暮らしの中の「普通」を切り取ってみる

日常にとけこむアート/OURS. KARIGURASHI MAGAZINE(アワーズ・カリグラシマガジン)

In フォトレポート by Chiaki Ogura 2015-09-30

日常にとけこむアート
アートは美術館の中だけで楽しむ、といった特別なものでは、もはやありません。日々の暮らしになじむように、そっと寄り添うように存在しています。生活の中に自分らしい個性を表現することが、アートの主流になりつつあるのかもしれません。衣・食・住・プロダクト開発・空間デザインなど、様々なアプローチからアート・デザインと関わる企業、団体やメディアを取材します。

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暮らしの中の「普通」を切り取る
OURS. KARIGURASHI MAGAZINE(アワーズ・カリグラシマガジン)


サイトを開いた瞬間に、手描き調のフォントや楽しげなイラストが目に飛び込んでくる。ついついクリックしてしまう動画や写真など、コンテンツが盛りだくさんのOURS. KARIGURASHI MAGAZINE(アワーズ・カリグラシマガジン)は、日々の暮らしの中で起こっている日常風景を、クリエイティブな目線で切り取ったWEBマガジンです。

2015年2月にスタートしたばかりのOURS.。今回、初の試みとして「アワーズカリグラシマガジンと50人のクリエイター」展がグランフロント大阪のOpen MUJIで行われています。ウェブ上で見られるコンテンツの一部をOpen MUJIのスペースに合わせて展示するとともに、特別企画としてOURS.参加クリエイター62名の『なぜか捨てられないもの』も展示中です。
OURS.編集部のUR都市機構西日本支社の小正茂樹さんと写真とプリント社の平野愛さんに、OURS.と今回の展示について、お話を伺いました。


普通の暮らしを楽しむ目線

小正さん:OURS.のコンセプトは、”カリグラシ(借り暮らし)”です。部屋を借りて暮らすさまざまな風景をWEBサイトで展開しながら、リノベーションやDIYなどではなく、そのままを楽しむ暮らしを提案したいと考えています。実際、私たちUR都市機構の取り扱っているものは賃貸物件だったりするのですが、そういうものを飛び越えて、”生活をシンプルに見つめ直して、自由な目線で切り取った表現を発信しよう”ということを主軸に運営しています。

 

平野さん:サイトの連載コンテンツには、暮らしの現場をドキュメント取材する『カリグラシTV』、デザイナーやアーティストと一緒に町を再発見する『散歩と観察』、気鋭の写真家やイラストレーターが団地を訪ねて撮影やスケッチを行う、日替わり写真集『7 DAYS SCENE』などがあります。参加アーティストやクリエイターの皆さんにお願いした時、”宣伝はどう入れたらいいのですか?”と聞かれることもあります。ものを作る上で、”制作物=販促物”という方式が、知らず知らずの無意識の中に刷り込まれているのかもしれません。なので私たちは、撮影対象や撮影方法などもそれぞれに委ねて、”借り暮らしをしている人の生活が純粋に面白いと思えるように、好きなトーンで自由に撮ってください”と伝えます。私たちがコントロールするのではなく、その人の特性や切り口で作ってもらうのが一番いい作品ができると思っているので。例えば、”カリグラシTV”でも、映画監督が撮る映像とフォトグラファーやウェディングムービー専門の方が撮る映像と、やっぱり全然違うんですよね。テイストも目線も。それが面白い。



捨てられないものから、普通を振り返ってみる

平野さん:”なぜか捨てられないもの展”では、日常使うわけではないのに、なぜか家にずっと居座っているものを展示しています。NYの旅行中に道ばたで拾ったレコード、祖父にもらった壊れたアナログカメラなど個性豊かな約62点が集まっています。どんな家庭にもひとつはある、わけもなく捨てられないもの、気づくといつもそこにあるもの。古いものだから捨てるとか、直しちゃうとか潰しちゃうのではなくて、何故ずっとそこに居座っているのだろうと。これらからそれぞれの暮らしを垣間みることで、人とものの関係を見直すきっかけになればと思っています。生活用品に囲まれた展示会場構成は、NO ARCHITECTS
の西川広志さん。全て無印良品の商品をお借りして、OURS.らしい空間に仕上がりました。

会期中には、10月3日(土)にはワークショップやトークセッションも開催予定。イラストレーターのタケウマさんやyamyamさんと一緒にスケッチをしたり、OURS.参加写真家さん同士で作品を見せ合いながら、日常の暮らしをどう撮影したかについて、ディスカッションの場も。(※詳細は、下記の展覧会ページを参照)

小正さん:OURS.には、過剰に消費する暮らしや公共性についてなど、今の暮らしを改めて考えるためのヒントが詰まっているようにも思います。今回の展示では、WEB上だけでは表現できないOURS.の世界観が伝えられたら。展示を通してアーティストさん達の目線を共感してもらえる場にもなればいいですね。普通の暮らしの中に、こんなにたくさんの面白さが隠れているんだと、感じてもらえると嬉しいです。

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【概要】
「アワーズカリグラシマガジンと50人のクリエイター」展
開催期間:2015年9月15日(火)-10月14日(水)
開催場所:無印良品グランフロント大阪 Open MUJI
住所  : 大阪市北区大深町4-1 グランフロント大阪北館4F
開館時間:10:00-21:00 [会期中無休]
観覧費 :無料

※展覧会ページ
http://ours-magazine.jp/blog/ours-exhibition/

企画・制作:OURS.編集部
アートディレクション・デザイン:前田健治
会場構成:NO ARCHITECTS
主催:UR都市機構西日本支社
協力:無印良品 グランフロント大阪 Open MUJI

公式サイト)
「OURS. KARIGURASHI MAGAZINE」
http://ours-magazine.jp/
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Chiaki Ogura

Chiaki Ogura . 岡山県出身。広告代理店・広報部にて勤め、現在はフリーライター・フォトグラファーとして活動中。ジャンルは幅広く、雑誌やWEB媒体などで執筆。ベンシャーンやアンディ・ウォーホルに感銘を受け、アートの世界に。ギャラリーや美術館の空間をこよなく愛する。作品を目の前にしたときの、右脳がぐらっと動かされる感覚がたまらない。comocomo.cafe ≫ 他の記事

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