高橋匡太インタビュー

彼の光は私たちの心のなかへ差し込む

In インタビュー by Chisai Fujita 2015-08-29

近年、LEDや光を扱うメディアアート作品は増えており、プロジェクションマッピングの技術力も年々上がっている。アーティストの高橋匡太が手掛ける作品は、こうしたものとは「一味違う」個性を持って、輝き続けている。2015年の秋から冬にかけて行われる展示を中心に、話を聞いてみた。

-まず「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2015」が9月12日から始まりますね。どういう作品を出されるのでしょうか。

六甲ガーデンテラスにある塔とその周辺で、オルゴールの音と一緒に楽しむことができるインスタレーションです。

六甲山の施設である六甲オルゴールミュージアムから借りてきた、大きなオルゴール盤をつかいます。このオルゴール盤には音を鳴らすための穴がいくつも開いています。その穴に投影した光は、六甲ガーデンテラスの塔の壁面に映されたり、高さ4メートルのポールに取り付けたミラーボールに反射されて、辺りに光の粒があふれます。オルゴールは、毎晩スタッフの人が音を鳴らすことになっています。「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2015」の会期は11月23日までですが、僕の作品は12月28日まで展示する予定です。

-そして京都府植物園でも展示をなさるんですよね。

植物園 de RIMPAアートプロジェクト『PANTHEON(神々の饗宴)』」といって、ヤノベケンジさんと増田セバスチャンさんの作品が、7月から段階的に増えていくように、温室の前に置かれています。先日3つの彫刻作品がそろったのですが、僕は9月27日からそれらの彫刻作品をライトアップするような作品を設置します。

そして同時に僕は、2つの作品も発表します。1つは、植物園にはくすのきの並木道があって、60本もあるクスノキをライトアップします。もう1つは、カイヅカイブキの木に光の実をつけます。京都市内の小中学校の子供たちが絵を描いてくれた実を、大学生など大人が木に取り付けていく、というワークショップ形式で展開します。

-この写真はテストのときのものだそうですが、結構、色のバリエーションがあるのですね。

そうなんです。特に温室で見せる光の作品は「カキツバタの色」といったように、琳派の作品につかわれていた色を意識して、つくりました。見る人が見たらその色の違いは分かるものだ、と僕は思っています。

-野外イベントとか行くと、ライトアップだのプロジェクションマッピングだの、と光をつかったものが多いですよね。見ていたら「赤青緑の三色しかないのか?!」とがっかりするようなものもあるように感じます。

10月には神戸元町旧居留地をライトアップするのですが、地元の文房具屋さんが開発した「KOBE INK」の色をつかいます。僕はアーティストなので、そういった細やかな色づかいや違いをいつも気にしていたいです。

-高橋さんは、昨年亡くなった國府理さんと大学の同級生で、彫刻を専攻されていたんですよね。いつから光を扱う作品を手掛けていらっしゃるのでしょうか。

学生時代に「白紙に絵を描くことは向いていない」と気付きました。大学3年生のときからスクリーンというオブジェに光や映像を投影して、対象を変化させるような作品をつくっていました。といっても今と違って、プロジェクターもとても大きかったり、パソコンもなかったような時代でしたが(笑)。卒業してからは、スクリーンだけでなく建物の壁面や他のものに光や映像を映し出す仕事が増えたり、光の見せ方も投影するだけではなく多様化して、現在に至ります。

例えばこれは、ちょうちんに光を仕込んで、遠隔操作で光の色を変えることができるようにした作品です。参加者1000人分のちょうちんを用意することから、その光の制御まで僕がしなくてはいけない大変さはありますが、参加型のアート作品として成功した一例だと思っています。

-つまり鑑賞者だけでなく、ちょうちんのメーカーさんに発注したり、制御システムを開発したり、という制作段階においても、外部の方たちとのコラボレーションも発生するということですよね。

そうなんです。僕はそういったコラボレーションすることも、楽しく感じています。多くの人たちはアートのことなんて知りませんから、電話して「こういうことをしたいんですが協力してもらえませんか」と説明をするところから始まります。見積を取ったり、仕組みを一緒に考えたり、とコラボレーションする企業の方たちと話を進めていった結果が、展覧会やアートイベントで作品となって現れます。企業さん側からすると、僕のアート作品を見て、初めて自分たちの製品や技術が生かされたことを知って、喜んでくださいます。先日、とある制御システムの会社さんから暑中見舞いハガキが届いたのですが、僕の作品の画像がつかわれていました(笑)。

-狭いアトリエに閉じこもってるアーティストたちに聞かせたい話ですね(笑)。そんな高橋さんがこれからやりたいこと、夢とかってありますか?

ワークショップのような、人と直接的に関わる仕事は続けていきたいですね。あと、2009年にせんだいメディアテークで発表したような、これまで撮影されてきた映像をアーカイブズするような見せ方の作品はつくりたいです。僕は人にとても興味があって、人生を振り返るとか、町の歴史を眺めるとかいうことを映像化したいですね。

-高橋さんの作品は、ものを照らすとか、映された映像がどうとか、表面的になぞっているものではない気がしていました。高橋さんの光は、私たちの心の奥のほうに差し込んでいるんですね。

そんなことを言ってる前に、今年あと4か月ぐらいですけど、10か所近くで展示があるので、まずそれをやり遂げなくてはいけません(笑)。

-わあ、大変です!今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

高橋匡太 
http://www.kyota.jp/

今後の予定
■長谷寺「長谷の灯り
2015年8月22日~30日
長谷寺(神奈川県鎌倉市)

六甲ミーツ・アート 芸術散歩2015
2015年9月12日~11月23日
※高橋匡太作品は12月28日まで展示
六甲ガーデンテラスほか(神戸市)

植物園 de RIMPAアートプロジェクト「PANTHEON(神々の饗宴)」
2015年9月27日~10月11日
京都府植物園(京都市)

■スパイラル30周年記念事業展覧会「スペクトラム ―いまを見つめ未来を探す」
2015年9月26日~10月18日
スパイラルガーデン(東京都港区)

スマートイルミネーション横浜
2015年10月30日~11月4日
象の鼻テラス、象の鼻パークほか(神奈川県横浜市)
※高橋匡太作品はクイーンの塔(横浜税関)ほかで展示予定

など

Chisai Fujita

Chisai Fujita . 藤田千彩アートライター/アートジャーナリスト。1974年岡山県生まれ。玉川大学文学部芸術学科芸術文化専攻卒業後、某大手通信会社で社内報の編集業務を手掛ける。5年半のOL生活中に、ギャラリーや横浜トリエンナーレでアートボランティアを経験。2002年独立後、フリーランスでアートライター、編集に携わっている。これまで「ぴあ」「週刊SPA!」「美術手帖」など雑誌、「AllAbout」「artscape」などウェブサイトに、展覧会紹介、レビューやインタビューの執筆、書籍編集を行っている。2005年から「PEELER」を運営する(共同編集:野田利也)。鑑賞活動にも力を入れ、定期的にアートに関心の高い一般人と美術館やギャラリーをまわる「アート巡り」を開催している。また現代アートの現状やアートシーンを伝える・鑑賞する授業として、2011年度、2014年度、2015年度愛知県立芸術大学非常勤講師、2012年度京都精華大学非常勤講師、2016年度愛知県立芸術大学非常勤研究員、2014~ 2017年度大阪成蹊大学非常勤講師などを担当している。 写真 (C) Takuya Matsumi ≫ 他の記事

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