東山アーティスツ・プレイスメント・サービス「ALLNIGHT HAPS」

クリエイティブにおける自由と民主主義と「DEMO展」

poster for Demo

「DEMO」展

京都市東山区エリアにある
HAPSにて
このイベントは終了しました。 - (2015-11-26 - 2016-02-29)

In フォトレポート by Reiji Isoi 2016-01-11

京都市東山区にある東山アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)では、若手アーティスト・若手キュレーターの養成を目的とした試みとして「ALLNIGHT HAPS」を通年で開催しています。道路からウィンドー越しに作品を鑑賞するユニークな展示手法の「ALLNIGHT HAPS」の2015年第二期企画である「DEMO展」が只今開催のなか、本展の企画を行う山崎伸吾さんにお話を聞かせていただきました。

ー 只今開催中の「DEMO展」について、見どころをお聞かせください。

「ALLNIGHT HAPS」でアーティストを選ぶときにイメージしたのは、音楽的な人たち、音響的な雰囲気を持つアーティストです。あまり美術だけにとらわれていない、ライブハウスでもパフォーマンスができ、美術館でも展示できるような人たちを今回セレクトしました。美術の領域だけで作品を発表している人たちや、音楽のジャンルだけで活動している人たち、それぞれで面白い人たちは当然いますが、もう少し混ざり合いというか、横断的な表現活動がおこると面白いんじゃないかと、普段から考えていました。今回のDEMO展に出ているアーティストたちは全員ライブ・パフォーマンスができる人たちです。

ー 国内のアートシーンでは、かつてはアーティストや表現活動をする人たちに対して、専門家になるなと発言した岡本太郎が異端視されるような、いわば二足のわらじを良しとしないという雰囲気が支配的であったように思います。一方、最近の、とくに1980年代生まれ以降のアーティストは、表現の手法を一つに限定していない人たちが増えているような気がします。これは世代的なものなのでしょうか、あるいは、風潮が変わっているのでしょうか?

そうかもしれないですね。もともと僕自身、美術ばたけの出身ではないのですが、ジャンルを超えた交流や、美術表現をやっている人たちの尖り具合を面白いと感じていました。たとえば、参加作家の1人である小松千倫はMadegg名義の音楽活動もすごいですよ。また、松見拓也はcontact Gonzoのメンバーとしての活動も盛んですが、写真家としての表現もとてもかっこいいです。2人とも新しい時代のアーティストかなと。

ー 世の中の変化とともにギャラリーの機能も変化していくものだと思いますが、その辺についてはどう考えていますか?

もともとオルタナティブな立場をとるのが好きなので、そういうところを意識してはいます。アーティストと呼ばれる立場の人がもっとも自由であってほしいと思っています。そのためにはどうすれば良いかと考えています。いろいろな物事が徐々に自由が制限されていくような世の中において、アーティストは大丈夫か?と考えることがあるんです。アーティストが自由に活動する場所を提供することが、僕なりの民主主義のひとつだと思っています。こういうと、すごく表面的なことだけ言っている気もしますが。

ー もう少し深く説明してもらえますか

例えば、最近でいうと、安保法案やマイナンバー制度といったことにより、従来よりも自由が制限されるようになるかもしれないじゃないですか。それが実際に本当かどうかはさておき、そういうことを個人が問いかけてみることすらなく、大多数の人々がそれを当たり前のように受け入れていったり。そうした世間の風潮に対して、アーティストはもっとも早く気づきを与える存在だと思っています。社会の変化、歪みに警鐘を鳴らす役割であるアーティストがそういうことに対して検証するような実験であったり、表現を行う場所を担保することが僕のできることかも、という思いがあります。かといって、ソーシャルな表現をしてる人たちを選ぶというわけではなく、そこには一切とらわれることなく、僕の方からもアーティストにそういうテーマを要求することもなく、いざキュレーションしたあとは、「どうぞ、好きに、自由にやってください」というスタンスでやっています。

ー 最近では安法案絡みで大規模なデモが報道されたりもしていて、デモという言葉はタイムリーなキーワードでもありますよね?

僕個人は、民衆が集まるデモには違和感があるというか、街に人々が集まる形での民衆デモがあまり好きではないんです。それは、単純に性分に合わないだけかもしれない。展示にDEMOという名前をつけたので、実際に国会前にも行ってみました。人々の熱気や盛り上がりなど、いい感じだったんですが、あの現場でしかないなという感じがして。僕個人にとって逆にリアリティを感じることが出来ませんでした。普通の祭りをやっている方が、屋台が並んでて、お酒飲んで、踊ってたり、自分はそっちの方が性に合うなと思ったり。

ー 山崎さんなりのデモが、今回の「DEMO展」ということですね。

Y:はい、そうですね。とはいえ、あんまりデモにとらわれて欲しくなかったりもします。美術館にインストールされた作品がカッコ良いのは当たり前だと思うんです。当然それはしっかり鑑賞され得るものとして成立していることは前提で、そこに至るまでの破片が、個人的には相当面白いなと思っています。デモに含まれるいくつかの意味の中でも、むしろデモテープ的なものというところに強い想いがあります。音楽のサンプリングも、破片、断片を集めて作るものじゃないですか。そういうものにかっこいいなと感じることをこれまでの多く経験しました。音楽の現場にいたことが、個人的な体験として、デモテープをもらって聴いて、それがめちゃくちゃカッコ良いと感じることがいっぱいあったんです。「個人的な体験」というのがとても重要だと思っていて、そこから共感が派生すると思っています。例えば、クラブでDJの出す爆音を浴びながら踊る行為ってすごく個人的な体験だと思うんです。フロアに集まっている人々のそれぞれ個人的な体験が、それがひとつの空間のなかで伝播して、共感が生まれ、新たな価値が生じているような場だと思います。今回のDEMO展がそういうことに成功しているかどうかは別として、個人的にはそういう感覚を大切にしたいと思っています。

ー 大変興味深いお話を、どうもありがとうございました!

HAPSでは、今回の「DEMO展」のような企画展示のほか、京都市で活動するアーティストの支援事業を行っています。制作や居住スペースの相談を受け紹介を行うことや、作品制作、展示・発表に向けた問題解決のサポートなど、日々の相談業務を軸に、その他元小学校を活用した制作スタジオの運営などを行っています。京都は、もともとアーティスト、創作活動をする場を求めるひとたちが多い街ですが、HAPSのイベントを通じて、アートに興味を持つ人たちや、アーティスト同士をつなぎ、交流の場となっています。ALLNIGHT HAPSは夜間に観ることができる展示なので、京都でのお出かけの際に足を延ばして、HAPSそして「DEMO展」を訪れてみてはいかがでしょうか?

【企画者:山崎伸吾】
1978年倉敷市水島生まれ。音楽家/ディレクター。
京都を拠点に、音楽・美術・工芸・デザインなどを行う人たちと共同し企画を行う。京都精華大学卒業後から環境や社会・アート・ライフスタイルをテーマにしたトークイベント、先鋭的なアーティストを集め開催したフェス型音楽イベント、ショップ/ギャラリーが併設されたスペースの運営など、数多くのプロジェクトを行う。現在は、地域に根ざしたものづくりに強い関心を持ち、主に伝統産業の分野で作り手に寄り添ったプロジェクトを行う。伝統工芸を中心とした若手工芸家のための育成プログラム「京都職人工房」、京都のデザインカルチャーWEBマガジン「Refsign Magazine Kyoto」、21世紀の公民館をコンセプトにしたスペース「Social Kitchen」のディレクターを担当。その他、音楽家として双子の未亡人、モノクロームサーカス、高嶺格などのダンス/パフォーマンス作品に参加。バンドGTSVLではドラムを担当している。

取材協力:藏原 藍子(HAPS)
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【開催概要】
東山アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)
ALLNIGHT HAPS企画「DEMO展」

会期    2015年11月7日(土)~2016年2月29日(月) 会期中無休
企画    山崎伸吾
出展作家  荒木優光/金氏徹平/小松千倫/松見拓也/梅田哲也(会期順)
展示時間  19:00〜10:00(翌日朝)
会場    HAPSオフィス1F(京都市東山区大和大路五条上る山崎町339)
主催    東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)
支援    平成 27 年度文化庁文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業
助成    公益財団法人 朝日新聞文化財団詳細
ホームページ  http://haps-kyoto.com/allnight2015/

Reiji Isoi

Reiji Isoi . 1978年生まれ。00年代前半より音楽業界を中心に写真の撮影活動を始め、音楽・美術・文芸誌に写真・インタビュー記事等を寄稿するほか、映像撮影・制作の仕事に携わる。仲間と突発的に結成した『宇宙メガネ』からも不定期に発信することがある。各地で起こる皆既日食、米国のバーニングマン、インドのクンブメーラ祭、古代遺跡でのイベントなど、津々浦々で出会う作品や表現者たちとの交流を通じ、森羅万象の片影を捉えようとカメラを携え日々撮り続けている。 http://razyisoi.jp/ ≫ 他の記事

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