「MuDA 鉄」

「犬島パフォーミングアーツプログラム」第一弾

In インタビュー by Reiji Isoi 2016-07-28

瀬戸内海の犬島で、瀬戸内国際芸術祭2016の一環として、夏会期から秋会期にかけて4つのパフォーマンス公演が行われます。「犬島パフォーミングアーツプログラム」の第一弾となる、ハイパーパフォーマンスグループ「MuDA」の新作「MuDA 鉄」が、今月29日から3日間上演されます。

先日、取材で犬島を訪れた際、銅製錬所跡立ち入り禁止区域内に、パフォーマーであるMuDAのメンバーをはじめスタッフたちが一丸となって、本公演のための特設舞台を創っていました。作業の合間に、リーダーのQUICK氏にお話を聞かせていただきました。

ー 今回のパフォーマンスのタイトルである「鉄」というコンセプトについて聞かせて下さい

「鉄というものは宇宙空間の中で最も安定した物質のひとつで、ある種普遍の物質なんです。人間にとっても体内に鉄がないと死んでしまうし、生命の起源や振動とかそういうものとも関係していて。宇宙には普遍の方向、向かう方向があるってことの一端を示していると思うんです。だから僕達人間にもそういう方向があるのじゃないかって。あらゆる物理現象には、受け手次第ではあるけど、意味やメッセージがあると思っています。とはいうものの、大勢の人が信じている科学とか、合理的な考えとか、そういう僕達の社会の基本にあるものを駆使しても宇宙のことの1%程度しかわかっていないし、鉄が安定した物質みたいなことも、実は1%以下の中で人間が知り得たことにすぎないことでもあるとも最近考えています。」

ー MuDA独自の身体衝突術「ぶつかることから始まる」「立ち上がり続ける」ことについて聞かせてください

「MuDAの行為としての衝突は、ぶつかることからあらゆることが始まるということや、負荷を転換することだったり、負荷があるから次に行ける、倒れたら立ち上がるしかないということだったり。実は誰でも知っていることというか、僕らがやろうとしていることは次に進み始め続けるにはどうすれば良いのか、ということを指し示すことだけなんです。接触があるたびに何かが展開されていく、立ち上がり続ける、何かに向かい続ける、ということをパフォーマンスを通じて様々な舞台で体現する試みです。今回の、舞台は金網に囲まれてるので、人が突っ込んできそうになる”際”や衝突を”間近で”観てもらえると思います。」

ー 犬島という場所について感じていることは

「この島の製錬所でかつて多くの人々が働いていたとき、銅を作るために鉄を捨てていました。時代が変わって鉄が必要となり、銅の製錬所は閉じられていったんです。鉄が必要になったのはその当時の戦争の流れなどもあり、銅が要らなくなり鉄が要るということになって、製錬所で働いていた多くの人も島を離れていったという歴史があるんです。新たに必要になったものは、それまで捨てていたものだったことが島の歴史として刻まれています。無駄とされていることは決して無駄ではないかもしれないし、人間はその時々で都合のいいものを信じていたりすることに気付かされます。」

ー これほど大掛かりな舞台装置を演者たち自ら設営スタッフとして肉体労働で創り上げていくという行為もすごいですね

「沢山の人達と何かを表現する集団創作の中には、偏った特殊なカタチではありますが、社会・世界が凝縮されていると思うんです。だからこそ、社会に向けて何かをたったひとりで叫ぶよりも、より強く発することが出来ると思っています。ひとりでできることの規模よりも、3人寄れば文殊の知恵という言葉の通り、3人集まっただけで一番賢い人に並べる、集団の力でスーパースターひとりができることを、簡単に超えていけると思っています。もちろんひとりひとりが何かしらのスーパースターになることに向かって精進するのも当然のこととして。」

「自分と似たような人達や、言うことを聞いてくれる人達を集めて、スムーズに何かをするというコントロールされたものではなく、完全に理解することの出来ない他者との関係性のなかで、自分とはまるで違う個性や訳のわからない面白い人達が集まり、それぞれの特殊能力、得手不得手、全然違う種類のことが出来る人達と一緒に共同作業をするためには、ぶつかり合いながら進むしかなく、簡単に進ませてはくれないのですが、少しずつでも考え続けて、言葉に出来ないようなひとつのコトに向かい、何かを作っていく。そんなぐちゃぐちゃでキラキラでばらばらに揃った世界。そういうものをMuDAとして、パフォーマンスだけでなく、存在としても表現できたらと思っています。」

ー 大変興味深いお話をどうもありがとうございました。本公演及び今後のご活躍を期待しています。

また、今回の公演終了後、チケットを提示すると、犬島から岡山駅までの無料送迎チャーター船・バスをご利用いただけます。通常、犬島発の最終便は夕方頃です。本公演は日帰りで日没後の犬島を観れるレアな機会でもあります。MuDAが全身全霊をかけて犬島の舞台で繰り広げる貴重なパフォーミングアーツを目撃しに、是非この機会に犬島を訪れてみてはいかがでしょうか?

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瀬戸内国際芸術祭2016 ・夏会期
犬島パフォーミングアーツプログラム「MuDA 鉄」
● 日時
2016年7月29日(金) – 31日(日)
開場 18:30 開演 19:00
● 場所
犬島精錬所美術館 敷地内
アクセス >>> http://benesse-artsite.jp/access/
● 料金
一般:前売 3500円/当日4000円
学生:前売 2000円/当日2500円
作品鑑賞パスポート割
*当日受付時に作品鑑賞パスポート提示で一般価格より200 円割引、返金
*チケット料金には、お帰りの際の岡山までの無料送迎(フェリー、バス)が含まれます。
● 予約
MuDA muda.reserve@gmail.com
*その他のチケット取扱い窓口はMuDAweb参照。
[ MuDA 鉄 特設website ]→http://muda-japan.com/iron/
● お問い合わせ
瀬戸内国際芸術祭総合インフォメーションセンター
TEL087-813-2244(受付時間7:00 ~ 20:00)
[ 瀬戸内国際芸術祭2016 ]→http://setouchi-artfest.jp/
[ 犬島パフォーミングアーツプログラム ]→http://benesse-artsite.jp/inujima-pap.html

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Reiji Isoi

Reiji Isoi . 1978年生まれ。00年代前半より音楽業界を中心に写真の撮影活動を始め、音楽・美術・文芸誌に写真・インタビュー記事等を寄稿するほか、映像撮影・制作の仕事に携わる。仲間と突発的に結成した『宇宙メガネ』からも不定期に発信することがある。各地で起こる皆既日食、米国のバーニングマン、インドのクンブメーラ祭、古代遺跡でのイベントなど、津々浦々で出会う作品や表現者たちとの交流を通じ、森羅万象の片影を捉えようとカメラを携え日々撮り続けている。 http://razyisoi.jp/ ≫ 他の記事

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