パラミタ陶芸大賞展

今年10周年を迎えた、陶芸家の登竜門。その歩みを振り返る。

poster for The Tenth Paramita Ceramic Arts Awards Exhibition

「第10回パラミタ陶芸大賞展」

三重県エリアにある
パラミタミュージアムにて
このイベントは終了しました。 - (2015-07-15 - 2015-08-31)

In フォトレポート by Ai Kiyabu 2015-08-12

川端健太郎や新里明士などを輩出してきた「パラミタ陶芸大賞展」も今年で10年目を迎えます。今年はCGグラフィックを立体化する新しい傾向の作家から、すでに数々の展覧会に出品してきた大ベテランまで、年齢も作風も多様な作家がノミネート。隣接ギャラリーでは10年の歩みを振り返る展覧会も開催されており、大賞展で盛り上がるパラミタミュージアムを訪れました。

特定の審査員がいない、クリアな陶芸大賞。

「陶芸の専門家だけの意見ではなく、普通の美術ファンはどう見るかというのが、パラミタ陶芸大賞展の一つの特徴ですね」と学芸部長の湯浅英雄さん。ノミネート作家の選出は、美術館や批評家をはじめとする、全国200カ所以上の専門機関・専門家からの推薦によって行われます。さらに最終的な大賞は、一般来場者の投票によって決定。自分の一票が大賞を左右するということで、いつもよりも鑑賞に力が入ります。

オブジェも器も現代アートも選考対象。
「時代を代表する」多彩な陶芸作家が集まる。

会場を見渡すと、土のオブジェから、華やかな九谷焼、現代アートのようなものまで、多種多様な作品が。

これは本当に陶芸? と土肝を抜かれるのが、増田敏也さんの作品。ピクセルで構成されたデジタル画像を焼きもので表現したユニークなラーメンの作品は、汁が滴り落ちる麺が箸で持ち上げられた様子が描写されており、重量感が分からなくなる不思議な感覚。

一方で植松永次さんの作品は、土器のようなプリミティブさが魅力。しっとりとした土肌のものもあれば、ひび割れているものもあり、それぞれの素材の質感が感じられます。展覧会では70年代から作陶に励んできた植松さんのようなベテランと、年齢も世界観もかけ離れた若い増田さんのような作家の作品が、同じだけの展示スペースを与えられて、一堂に見られるのが面白い。「ノミネートには、年齢や経歴のくくりは設けていません。オブジェ、器というのももちろん関係無し。時代を代表する作家、というテーマのもとで選んでもらっています」。ベテランと新人、両者にとっていい刺激になるという効果も。

ほかにも、原爆や震災に対し「祈り」や「鎮魂」という作品を展開してきた伊藤慶二さんや、華麗かつ精緻な九谷焼き作品をつくる齋藤まゆさん、膨大なフリルが特徴の服部真紀子さん、骨のようなパーツが組み立てられた作品の山岸大祐さんなど、各々の個性が溢れる展覧会になっています。

過去の「パラミタ陶芸大賞展」を大賞受賞者の作品と展示写真で振り返る「パラミタ陶芸大賞展10年の歩み」と併せて見られるこの機会に是非訪れてみてください。

(おまけ)作品と自然が調和するお庭にも注目

パラミタミュージアムには約1200坪のお庭があります。樹齢200年のケヤキが涼しげな木陰をつくるこのお庭は、内田鋼一さんや山口牧生さん、大賞展出品の伊藤慶二さんなどの作品に出会える、おすすめのスポットです。

【概要】
「第10回パラミタ陶芸大賞展」
出展作家:伊藤慶二、植松永次、齋藤まゆ、服部真紀子、増田敏也、山岸大祐
会期:2015年7月15日〜8月31日 9:30 ~17:30
料金:一般 1000円、大学生 800円、高校生 500円、中学生・小学生 無料
会場:パラミタミュージアム
公式サイト:http://www.paramitamuseum.com

Ai Kiyabu

Ai Kiyabu . 1989年岐阜生まれのエディター・ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒業。大学生の頃にファッション誌『GINZA』の編集アシスタント、フリーペーパー『Tokyo Art Map』の編集インターンを経験。卒業後、雑誌『美術手帖』の編集部にて、現代美術から写真、陶芸まで様々なジャンルの記事を担当。2014年冬より憧れの地・京都に拠点を移し、独立。歴史ある文化の面白さを新しい視点で発見したい。 ≫ 他の記事

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