8/11より開催される「あいちトリエンナーレ2016」の国立国際美術館(大阪)での記者発表に行ってきました。
3年に一度、今年で3回目となるあいちトリエンナーレ2016。今回は南米での滞在経験を経て、フランスを活動拠点の一つとする港千尋(みなと ちひろ)芸術監督に加え、キュレーターにブラジル拠点のダニエラ・カストロとトルコ拠点のゼイネップ・オズを招聘。それによって、参加するアーティストの出身国・地域が拡大し、海外のアーティストの比率も増加、100組以上のアーティストが集結します。
「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」というテーマのもと、先端をいく現代アートによる祝祭感あふれるフェスティバル。現代美術、映像プログラム、パフォーミングアーツ、プロデュースオペラと幅広いジャンルのアートに触れることができます。
ポスターイメージには参加作家であるジェリー・グレッツィンガーの作品「Jerry’s Map」を起用。
また今回のテーマの「キャラヴァンサライ」とはペルシア語で、隊商宿を意味しています。広い中庭には厩や倉庫や取引所があり、二階に宿泊所を設けた立派な施設で、キャラヴァンが旅の疲れを癒す休息の場所でもあるそうです。
会場には、土地固有の神話や物語あるいは詩文から着想を得て、山の稜線や樹林、鳥などをシンプルな形象で色鮮やかに描き出すドローイングや油画で知られる佐々木愛(大阪府)。
日常に潜むささやかな事柄に着目し、その場所特有の歴史や現象を採集し、音や光、立体を用いてインスタレーションを組み立てる久門剛史(京都府)など、関西で活躍する若手の参加作家が登壇。
愛知という土地や個性を持った会場(空間)が影響するであろう作品群に期待が膨らみます。
あいちトリエンナーレ2016 港千尋 芸術監督は、開催にあたって、次のようなメッセージを述べられています。
「数万年に及ぶ長い人類の歴史において、写真や映像はごく最近に出現したメディアだ。だがこうしたメディアは200年にも満たない時間の中で、ここまで進化し、わたしたちの生活全般の中に深く浸透している。さらに、こうしたメディアが情報通信技術と結びつくことによって、地球はひとつの『映像惑星』になってしまった。現代人は、その気になれば石器から衛星までを含むこの壮大な技術全体を手にしているわけで、考えてみればこれほどエキサイティングなことはないだろう。作り手と受け手の距離がどんどん小さくなる時代の創造性はどこにあるのだろうか。
だが、こうした壮大な技術を背景にした都市文明が大きなリスクをはらんでいることも事実で、第2回で芸術監督の五十嵐太郎氏は震災後の状況を正面から受け止め、芸術祭のテーマとしたことに個人的にもたいへん感銘を受けている。
都市文明に対する視点をしっかり持っていることは、この芸術祭の思想的な価値であると思う。いまだ大きな試練の中にある日本だが、愛知という、ものづくりにおいてとても長い歴史をもつ土地の経験は、多くの教えを含んでいるだろう。
芸術祭は多くの人がかかわる、ひとつの旅だ。土地、歴史、生活に学びつつ、誰もが参加してよかったと思えるような、創造的な旅をみなさんとつくっていきたい」
ー以下 出展作家 参照ー
―余談になりますが、日本での国際展のルーツとは…
1970年に東京都美術館を会場に開かれた東京ビエンナーレ「人間と物質」が、その始まりです。正式には、第10回日本国際美術展ですが、隔年で国際的な美術動向を紹介する展覧会として、開かれてきました。実は、この国際展は美術評論家の中原佑介をコミッショナーにそれまでの国別を廃し、「人間と物質」というテーマを掲げ、国内外の最も先鋭な美術家たち40名を紹介、そのうち17名の海外作家が来日、12名の国内作家も会場にかけつけ展示を行うという、日本では初めての画期的かつ先鋭的な、今や伝説となった国際展でした。
この東京ビエンナーレはその後、京都、愛知、福岡にも巡回。国際芸術祭の出発点はすでに40年前にあったそうです。
【あいちトリエンナーレ2016 -虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅-】 8/11より開催
http://aichitriennale.jp/
現代美術、映像プログラム、パフォーミングアーツ、プロデュースオペラと幅広く現代アートを楽しめるフェスティバル。今年の夏に向けて、ぜひ事前にオフィシャルサイトをチェックしてみられては?
Mari Endo