The long story of the contacts of “the other side” ベクソン・アーツ・京都

北アイルランドでの邂逅から京都での展示へ。イシャイ・ガルバシュとユミソンの交流にまつわる長い話。

poster for The Long Story of the Contacts of “The Other Side”

The long story of the contacts of “the other side”

京都府(その他)エリアにある
ベクソン・アーツ・京都にて
このイベントは終了しました。 - (2016-01-15 - 2016-02-28)

In フォトレポート by Reiji Isoi 2016-02-20

2016年1月に京都市東山区に新たにオープンしたベクソン・アーツ・京都では、ギャラリーの初回展示となる写真家イシャイ・ガルバシュ氏「The long story of the contacts of “the other side”」が、只今開催中です。自身も作家であり、当ギャラリーの運営と本展示の企画を行うユミソン氏にお話を聞かせていただきました。

ー イシャイさんとの出会い、今回1月にオープンした新しいギャラリーでのオープニングの展示へと到る経緯について、聞かせて下さい。

2013年にイシャイがトーキョーワンダーサイトのレジデンスアーティストとして来日していた時にアーティスト同士として知り合いました。彼女と私とは作品に共通するところがあったので、その後もメールのやりとりをしていましたが、展覧会をしようという話にはならず、2015年に北アイルランドで偶然に会う機会があって、その後から何か一緒にできないかということで、具体的に展示の話が進んでいきました。とはいえ、ベクソンは運営母体が私個人なので予算が少なく、当初はイシャイの作品だけを送ってもらおうと考えていました。一方イシャイは日本に来たがっていて、ベルリン文化庁へ作品輸送費と渡航費、イスラエル大使館へ講演会費を申請したところ、運良く両方から支援を得られたので、作品展示だけでなくレジデンスアーティストとして2ヶ月滞在することになりました。

ー 自身も作家活動を行うユミソンさんから見て、イシャイさんの作品のどういうところに共感、刺激を受けますか?

私は素材を限定しない制作で、イシャイは写真での表現を行っています。彼女は大判カメラでフィルム撮影をしています。デジタルカメラとの違いの一つに、持ち運びのしづらさと限られた撮影枚数があります。どんな道具を使うかは、作品の表現に影響します。撮影時の天候や明るさが十分でなければ、何時間も光を待たなければいけなかったり、逆に一つの場所に十分に時間を使えない状況もあります。特に壁シリーズは軍の施設に近いのもあって、滞在が難しい場所での撮影です。それなのに機動性の低い道具で撮影をするには、その場所の特性や環境を注意深くみていかなければいけません。道具の制約により場所と対話するように、撮影場所の何を写すべきかを決定していきます。そのようにして場所の特性を引きだしていく彼女の制作方法に、刺激を受けながらみていました。

ー ユミソンさんは、これまでにも、世界各地で作品展示・企画・キュレーションを行っていますが、今回京都にギャラリーをオープンさせるに到る経緯、京都とユミソンさんの関わり、京都という場所について思うところなどを、聞かせてください。

急に個人的な話で恐縮なのですが、京都の亀岡市出身の人と結婚をしました。普段は二人と猫で東京に住んでいますが、彼が定期的に「関西弁の中で生活したい!」というので、なんとなしにスマホから住宅情報をみていたら、今の物件が格安で掲載されていたので思わずポチって、その後、彼に「これ買おう」とLINEしました(笑)。京町屋や古民家は、古いということで資産価値が無いことになっているんですよね。町家は文化として認識されているのに、価値が無いなんておかなし話。とにかく勢いで古い町家を手に入れてしまったものの、仕事の関係で東京からしばらくは離れられないという。そんな状況で、今まで知らなかった京都の戦後の歴史を少しずつ調べていくうちに、この場所が在日や障がい者が多い地域ということも知り、ここを芸術の場として使ってみたいと思うようになりました。

ー ベクソンギャラリーHP内で、『ジェンダーや制度への問いかけもこのギャラリーを通して行いたい』との記述がありますが、より具体的な内容、ベクソンギャラリーの今後の活動予定や方針などについて、語ってください。

今年のゴールデンウィークに、KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭のサテライト展示としてこの施設を使います。滞在中のイシャイと私とで作った新作を展示予定です。イシャイの両親はホロコースト体験者で、私の両親もジェノサイドの生き残りです。私たちは過去にその境遇について作品をそれぞれ発表したことがありますが、アウトプットは真逆でした。「私のこと」として扱うイシャイと「誰にも起こり得ること」として固有名をなくしていく私。その二人がもう一度、過去作も紹介しながら、世界で起こりうるべきことを作品にしていく試みをします。また、この施設は政治的な事象だけではなく、まだ問われていない表現というものを探していこうと考えています。

ー アーティスト(作家)ユミソンさんにとってのベクソンギャラリーの位置づけ、自身とベクソンギャラリーの関係性について、聞かせてください。

父がソンさん、母がベクさんなので、二人を子どもの私はベクソン。ということでベクソンという名前をつけました 。先ほど「ジェンダーや制度への問いかけも」とありましたが、それは、大それたことではなく、お母さんも大切にしたいというレベルからの女性のあり方や、彼女たちの置かれている状況を考えます。もちろん、父親にも同じ想いがあります。そして、ベクソンはギャラリーでは無く、ベクソンアーツです。芸術活動をおこなう場所なので、展示だけに限らず、レジデンスやワークショップの時もあるし、非公開のプロジェクトもあります。京都にあるこの場所の物語を読み解くこともしていきたいと考えています。

ー タイトルに込められたロングストーリー、アザーサイド、コンタクトというキーワードについて、ユミソンさんが思うところ、また今回のイシャイさんの作品展示を通じて意識されたことなどを、聞かせてください。

このタイトルはイシャイとチャット会議をしている時に、私が何をしたいのかということを伝えるために使った言葉で、イシャイが気に入ってタイトルにしようと提案をしました。何かを見ようとする「何か」や、違う場所に行こうとする「違う場所」も、もちろん重要ですが、こことそこを隔てている境界線は、空想ではありません。私たちは気づいていませんが、境界や壁は質量を持っています。質量をもって身体的に体験できるのに、実際の私たちは、感覚としてしか意識できていません。今回のイシャイの作品群で、向こう側へいくための身体的な道のりを垣間見れたらよいなと思います。

ー ベクソンギャラリーでのアーティスト・イン・レジデンスに興味を持った方へのコメントをお願いします。

ここは期間や予算が決まっていて締め切りに追われて応募するような施設ではなく、アーティストや作品や作品のプランがあって、何かできそうな時にそれに合わせてプロジェクトが立ち上がる仕組みになっています。なので成果発表を求めることも、締め切りを設けることもしていません。もちろん定型の申請書もありません。施設といってもただの古い民家。スタジオも設備も不十分です。スタッフも現状、私だけです。残念ながら予算も少ないのです。だからこそ具体的にお話ができる人と一緒に作っていこうと思っています。スタッフとして関わってみたい人も問い合わせしてもらえると嬉しいです。

ー 大変興味深いお話を、どうもありがとうございました!今後の活動も期待しています。


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【開催概要】
The long story of the contacts of “the other side”
ベクソン・アーツ・京都

会期    2015年01月15日(土)~2016年2月28日(月) 会期中無休
企画    ユミソン
出展作家  イシャイ・ガルバシュ
展示時間  12:00から19:00まで 火曜・水曜・木曜・祝祭日休館 不定期休廊
会場    ベクソン・アーツ・京都(〒601-8026 京都府京都市南区東九条中札辻町27-3)
ホームページ  http://baexong.net/

関連イベント ワークショップ
日時: 2月27日(土)14:00-16:00
会場: ベクソン・アーツ・京都
講師: イシャイ・ガルバシュ
※詳細は公式ホームページをご確認下さい。

Reiji Isoi

Reiji Isoi . 1978年生まれ。00年代前半より音楽業界を中心に写真の撮影活動を始め、音楽・美術・文芸誌に写真・インタビュー記事等を寄稿するほか、映像撮影・制作の仕事に携わる。仲間と突発的に結成した『宇宙メガネ』からも不定期に発信することがある。各地で起こる皆既日食、米国のバーニングマン、インドのクンブメーラ祭、古代遺跡でのイベントなど、津々浦々で出会う作品や表現者たちとの交流を通じ、森羅万象の片影を捉えようとカメラを携え日々撮り続けている。 http://razyisoi.jp/ ≫ 他の記事

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