そして わたしたちは かつてよりひくいところに かつてよりたかいところに

千總ギャラリーで4人の現代アーティストと千總のコラボレーション展が開催中。

In フォトレポート by Ai Kiyabu 2015-10-06

京友禅の老舗「千總」が運営する千總ギャラリーが、現代アーティストとのコラボレーション展を開催している。

千總が現代アーティストとコラボレーションするのは、2001年から2003年にかけて開催した「YUZEN ART EXHIBITION」「450YEARS-CHISO YUZEN EXHIBITION」「YUZEN ON SURF」「YUZEN HISTORY MIX」以来。その時は、村上隆、小谷元彦、宇川直宏など錚々たる顔ぶれが千總とともに制作した。

今回はフランス人のヴァンサン・ロマニーをキュレーターに迎え、4人の海外アーティストの作品が登場。着物の素材や制作方法を元に新しく制作した作品や、着物とデザインの在り方が似ている作品を、千總所蔵のコレクションとともに展示。

格式高い千總のコレクションをポップな作品とともに身近に感じられる展覧会の見どころをフォトレポートします。

千總の反物を使った作品を展示

まず、目を惹くのが大きな展示ケースに広げられた3本の反物。千總製の赤い友禅の反物を挟んで、チェーンが弧を描くイングリッド・リュシュの作品と、蛇が描かれたカリナ・ビシュの作品がある。リュシュとビシュの作品はともに、千總が実際に使っている真っ白な反物を素材に、この展覧会のために制作した新作だ。展示方法は、千總の友禅の反物を松にかけて張る様子を描いた、修学院離宮の小襖絵「松に友禅張り物図」へのオマージュ。展覧会場では地袋の「松に友禅張り物図」を楽しめる。

文字×イメージの1/4サイズ着物デザイン。

絵巻物から浮世絵、マンガに至るまで、デザインの中に文字を入れこむということは、日本では古くから行われてきた。着物に文字が入っているのも珍しくない。リザ・ホルツァーは、写真とセンテンスを組み合わせた自身の作品を、着物のデザイン画に落とし込んだ新作を制作した。シルクにプリントされたこのひな形(=デザイン画)は、着物の1/4サイズで実際に千總がデザインする時に使う形式と同じものだそう。

キュートなドットのコーディネート

10年前に制作された山本耀司デザインのドット柄の着物。その上に、カリナ・ビシュのドレスが羽織られた、展覧会唯一のコーディネートの展示。ドットというモチーフの共通点はもちろん、ビシュのドレスは2枚の布を貼り合わせた平面的な作りで、衣桁(着物をを掛けておく道具)にビシッとかかるのも着物と相似している。

表と裏。リバーシブルの美学

こちらはイングリッド・リュシュの作品と江戸時代後期の着物。着物はリバーシブルになっており裏側を展示している。「リバーシブルの着物は珍しいですが、着物は裏面や襦袢など見えないところを大切にする美学があります」と千總ギャラリー学芸員の加藤結理子さん。部分的に布が反転していて表と裏の境界線が曖昧なリュシュの作品と呼応している。

繊細な色彩のコラボレーション

アンヌ・ロール・サクリストは、カーテンなど古い生地を撮影した抽象的な写真をもとに1/4サイズの着物のひな形を制作。サクリストの展示コーナーは、作品の色彩や柄にあわせて、似合うコレクションの着物をセレクトしている。「着物って、このように背の部分を中心にデザインしたり、デザインされた反物から作っていくのです。もちろん着た時のことも考えますが、衣桁にかけた時の見た目だけでも充分に楽しめるようになっているのですよ」(加藤さん)。

【関連イベント】
トークセッション 10月6日(火)17:00~
ゲストキュレーター:ヴァンサン・ロマニー、千總学芸員:加藤結理子
※参加無料、事前申し込み不要。

【概要】
ET NOUS VOICI PLUS BAS ET PLUS HAUT QUE JAMAIS.
そして わたしたちは かつてよりひくいところに かつてよりたかいところに
会期:2015年9月26日(土)~10月16日(金) 9:30~18:00 水曜休(臨時休館あり)
会場:千總ギャラリー
公式サイト:http://www.chiso.co.jp

Ai Kiyabu

Ai Kiyabu . 1989年岐阜生まれのエディター・ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒業。大学生の頃にファッション誌『GINZA』の編集アシスタント、フリーペーパー『Tokyo Art Map』の編集インターンを経験。卒業後、雑誌『美術手帖』の編集部にて、現代美術から写真、陶芸まで様々なジャンルの記事を担当。2014年冬より憧れの地・京都に拠点を移し、独立。歴史ある文化の面白さを新しい視点で発見したい。 ≫ 他の記事

KABlogについて

Kansai Art Beatの運営チームにまつわるニュースをお伝えします。

Facebook

KABlogのそれぞれの記事は著者個人の文責によるものであり、その雇用主、Kansai Art Beat、NPO法人GADAGOの見解、意向を示すものではありません。

All content on this site is © their respective owner(s).
Kansai Art Beat (2004 - 2024) - About - Contact - Privacy - Terms of Use