築山有城インタビュー

鍛錬の30代から40代という山を登り始めるまで

poster for Yuuki Tsukiyama “39/40”

築山有城 「39/40」

大阪市西区エリアにある
TEZUKAYAMA GALLERYにて
このイベントは終了しました。 - (2016-07-01 - 2016-07-30)

In インタビュー by Chisai Fujita 2016-07-19

今年40歳を迎えるアーティスト、築山有城(つきやま・ゆうき)さん。30歳ごろから、地元である神戸で制作を続けています。このインタビューは、7月30日まで個展をしているTEZUKAYAMA GALLERYで行ったものですが、同時期にあった「アート大阪2016」での展示、9月から3か月間、中東のドバイにアーティスト・イン・レジデンスへ、と築山さんの精力的な活動の現在を伺いました。

―いまの現代美術を見ていると、「この作品や素材と言えば、この作家だ」という作品スタイルのアーティストばかりです。しかし築山有城さんの作品は、「これが築山スタイル」というのがないので、正直びっくりしています。

20代のころは、大学で彫刻を学んだ影響もあって、立体作品を制作することにこだわっていました。当時は「壁面に掛けるものは軟弱」とさえ考えていたのですが、年齢を重ねるとそういうことを気にしなくなりました。いまは「できるだけ正直にやろう」と思っています。コンセプトやジャンルに縛られることなく、僕自身が「これ面白い」と思ったことを常にするようにしています。

作品になるかどうか分からないけど、「こんなことをしたら面白い」ということを追求しています。例えば、漆作家の人から教えてもらった「カシュー」という素材。人工漆のようなもので、ホームセンターでも買うことができます。それを僕は予備知識なく、塗ったり垂らしてみたときに「面白い」発見がありました。

普通、漆やカシューは平滑な面をつくるものですが、分厚く塗りすぎたり、急速に乾燥させると、この画像のようなシワが寄ります。これは「ちりめんじわ」と呼ばれる、工芸の世界では初歩的ミスです。でも僕は、このシワを見たとき「面白い」と思って、作品に取り込みました。カシューに限らず、素材をつかって遊ぶ、その過程で何か気付きがある、ということが、僕の制作の原動力なのです。

―いま個展をされているTEZUKAYAMA GALLERYの会場を見て、改めて私は感じたのですが、同世代のアーティストと比べて、築山さんは作品の数がとても多い気がしています。

多いですか? 僕が拠点にしている神戸には、堀尾貞治さんがいますからね(笑)、僕なんてまだまだですよ。

―神戸のアートと言えば、築山さんが関わっている「C.A.P.」がありますね。C.A.P.とは何なのか、教えてください。

C.A.P.は、場所の名前ではなく組織の名前で、神戸で活動を継続し今年で22年になります。2016年現在、C.A.P.は、指定管理者制度でKOBE STUDIO Y3を運営したり、「神戸文化祭」という運動をしたり、海外のコミュニティと交流を図る「SEE SAW SEEDS PROJECT」を展開しています。

―そのC.A.P.に築山さんがどう関わっているのか、教えてください。

僕は京都造形芸術大学を卒業して、しばらく京都に住んでいたのですが、10年ぐらい前の30歳ごろ、地元である神戸へ帰ることにしました。神戸で活動を続けられる場所を探していたときに、大学の先輩づてで「C.A.P.でミーティングがあるから、見学に来たら?」と誘われたのです。そこには設立当初から携わっている杉山知子さん、藤本由紀夫さんといった多くの先輩アーティストたちがいました。

ミーティングは「神戸とアイルランドのアーティストを交換するプログラムがあるけれど、誰か参加しませんか」という内容でした。僕はC.A.P.へ見学に行っただけだったのに、つい手を挙げてしまったのです。しかも一年後、本当にアイルランドへ行くことができました。
以来C.A.P.は、大学院に行っていない僕にとって、いろいろなことを教えてくれる場になりました。

例えば「アートフェア」。今は世界各地でアートフェアが開かれ、僕も自分のアトリエでひとりでアートフェアをしたこともあるぐらいですが、ちょうど10年前、2006年に「CAP art FAIR」というのがありました。当時はアートフェアという言葉の意味も知らず、僕自身も「アートフェアって何?」という状態でした。しかし榎忠さん、植松奎二さんといったアーティストたちの作品が、目の前で売れていくことに驚きました。翌2007年の「CAP art FAIR」では「1つでも作品を売ってみよう」と誓いました。そして実際に作品が売れたときはうれしかったですし、この「CAP art FAIR」を通して、アートマーケットの仕組み、コレクターさんとのつながりなどを知るきっかけになりました。

―そして9月には、C.A.P.からドバイに行くのですね。

C.A.P.が進めている「SEE SAW SEEDS PROJECT」は、神戸とドイツのハンブルク、フィンランドのトゥルク、そしてドバイの4都市のアーティストを交換するプロジェクトです。C.A.P.の約20年もの活動で培われた関係から生まれたもので、僕は「神戸からドバイへ行く」というプログラムで9月から3か月間行ってきます。既に「ドバイから神戸へ来た」アーティストたちは滞在を終えています。ただアーティストが行き来するだけでなく、コミュニティを交換するという目的も含まれていることが特徴です。

しかし、問題点もあります。お金のことです。今回「SEE SAW SEEDS PROJECT」の僕たち神戸側では、助成金を11件申請しましたが、受かったのは2件だけでした。それだけでは、4都市15人のアーティストらが動く費用には至りません。C.A.P.には昔から「サポーティングメンバーシップ」があり、一時廃止していたのですが、この「SEE SAW SEEDS PROJECT」のために復活させました。このメンバーシップのおかげで、いま目標額に達しようとしていて、僕もドバイから戻ってきたら、年内に報告会を開く予定にしています。

―これからも神戸やC.A.P.に関わりながら、制作や発表を続けていくのですね。

僕はC.A.P.に関わって、アーティストが集まっているコミュニティがあることを知りました。実はこの10年間に、ひとりでスタジオを借りて制作して一年を過ごしたことがあるのですが、実に制作は進みました。しかしC.A.P.で味わったような人との関わりがなく、僕にとってひとりで制作することはとてもしんどかったんです。だからC.A.P.が運営するスタジオをアーティストとしてつかうというだけでなく、C.A.P.で僕は、作品の展示方法、パーティの運営方法や楽しみかた、海外との交流プログラムへの参加など、実に多くのことを学ぶことができたことをうれしく思っています。

僕も今年で40歳、もちろんこれからも制作を続けていきます。時間に追われる現代だからこそ、ひとつの作品をじっくりつくることをしてみたいです。そして、次の世代である若い人たちにも、ぜひC.A.P.の活動を知ってほしいと考えています。

【展覧会情報】
展覧会タイトル「39 / 40」
会場:TEZUKAYAMA GALLERY(大阪市西区)
日時:2016年7月1日(金)~30日(土)

http://tezukayama-g.com/

Chisai Fujita

Chisai Fujita . 藤田千彩アートライター/アートジャーナリスト。1974年岡山県生まれ。玉川大学文学部芸術学科芸術文化専攻卒業後、某大手通信会社で社内報の編集業務を手掛ける。5年半のOL生活中に、ギャラリーや横浜トリエンナーレでアートボランティアを経験。2002年独立後、フリーランスでアートライター、編集に携わっている。これまで「ぴあ」「週刊SPA!」「美術手帖」など雑誌、「AllAbout」「artscape」などウェブサイトに、展覧会紹介、レビューやインタビューの執筆、書籍編集を行っている。2005年から「PEELER」を運営する(共同編集:野田利也)。鑑賞活動にも力を入れ、定期的にアートに関心の高い一般人と美術館やギャラリーをまわる「アート巡り」を開催している。また現代アートの現状やアートシーンを伝える・鑑賞する授業として、2011年度、2014年度、2015年度愛知県立芸術大学非常勤講師、2012年度京都精華大学非常勤講師、2016年度愛知県立芸術大学非常勤研究員、2014~ 2017年度大阪成蹊大学非常勤講師などを担当している。 写真 (C) Takuya Matsumi ≫ 他の記事

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