パラレルワールド または私は如何にして世界を愛するようになったか

二人の映像作家が描き出す壮大な「現代の風景」。期間限定のインスタレーションも必見!

poster for New Incubation 7 “Parallel World or: How to Learn to Love the World”

「NEW INCUBATION 7 『パラレルワールド または私は如何にして世界を愛するようになったか』」

京都市中京区エリアにある
京都芸術センターにて
このイベントは終了しました。 - (2015-09-09 - 2015-10-18)

In フォトレポート by Ai Kiyabu 2015-10-01

京都芸術センターが毎年開催しているベテラン作家と若手作家のコラボ展「ニュー・インキュベーション」。

今年は、高度なテクノロジーで壮麗な映像を作り出す二人の作家、ピエール=ジャン・ジルー(1965-)とカンガワ ユウジン(1989-)が「現代の風景」をテーマに、それぞれ対照的な世界を描き出している。

映像への「最大限の介入」と「最小限の介入」
二人の作品の対照的な手法や世界観に注目!

「現代の風景」というテーマに対し、二人の作品の「現代のイメージ=映像」への介入の仕方はまるで真逆。

「CGやデジタル処理を駆使して元の映像を大幅に作り替えてしまうジルーの作品は、映像に最大限の介入をしていると言えます。逆に、カンガワは撮った映像を切り貼りするに留めているので、最小限の介入。ランドスケープの映像という点では同じですが、二人の作品は、全く違った手法でつくられています。ところが両者を並べてみると、どこか近しい印象を受けるのが興味深いと思います」と展覧会担当の古川真宏さん。

日本の近代建築運動・メタボリズムをモチーフとしたジルーの《Metabolism》(2015)は、新宿や新橋など主に東京で撮影した映像を用いているが、黒川紀章のヘリックス・シティを思わせる建築物が海のまっただ中に突如立ちそびえているなど、CGによってつくられた、実際にはあり得ない、想像力溢れる世界が広がっている。

カンガワの《SANSUI》(2015)は、東北の鳥海山と月山をニュートラルな視点で撮影したクールなモノクロ映像を、シンメトリックに並べて途中でリバース。 「CGを駆使したジルーの映像よりも、カンガワの隙のなく美しい映像の方が、幻想的であるのが面白い」(古川さん)。

ジルーはTV番組の制作分野でも活躍。カンガワは企業や都市計画と連携したプロジェクトを行う。アートを基盤としながらも、ほかの様々な方法で社会と関わる二人のアーティストとしての在り方が、個人の内的世界には留まらない、客観的でオルタナティブな映像世界を作り出しているのではないか。

ニュイ・ブランシュKYOTO2015関連企画
「パラレルイベント」の見どころはここ!

パリ市の施設「アンスティチュ・フランセ関西」と、京都市が共同主催で毎秋行うアートの祭典「ニュイ・ブランシュKYOTO2015」。これに併せて行う展覧会関連企画「パラレルイベント」では、期間限定で展覧会出品作以外の作品や、展覧会とは異なる見せ方のスペシャル・インスタレーションが鑑賞できる。

期間限定イベントは3つ。開催情報とともに、その見どころを解説します!

(1)カンガワ ユウジン (京都芸術センター内 フリースペース)
日時:10月3日(土)18:00〜22:00、4日(日)10:00〜13:00/18:00〜22:00、5日(月)10:00〜17:00

3日間限定で、《SANSUI》スペシャル・インスタレーションを実施。大広間に水を張って、《SANSUI》のそれぞれのシーンを東西南北に投影してディスプレイ。鑑賞者は水の上を歩きながら、鳥海山や月山の厳しい修験道を擬似的に体験できるという、身体的なインスタレーションになるそう。

(2)ピエール=ジャン・ジルー(京都国際マンガミュージアム)
日時:10月3日(土)20:35〜20:45

ニュイ・ブランシュの1夜限定で、4つの短編映像からなるシリーズ「Commercial Fragmentations」より《Welcome Diams Island》(2008)と《Ups and Downs》(2008)を壁面上映。創作したアニメキャラクターが物語を繰り広げる作品を、マンガミュージアムのコンセプトに併せてセレクト。

(3)ピエール=ジャン・ジルー(京都芸術センター内 和室「明倫」)
日時:10月3日(土)〜9日(金)10:00〜20:00
※10月3日(土)は、ニュイ・ブランシュKYOTO2015のため22:00まで延長開廊

ジルーが2010年から日本に滞在し、近代以降の日本の都市の変容をテーマに制作しているシリーズ「Invisible Cities」。展覧会のメイン出品作《Metabolism》は、このシリーズのパート1にあたるのだが、ここではパート2で未発表の新作《Japan Principle》(2015)を上映する。「オープニングで東京のビルの窓を、障子に見立てているシーンがあるのですが、それに合わせて和室で展示することにしました」(古川さん)。ちなみにパート3は既に完成され発表済みの《Shrinking Cities》(2015)、パート4は、京都、大阪、琵琶湖を舞台とした作品を蹴上の施設「ヴィラ九条山」で現在滞在制作中。

【概要】
NEW INCUBATION 7
パラレルワールド または私は如何にして世界を愛するようになったか
会期:2015年9月9日 (水)〜10月18日 (日)  10:00~20:00
※10月3日(土)は、ニュイ・ブランシュKYOTO2015のため22:00まで延長開廊
会場:京都芸術センター ギャラリー北・南
公式サイト:http://www.kac.or.jp

Ai Kiyabu

Ai Kiyabu . 1989年岐阜生まれのエディター・ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒業。大学生の頃にファッション誌『GINZA』の編集アシスタント、フリーペーパー『Tokyo Art Map』の編集インターンを経験。卒業後、雑誌『美術手帖』の編集部にて、現代美術から写真、陶芸まで様々なジャンルの記事を担当。2014年冬より憧れの地・京都に拠点を移し、独立。歴史ある文化の面白さを新しい視点で発見したい。 ≫ 他の記事

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