開

実はこの「The Ghost in You – 天国と地獄との結婚」展は、昨年12月から2Fの宿泊スペースで開催されている通年展示「光の洞窟」と同キュレーター奥脇嵩大氏による企画。そうした関連性から、この「The Ghost in You – 天国と地獄との結婚」展に訪れた方は、通常は宿泊しないと見られない2Fのスペースも鑑賞できます。

exonemoによるパソコン周辺機器を焚火で燃やす映像《exonemo.com/fireplace》(2014)や、天野祐子による自然の断面を木に出力した《Untitled》(2014)などといった作品が、静かな宿泊場の空間に生き物のように住みついている「光の洞窟」展。自然と人間の関わりを問うこの展覧会は、「The Ghost in You – 天国と地獄との結婚」展によって拡張され、さらに魅力を増しているように思います。

今期のkumagusukuの神髄を味わえる展覧会。この機会を逃さずに、是非訪れてみてください。

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「宿泊型のアートスペース」KYOTO ART HOSTEL kumagusuku完成!
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【概要】
The Ghost in You – 天国と地獄との結婚
出展作家:谷澤 紗和子 西村 知子

会期:2015 年6月14日(日)〜 7月3日(金) 17:00 〜21:00 ※会期中無休
料金:500円 ※同時開催中の「光の洞窟」展観覧料込
会場:art space ARE (KYOTO ART HOSTEL kumagusuku内)

主催・問合:KYOTO ART HOSTEL kumagusuku

協賛:A.S.K atelier share kyoto, OZASA KYOTO
後援:art space ARE
協力:公益財団法人下中記念財団, 石井大輔
宣伝美術:大西正一
企画:奥脇嵩大(キュレーター / アートコーディネーター)

公式サイト:http://kumagusuku.info

Ai Kiyabu

Ai Kiyabu . 1989年岐阜生まれのエディター・ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒業。大学生の頃にファッション誌『GINZA』の編集アシスタント、フリーペーパー『Tokyo Art Map』の編集インターンを経験。卒業後、雑誌『美術手帖』の編集部にて、現代美術から写真、陶芸まで様々なジャンルの記事を担当。2014年冬より憧れの地・京都に拠点を移し、独立。歴史ある文化の面白さを新しい視点で発見したい。 ≫ 他の記事

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