文字の博覧会 A Treasury of Written Characters

-旅して集めた“みんぱく”中西コレクション-展

poster for A Treasury of Written Characters

「文字の博覧会 - 旅して集めた“みんぱく”中西コレクション - 」展

大阪市北区エリアにある
LIXILギャラリー大阪にて
このイベントは終了しました。 - (2016-03-04 - 2016-05-17)

In フォトレポート by Reiji Isoi 2016-04-18

人類が生み出した最大の発明のひとつである文字の起源に迫る展示「文字の博覧会」が、LIXILギャラリー大阪会場で只今(〜5/17迄)開催中です。今回の展示では、中西印刷6代目社長であった中西亮氏が、文字に魅せられて世界100カ国以上を旅しながら収集した3000点もの文字資料のなかから、手写本、新聞をはじめとするコレクションの一部が展示されています。

印刷業を営む家に生まれた中西氏は、早くから世界中の文字について関心を持ち、人生を通して文字に対する飽くなき好奇心を持ち続けました。13世紀に滅びた西夏文字の解読者として知られる西田龍雄氏と、京都大学で同時期に在籍したことから文字を通した交流を深め、学術印刷、言語の参考書などの印刷を引き受けるほか、西夏文字の活字を作り西田氏の研究を助けるなど、文字研究にも貢献しています。
1985年に中西印刷の社長に就任した後、活版印刷の近代化に尽力する他、経営者の立場からの文字研究を続け、世界各地を訪問し、世界で使用されているほぼ全ての文字40種を網羅する95種もの文字が含まれる膨大な文字資料を収集しました。中西氏の没後、それらの文字資料は国立民族学博物館に寄贈され、現在中西コレクションデータベースとして、その全容が公開されています。

本展では、中西コレクションを中心とした世界の文字資料約80点を、中東・欧州文字文化圏、インド・東南アジア文字文化圏、漢字文化圏(東アジア)などのコーナーに分けて紹介しています。人類が使用してきた文字は約200種類以上とされており、数千種類あるとされる言語と比べると、その数はそれほど多くありません。その中には、世界でもっとも多く用いられるラテン文字もあれば、少数民族の間でのみ使用される文字、すでに使われなくなった文字も含まれます。また、現在ある文字は、エジプト文字、くさび形文字、漢字の3つを起源として発達してきました。地域や民族の文化の結晶ともいえる文字は、そのひとつひとつが固有の物語を持っています。例えば、古くは旧約聖書の言葉として記されたヘブライ文字は、古いものでは紀元前1世紀の手写本が残され2400年以上の歴史を持ちながらも、国とともに一旦は滅び、1948年にイスラエル共和国の成立時に公用語として復活しています。他にも、文字を持たない遊牧民族の長チンギス・ハーンがウイグル文字を改良して作らせたモンゴル文字は、口語との乖離が激しく、現在のモンゴルでは、ロシアの影響もありキリル文字が普及し次第に使われなくなり、2013年にユネスコの「緊急に保護する必要のある無形文化遺産」として登録もされ、絶滅危惧種のような状態になっています。

中西氏は、古今東西のあらゆる文字の資料を収集するのを自らの趣味と称し、とくに、活字印刷でなく珍しい文字で手書きされた手写本を中心に、世界各地を旅しながら集めることを心から楽しんでいたそうです。中西氏が文字をたずねて廻った地域は、当時、長らく外国人が入域不可であった国や辺境、そして現在では情勢が不安定になり渡航できなくなった場所も多く含まれています。およそ25年間をかけて現存すると伝えられるほぼすべての文字を収集した中西コレクションのなかには、1662年頃のアルメニア文字の手写本の完本など世界的にも希少なものまで含まれています。また、新聞が発刊されていればその文字は現在生きているという視点から、世界13地域から1000点以上もの様々な文字で印刷された新聞もコレクションに含まれています。未知なる文字を探し求めた中西氏の旅の記録は、国別・地方別の紀行「世界の文字をたずねて」や、各地の文字を考察した「文字に魅せられて」など、書籍として出版されています。氏の人柄とともに文字に対する一貫した姿勢が偲ばれる筆致で、文字を中心とする世界各地の当時の状況を克明に記されており、中西コレクションの鑑賞を深める副読本としても興味深い内容です

世界各地で文字を収集した中西氏は、文字を記す材料として昔から人類は生活に密接なものを選んできたことを指摘しています。エジプト人はナイル河畔に生えていたパピルスに、古代中国人は竹、亀甲や獣骨に、アラビアの遊牧民は羊の皮に、そして泥の多い地域にいたシュメール人の人々は、半乾きの粘土板に葦の茎を押し付ける形で字を刻みました。中世以降は東西ともに紙に書くことが多くなりましたが、東南アジアやインドでは椰子の葉や樹皮に文字を刻みつけるものが近年にも存在し、そうした標本を中西氏は世界各地を周り集めました。

また、竹筒、椰子の葉、樹皮、布、紙、黒板といった様々な媒体に書かれた手稿紀元前4世紀に書かれたヒエログリフなど、学術的にも貴重なものの他、経典、書簡、会計文書、地図、版木、護符、墓誌の拓本など種類も多様で、さらに、文字を記すためのペンやナイフなどの特殊な道具も、中西コレクションには含まれています。これほど多くの文字資料を集めた個人コレクションは世界にも例がないそうです。

珍しい文字が現存していると知れば、辺境であろうと可能な限り現地に赴き、「他の文字が残らなかったのに、なぜ彼らだけが文字を伝えているのか、どんな使われ方をしているのか、その文字によってどんなことが記されているのか」といった好奇心を満たそうとフィールドワーク的なアプローチで収集したケースもあります。

あるときは、サハラの奥深くに伝えられているベルベル文字を求めラクダにまたがり砂漠を超え、現地でも読める人のほとんどいない文字の記された希少な冊子を、またあるときは、フィリピンのミンドロ島に住む山岳民族の集落を訪ね現地の人々と生活をともにして、希少で珍しい文字の数々を中西氏はひとつずつ手に入れました。

文字に人生を捧げた中西氏の情熱、並外れた好奇心と行動力のたまものである中西コレクションはまさに驚異的です。文字をたずねて、世界中を旅して集めた中西氏の宝物の数々を通じて、世界の文字の魅力に触れることのできる貴重な展示を、是非この機会にご覧ください。

参考文献:『文字に魅せられて』中西亮著/同朋舎出版/1994、『文字の博覧会』西尾哲夫, 臼田捷治, 浅葉克己, 永原康史, 八杉佳穂他, 共著/LIXIL出版/2016

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【開催概要】
『文字の博覧会 -旅して集めた“みんぱく”中西コレクション-展』
A Treasury of Written Characters

会期:2016年3月4日 ~ 2016年5月17日 入場無料/Free 展示時間:10:00から17:00まで
会場:グランフロント大阪南館タワーA11階 LIXILギャラリー大阪

イベントHP: http://www1.lixil.co.jp/gallery/exhibition/detail/d_003419.html
中西コレクションデータベース:http://htq.minpaku.ac.jp/databases/nakanishi

Reiji Isoi

Reiji Isoi . 1978年生まれ。00年代前半より音楽業界を中心に写真の撮影活動を始め、音楽・美術・文芸誌に写真・インタビュー記事等を寄稿するほか、映像撮影・制作の仕事に携わる。仲間と突発的に結成した『宇宙メガネ』からも不定期に発信することがある。各地で起こる皆既日食、米国のバーニングマン、インドのクンブメーラ祭、古代遺跡でのイベントなど、津々浦々で出会う作品や表現者たちとの交流を通じ、森羅万象の片影を捉えようとカメラを携え日々撮り続けている。 http://razyisoi.jp/ ≫ 他の記事

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