『日本を愛したロック・スター』長谷部宏写真展

ザ・ビートルズをはじめて撮影した日本人、ロックの生き証人による写真の歴史

poster for Koh Hasebe “Rock Stars will Always Love Japan”

長谷部宏 「ROCK STARS WILL ALWAYS LOVE JAPAN - 日本を愛したロックスター - 」

京都市上京区エリアにある
FOIL GALLERYにて
このイベントは終了しました。 - (2016-01-15 - 2016-02-14)

In フォトレポート by Reiji Isoi 2016-01-21

約半世紀に渡り名だたるロックスターたち撮り続けた写真家長谷部宏氏の作品展示が、京都FOIL GALLERYにて只今開催中です。日本人として初めてザ・ビートルズを撮影した写真家でもあり、ロックの黄金時代と呼ばれる1960年代から、ロック・ミュージックとムーブメントが世界的に拡がる時期にその源泉を直接体験し、ロックスターたちを長らく撮影し続けた大御所カメラマンの写真群は、生き証人が伝えるロックの歴史ともいえるものです。


「僕は運が良かった、映画が良かった時代に映画スターたちを撮り、洋楽が良かった頃にミュージシャンたちを撮ることができた」

1930年生まれの長谷部氏は、近代映画社でカメラマンとしてのキャリアをスタートさせた後、1964年パリに滞在中に、故・草野昌一(シンコーミュージック・エンタテイメント)と偶然再会したことで、同社『MUSIC LIFE』誌の取材でザ・ビートルズの撮影を依頼され、1965年、アビー・ロード・スタジオで、日本人として初めてザ・ビートルズを撮影した後、90年代後半まで数多くの名だたるミュージシャン、ロック・ポップミュージックのスターたちを撮影しました。

今から50年前の来日時のザ・ビートルズや、1972年ジャマイカでのレコーディング中のローリング・ストーンズ、先日急逝したデヴィッド・ボウイ、広島の平和公園でのレッド・ツェッペリン、初来日時のクイーン、破天荒な撮影のヴァン・ヘイレン、ホテルでくつろぐニール・ヤング、90年代に「ロックは退屈だ」と発言したトム・ヨークが渋谷の雑踏に佇む様子。洋楽のスターたちが「MUSIC LIFE」誌上で、来日時や海外取材時に日本の文化と遭遇した貴重な瞬間を捉えたものなど、膨大な写真の中からセレクトされた、ロック史を紐解くうえで貴重な写真200点あまりが公開されています。

約半世紀にも渡り、ロック・ポップミュージックのスターたちを撮影し続けた長谷部氏に撮影の極意を訊いてみると、「自分の表現であるとか芸術写真を撮るという感覚はなく、そこにあるものをなるべくそのまま撮るということを心がけている。スター性のある人たちもいるし、全くそういうのがない人もいる。スター性がなきゃないでそのまま撮ればいい。向こうで勝手にイメージを用意してきてるから、それをそのまま撮るだけ」と答えられました。

表現手段としての写真ではなく、あくまで仕事として、日本独自のものを撮るようとの編集部の方針とミュージシャンをもっとよく識りたいという読者の要望に応じる職業写真家としての意識を持ち、長らく活動されていたようです。とはいえ、あるスタイルに沿って、有名ミュージシャンという特定の被写体を長期間撮り続けることは稀有な行為であり、それぞれの現場、フォトセッション毎に生まれるエピソードの積み重ねはストーリーとなり、さらに時間の厚みを伴うことで膨大な量となった写真アーカイブはヒストリーを構成し、その行為者は作家性を帯びてきます。

『MUSIC LIFE』誌初代編集長・元会長の故草野昌一氏の「普通の写真は通信社に行けばいくらでも手に入る。『MUSIC LIFE』では、日本オリジナルでないといけない」と言う方針のもと、欧米から来日するミュージシャンたちを日本の神社仏閣など歴史的、文化的な場所へ案内し、映画業界で培った職人的技術を持つ長谷部氏が撮影した写真は、数あるロックスターのポートレート写真とは一線を画すオリジナルな作品といえるものでしょう。

ロックミュージックが世界中に広がり始める時期に、いち早くその現場を直接体験し撮影した長谷部氏に、当時のロックをどのように感じておられたのか訊くと、「なんとも表現しがたい、とにかく当時の日本にはなかったパワー、エネルギーの爆発のようなものだった」と答えられました。日本では、1964年の東京オリンピックを機にそれまで高級品だった白黒テレビが一般家庭に普及し、海外渡航が自由化され、エレキギター不買運動などが起こっていた頃のことです。

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ロックの黄金時代を撮影した日本人、ロックの生き証人長谷部宏氏の半世紀にも渡る撮影の歴史を、ぜひこの機会にご覧ください。

*展示されている一部写真は会場内で購入できます。また、今回の写真展と同内容、同タイトルの写真集も新刊として発売されています。

【長谷部 宏 ( はせべ・こう) 】
1930 年東京生まれ。1951 年、東京写真専門学校(現東京工芸大学)卒業。近代映画社でカメラマンとしてのキャリアをスタートさせ、64 年秋には『スクリーン』誌の特派員として渡仏。滞在中に、故・草野昌一(シンコーミュージック・エンタテイメント)と偶然再会したことで、同社『MUSIC LIFE』誌の取材でビートルズの撮影を依頼され、65 年、アビー・ロード・スタジオで、日本人として初めてザ・ビートルズを撮影。帰国後は『MUSIC LIFE』専属カメラマンとして、ザ・ビートルズの来日時はもちろんのこと、90 年代終わりまで主に洋楽アーティストを撮り続けた。写真集に、『小さな世界の大きな巨人たち』(1975 年)、『ロック・ショット』(1984 年)、 『ロック50 の肖像』(1995 年)、単行本『ロックンロール・フォトグラフィティ 長谷部宏の仕事(著)』(2013 年)がある。年)。そして、2016年に最新の写真集『ROCK STARS WILL ALWAYS LOVE JAPAN 〜日本を愛したロック・スター〜』を発表した。

取材協力:㈱シンコーミュージック・エンタテイメント/Hiro Abe
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【開催概要】

会期:2016 年1 月15 日(金)- 2016 年2 月14 日(日) 月 – 土 12:00 – 19:00 / 日・祝 12:00 – 18:00 水曜休廊
会場:FOIL GALLARY(602-8453 京都府京都市上京区笹屋町1-519 マーブルビルディング3・4F )
入場料:300円(中学生以下無料)
企画制作:シンコーミュージック・エンタテイメント、FOIL GALLERY
詳細HP:http://www.shinko-music.co.jp/feature/kohhasebeinkyoto/
ギャラリーHP:http://www.foiltokyo.com/gallery/exhibitions/hasebe/photoexhibition.html
[関連イベント]
いしいしんじ×安田謙一 1月30日(土)16:00 – 18:00 / 1,000 円

Reiji Isoi

Reiji Isoi . 1978年生まれ。00年代前半より音楽業界を中心に写真の撮影活動を始め、音楽・美術・文芸誌に写真・インタビュー記事等を寄稿するほか、映像撮影・制作の仕事に携わる。仲間と突発的に結成した『宇宙メガネ』からも不定期に発信することがある。各地で起こる皆既日食、米国のバーニングマン、インドのクンブメーラ祭、古代遺跡でのイベントなど、津々浦々で出会う作品や表現者たちとの交流を通じ、森羅万象の片影を捉えようとカメラを携え日々撮り続けている。 http://razyisoi.jp/ ≫ 他の記事

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