稲垣智子インタビュー

外へでよう、他のアーティストとともに、次のドアを開けて

In インタビュー by Chisai Fujita 2016-05-20

大阪を拠点に活動する美術作家の稲垣智子さんは、イギリスの大学を卒業後、国内外の展覧会やアーティス・イン・レジデンスで制作、発表をしています。稲垣さん自身がキュレーションする上映会は、イギリスやドイツのあと、大阪でも行うことになりました。最近の稲垣さんの活動、そして彼女の考え方についてインタビューをしました。


―稲垣智子さんが今度行う上映会「Screening ‘Melting Point’ + TEGAMI Project from Hamburg」について教えてください。

大阪市にあるThe Third Gallery Ayaで、伊東宣明、大崎のぶゆき、小泉明郎、松井智惠、そして私・稲垣智子の映像作品をスクリーニングします。

ドイツに住む美術作家の綿引展子さんが、2011年からされているアートプロジェクト「TEGAMI Project-日本人の視点」で、私がドイツのハンブルグにあるFRIESEで個展をすることになり、展示とは別のイベントとして映像作品の上映会を企画しました。せっかくなので、私が2011年以降に見て印象に残った、他のアーティストの映像作品もあわせて上映したい、とひとつのプログラムにしたのです。

それとは別で、今年4月、イギリスのシェフィールドでも展示とパフォーマンスをする予定があったので、ディレクターに掛け合って、このプログラムの上映会を行いました。上映日数が延長されるほど、好評でした。そしてこの素晴らしい作品をもっと多くの人たちに見てもらいたいと、今回の大阪でのスクリーニングに至りました。

―若い人が海外へ行かないと言われたり、日本国内で十分というアーティストやキュレーターが多い現在、なぜいま、稲垣さんは海外へ行くのですか?

海外で展覧会をすることは、実際難しいことです。しかしアーティストにとって、違う場所で制作したり、作品を見せることは、いろいろな考え方があることを知るきっかけとして大切です。あるいは逆に観客にとっても、同じように大切なのではないでしょうか。

例えばイギリスでのパフォーマンスは、上記の写真のように一対一で行いました。私はパフォーマンスとして、無言で20分間観客と向き合ったのですが、途中で席を立ったり、話し出す人もいました。観客の反応は、文化や習慣で違うはずです。海外に出ていくことも重要であり、いろいろな考え方やものの見方を取り入れるべきだ、と私は考えています。

―どうして稲垣さん「だけ」ではなく、他のアーティストの作品も合わせて展示をするのでしょうか。

これまで私は10年以上、映像インスタレーションをつくって、発表してきました。お金面、発表の場など、さまざまな場でだんだんとアートがあまり良い状況に置かれていなくなった、と感じています。そこで、自分のアート活動だけでなく、他のアート活動の状況も良くしていこうと思い始めました。

2011年から始めた「ARTCA芸術教室」は、アーティストの経済的自立やアーティスト同士の協力も考えたシステムで、一般の人たちが芸術を学ぶ場です。アーティストが講師となって、教えることで人や社会とつながり、お金も得られるという仕組みです。先日の渡欧中は、私の代わりに別のアーティストが講師を務めてくれて、受講生からも反応が良かったです。

また、2013年に京都芸術センターで発表した作品でつかった素材の「温室」は、2014年に亡くなったアーティストの國府理さんがつくってくれました。そのあと「シェア」することで、國府さんの作品の素材としてもつかわれました。また、今年から機材をシェアする「ARTISTS’ GUILD」のメンバーにもなりました。このように、複数のアーティストで同じ素材をシェアすることはエコであり、お互いの作品の見え方や考え方を知るきっかけにもなりました。

―これからの稲垣さんは、どういう活動や制作をしていくのでしょうか。

ドイツでハンブルグ美術館に行ったとき、殴り描きのような黒い線の作品があり、私は「いいなあ」と惹かれる作品がありました。キャプションを見ると、ゲルハルト・リヒターの作品で、リヒターだから良いというのではなく、心に引っ掛かる作品は、コンセプトや見た目だけではない「何か」を持っているのだと改めて教えられました。

私はその「何か」を求めていて、これからも作品を深め、追求していく糧としていきたいです。
そしてThe Third Gallery Ayaでの「Melting Point」展で上映する作品は、私というアーティストの視点で「生」のなまなましさを感じる作品を選びました。この作品最高!とかアーティストの組み合わせは他ではないよね、と自負しているので、ぜひ見に来てください。

【展覧会情報】
「Screening ‘Melting Point’ + TEGAMI Project from Hamburg」
伊東宣明、大崎のぶゆき、小泉明郎、松井智惠、稲垣智子

会場:The Third Gallery Aya(大阪市西区)
会期:2016年5月24日(火)~28日(土)

時間:火曜-金曜 12:00-19:00 土曜 12:00-17:00
クロージングパーティ:2016年5月28日(土)15:30~17:00
http://www.thethirdgalleryaya.com/

Chisai Fujita

Chisai Fujita . 藤田千彩アートライター/アートジャーナリスト。1974年岡山県生まれ。玉川大学文学部芸術学科芸術文化専攻卒業後、某大手通信会社で社内報の編集業務を手掛ける。5年半のOL生活中に、ギャラリーや横浜トリエンナーレでアートボランティアを経験。2002年独立後、フリーランスでアートライター、編集に携わっている。これまで「ぴあ」「週刊SPA!」「美術手帖」など雑誌、「AllAbout」「artscape」などウェブサイトに、展覧会紹介、レビューやインタビューの執筆、書籍編集を行っている。2005年から「PEELER」を運営する(共同編集:野田利也)。鑑賞活動にも力を入れ、定期的にアートに関心の高い一般人と美術館やギャラリーをまわる「アート巡り」を開催している。また現代アートの現状やアートシーンを伝える・鑑賞する授業として、2011年度、2014年度、2015年度愛知県立芸術大学非常勤講師、2012年度京都精華大学非常勤講師、2016年度愛知県立芸術大学非常勤研究員、2014~ 2017年度大阪成蹊大学非常勤講師などを担当している。 写真 (C) Takuya Matsumi ≫ 他の記事

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