兵庫県立美術館では、平成22年度より学芸員が注目する作家の個展「チャンネル」を開催しています。
6年目を迎える今回は、国谷隆志(くにたに・たかし、1974年生まれ)の個展”国谷隆志 Deep Projection”を「チャンネル6」として、只今開催中です。
国谷氏は、鏡や紙幣、砂時計、羽毛などをモチーフにして、ものの固有性を詩的に増幅させるような作品のほか、ネオン管を用いた「Spaceless Spaces」のシリーズなどを発表しています。
今回の展示では、国谷氏が2001年から発表し続けるネオン管を用いた作品シリーズの新作2点を、同美術館内の2つの空間にそれぞれ展示しています。
国谷氏が手作業で制作した棒状のネオン管の集まりが三角柱となり、四角い部屋の中空に吊られています。垂直に吊られた棒状のネオン管は、それぞれカタチや大きさの異なる透明の球体が数珠つなぎに合わさったものです。
また、ネオン管を発光させるための変圧器やコードもそのまま展示され、構造をあらわにしたネオン管が、サインとしてでも照明としてでもないまま、ゆらぎながら発光し空間を浮遊する独特なオブジェとしてフロアに存在する作品となっています。国谷氏は「熱したガラスに息を吹き込む感じの、空間を自分が生み出す感じ」に興味を惹かれると言います。フロアの上の階からも観ることのできるこの作品は、鑑賞者の視点、角度や距離によって、万華鏡のようにその見え方を変化させます。
3階まで吹き抜けのフロアに屹立する同館所蔵のアルベルト・ジャコメッティ作品に対峙する格好で、国谷氏が制作した蛍光灯のネオン管を配置し、独自の空間を生む作品となっています。ネオン管を置いたガラステーブルを下から覗きこんだり、上の階から見下ろしたりと、こちらの作品も鑑賞者は広い空間のなかで、独自の視点を探りながら作品と対話することができます。
いずれの作品も、鑑賞者の立ち位置によって大きく印象が変わるもののあり方を提示すると同時に、「空間を占めているようで占めていない曖昧なもの、どこにでも偏在しうる感じ」を創出させています。
国谷氏は今回の作品展示に寄せて「人が占めている位置、身体、空間、時間、物の配置による人の視点や移動。これらは身体を起点とした観客自身の位置であり、場の感覚によって示されるものは、自らの存在を示すことに繋がる。作品の意味は観客の体験によって成立し、観客の参加そのものによって完成する」との言葉を寄せています。
気鋭の作家による、発光するネオン管の造形と配置は、鑑賞者であるあなた自身にとってどんな意味を織りなすのでしょうか?”Deep projection(深い突起)”と名付けられた今回の作品展示を、是非体験しに足を運んでみてください。
展覧会概要
タイトル:「国谷隆志 Deep Projection」
アーティスト:国谷隆志
スケジュール:2015年10月29日 10:00 ~ 2015年11月29日 18:00
場所: 兵庫県立美術館内 特設フロア、アトリエ2他にて期間内展示 観覧無料
詳細:http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/channel6_kunitani/index.html