兵庫県立美術館コレクション展-県美プレミアム

兵庫県立美術館はコレクション展も面白い

poster for Leonard Foujita “Art Bridging the East and the West”

藤田嗣治 展

神戸市エリアにある
兵庫県立美術館にて
このイベントは終了しました。 - (2016-07-16 - 2016-09-22)

poster for New Acquisitions

「時間をひらく- 新収蔵品を中心に- 」

神戸市エリアにある
兵庫県立美術館にて
このイベントは終了しました。 - (2016-07-02 - 2016-11-06)

poster for Art Forms – Touching and Perceiving Works of Art

「美術の中のかたち - 手で見る造形 つなぐ×つつむ×つかむ 無視覚流鑑賞の極意」

神戸市エリアにある
兵庫県立美術館にて
このイベントは終了しました。 - (2016-07-02 - 2016-11-06)

In トップ記事小 レビュー by Aki Kuroki 2016-09-17

現在、兵庫県立美術館で開催中の展覧会は『藤田嗣治展』。2015年にはオダギリジョー主演で映画作品「FOUJITA -フジタ-」にもなり、藤田のお河童頭に丸眼鏡姿が印象的でした。西洋画壇の絶賛を浴びたエコール・ド・パリの代表的な画家藤田の生涯と画業をたどる興味深い展覧会ですが、兵庫県立美術館で催されているのは、この展覧会だけではないのです。企画展以外にコレクション展も開催しています。今日は、あまり大声では喧伝されていない兵庫県立美術館の魅力を存分にお伝えしたいと思います。
(※兵庫県立美術館では企画展→特別展、コレクション展→県美プレミアムという名称になっています)


そもそも、企画展とコレクション展ってどう違うの?

ところで、企画展とコレクション展っていったい何が違うの?と疑問に思う方がいるかもしれません。企画展は一定の期間を決め、展示テーマを企画するから企画展。企画展では、一つの美術館だけでなく国内や海外の美術館やギャラリー、個人のコレクションなど複数から作品を借りてきて展覧会が開催されることがほとんどです。海外からの作品の賃借は高額になり費用もかかるため、観覧料も高くなる傾向にあります。反対にコレクション展の場合は、自館で所有する作品だけで構成できるので、観覧料を押さえることができます。作品収集をしている美術館はたいてい企画展とコレクション展を同時期に開催していますが、日本で美術館に行くといえば「ポール・スミス展」や「ダリ展」など、やはり企画展を指すことが多いようです。

しかし、美術館の本当の魅力はコレクション展にあるといってもいいくらいです。例えば、パリのルーブル美術館に行って《モナリザ》や《ミロのビーナス》が見られなかったら、とても残念に思いませんか。海外の美術館で見る展示の多くはその館の所有する収蔵品からなる常設のコレクション展です。《モナリザ》や《ミロのビーナス》も、もちろんそうです。美術館によって活動方針やコレクションの傾向(地域・文化・時代、扱うジャンルなど)の違いがあり、それが美術館の特徴を決定づけています。それは日本国内でも同じで、その館のコレクションを知れば、どんな美術館なのかが自ずから見えてくるといえるでしょう。

光も建築の一部。多彩な表情をみせる過去と未来・海と山を繋ぐ芸術の館

兵庫県立美術館は、阪神・淡路大震災からの「文化の復興」のシンボルとして「HAT神戸」地区に2002年開館しました。HATとはHappy Active Townの略です。設計は安藤忠雄氏、西日本最大級の床面積を持ち南北に大きく2分された館は鉄工所の跡地であったことから、北側(山側)には「過去」を象徴する鉄が多く使われ、南側(海側)には「未来」を象徴するガラスが多用されています。御影石で覆われた外壁は蔦を絡ませ、時とともに様相が変化していきます。内部は少し薄暗いですが、それは訪れる時間や季節によって館内に差し込む光の印影で変化していく空間や建物がイメージされているのです。


コレクションの柱は、彫刻・版画・郷土作家・現代美術

さて、気になる美術館のコレクションですが、前身の兵庫県立近代美術館より約半世紀近く作品収集がなされており、購入や受贈も合わせ、現在のコレクション数は9000点以上。コレクション全体の概要をざっと表にまとめてみました(図1)。近代彫刻、近代版画、現代美術はもちろん、さらに写真や映像、デザインなどの新しい分野の作品も収蔵されています。 

[図1]
図①コレクション概要一覧

「彫刻」では誰もが知る近代彫刻の父ロダンにはじまり、ブールデル、マイヨール、ブランクーシやシーガルなど、20世紀の彫刻の流れが一望できる系統的な収集がされていますし、「日本の彫刻」には欠かせない柳原義達や舟越保武、佐藤忠良らの作品も常設の展示で見ることができます。「海外版画」ではゴヤ、マネ、クリンガー、ピカソ、カンディンスキー、ウォーホル、アンソール、エルンストらの作品の数々。「日本版画」では、風景版画の小林清親、新版画の川瀬巴水、国際的にも高い評価を受けた長谷川潔、浜田知明、池田満寿夫など、近代から現代にかけての日本の版画史をたどることができるラインナップになっています。県立の美術館としては「兵庫ゆかりの作家」も外せないところ。金山平三と小磯良平は記念室を備え常時見ることができます。また、京都画壇から離れて神戸・花隈に住み六甲山や仏様を描いた村上華岳、幼少期を神戸で過ごした東山魁夷らをはじめとした日本画・洋画の郷土作家も多数。「現代美術」では特に具体美術協会において、リーダー吉原治良をはじめ、元永定正、白髪一雄、嶋本昭三、田中敦子といった初期メンバーの作品を数多く所蔵しており、当時数百万円だったものが今や数億円にもなる作品もいくつもあるのだとか。

コレクションの特徴としては、個人寄贈によるひとつのまとまった形での収蔵がいくつか見られることといえるでしょう。日本の戦後美術の収集に力を注いだ山村コレクション(1986年収蔵)、森村泰昌の珍しい小品に特化したO氏コレクション(2006年収蔵)、日経ブラジル人芸術家の作品を集めた赤川コレクション(2009年収蔵)、スタンレー・ウィリアム・ヘイター作品の屈指のコレクション(2011年収蔵)、戦後大阪を代表する画廊である信濃橋画廊のコレクション(2012年収蔵)など。その中から、最近では大阪で半世紀近く活動を続け、関西の現代美術史を語る上では欠かせない信濃橋画廊コレクションが「新収蔵品紹介 信濃橋画廊コレクション」(2013年)として紹介されました。


企画力の高い展示テーマで魅せる、充実のコレクション展

兵庫県立美術館では2014年度より、名称をコレクション展から「県美プレミアム」と改め、展示にも力をいれた内容となっています。たんに収蔵品をテーマごとに並べるのではなく、1年をⅢ期に分け9000点を超える作品がさまざまなテーマに分けられ、よく練り込んだ独自性の高い企画展示で紹介されているのが特徴で、下記の表(図2)からもそのことがうかがえます。
第Ⅰ期は企画性の高い踏み込んだ内容のもの、第Ⅱ期では視覚に頼らない美術鑑賞の提案と前年度に新しく収蔵された作品の紹介、第Ⅲ期では小企画と収蔵品の中でも名品とされる作品を見ることができ、どれも特別展とはひと味違った興味深い展示内容となっています。
「小企画」とは、館外作品も使った常設展示の一角を使った企画展、「特集」は特定のテーマにしたがって所蔵作品を展示し美術鑑賞に新しい視点を打ち出すもの。実は、常設展示のスペースは企画展の1.5倍の広さ、展示数も200点以上に及ぶことが多々あり、企画展よりボリュームがある場合も。兵庫県立美術館の県美プレミアムはなかなかあなどれない展覧会なのです。

[図2]
図②常設展一覧

現在、開催中の県美プレミアムは第Ⅱ期にあたります(「図2」赤字部分参照)。小企画の「美術の中のかたち-手で見る造形」展は、1989年から毎年開催しているシリーズ展で「視覚に障がいがある方に美術鑑賞の機会を」という趣旨のもと続いているもの。一方、「見る」ことが当たり前の美術館で、視覚とは何か、造形的な芸術表現の場において他の知覚(聴覚、触覚、味覚、嗅覚)との関係性はどうなのか、違った観点で美術を観る、考える機会にもなっています。

今回の小企画の展示テーマは、『つなぐ×つつむ×つかむ 無視覚流鑑賞の極意』。無視覚流とは感覚を総動員して作品を「みる」行為、全身の知覚の潜在力を引き出す試みなのです。

そして、もうひとつの展示(特集)は、前年度より新しく美術館のコレクションに加わった作品のおひろめとなっていてテーマは『時間をひらく』。時間をめぐる5つのキーワードに沿って作品が紹介されていきます。キーワードに導かれながら見ていくと、無機質な時間、誰かの時間、過去の時間、ギュッと凝縮した時間、季節、美術館に流れるゆったりした時間の中でさまざまな時間が交差しはじめ、時間について考えさせれられました。どうやら、美術作品には日常と全く違った時間がつまっているようで、その時間はだれかが作品を見るたびに、見る人の中にひらかれていくようです。

兵庫県立美術館ならではの、一歩進んだ美術館の楽しみ方と活用方法

このように兵庫県立美術館のコレクション展は、ユニークで質の高い企画で展開されているので、とても見ごたえがあります。もちろん、美術館では企画展も見てほしい。企画展のついでに、というのもいいですが、実際は企画展のボリュームに疲れてあまりちゃんと見られなかったり...それは本当にもったいない話です。

気合を入れて企画展、もいいけれど、神戸に買い物や食事に行ったついでにふらりとコレクション展だけ見るという楽しみはどうでしょうか。10万冊もの美術専門書や資料を取りそろえる閲覧自由な「美術情報センター」でちょっとアートのお勉強、レファレンスサービス(無料)もあるのでとても便利です。そして疲れたらカフェでひと休み、南側の海辺の大階段で気分転換も。

そしてもうひとつ、個人的におススメしたいのが、コレクション展の一部である常設展示室2階「小磯良平・金山正三記念室」で靴を脱いで見ること!(スリッパを勧められますがそこは裸足で)。絨毯敷の会場なのでとても気持ちよく自由な気持ちになれ、作品の見え方がぐっと違ってくるのです。美術館で裸足になることはあまりないと思いますが、これは一度やってみるとやみつきになるかも。関西で靴を脱げる美術館は、兵庫県立美術館と伊藤若冲で有名な京都の相国寺承天閣美術館だけなので、ぜひお試しあれ。

「友の会」はとてもお得、利用価値大!です

そこで、なんといってもおススメなのが友の会。会員になれば4000円で企画展は8回まで観覧できて(なんと1回あたり500円!)、しかもコレクション展は見放題。企画展の入場料は通常1400円前後、コレクション展は1回510円なので、それを考えるとずいぶんお得です。利用しないわけにはいきませんね。他にも会員限定の美術鑑賞旅行や各種イベントが多数ありますが、なかでも例年大人気なのが知る人ぞ知る「保存修復室ツアー」。 普段はなかなか見ることができない保存修復室の見学や、実際の作業の一部を見ることができたり、専門の学芸員から直接、保存・修復に関する話が聞けたりするので、希望者がとても多く毎年抽選になるそうです。兵庫県立美術館は、油彩・彫刻、紙作品担当とアシスタントを入れて合計3名の体制を組み、日本の中でも修復・保全体制としてはトップクラスの美術館。希望者が多いのも納得です。
 
企画展を見に行く以外にも、さまざまな楽しみ方ができる兵庫県立美術館。気軽に足を運んでもらって、美術に親しんでもらう入口にしてほしいです。

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■兵庫県立美術館 県美プレミアム(コレクション展)
・小企画:「美術の中のかたち―手で見る造形 広瀬浩二郎プロデュース つなぐ×つつむ×つかむ:無視覚流鑑賞の極意」
・特 集:「時間をひらく―新収蔵品を中心に」

【会 場】兵庫県立美術館
【会 期】2016年7月2日(土)〜11月6日(日)
【時 間】10:00〜18:00 
※特別展開催中の金・土曜日は20:00まで(入場は閉館30分前まで)
【観覧料】一般510(410/セット306)円、大学生410(330/セット246)円、
高校生260(210/セット156)円、65歳以上255(205/セット153)円、
     ※()内は団体料金/セットは特別展とセット料金/団20名以上/中学生以下無料      
【友の会】http://www.artm.pref.hyogo.jp/member/
【美術館サイト】http://www.artm.pref.hyogo.jp/

■兵庫県立美術館 特別展 「藤田嗣治展 ― 東と西を結ぶ絵画 ― 」
【会 期】2016年7月16日(土)~9月22日(木・祝)
http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1607/index.html

■兵庫県立美術館 特別展「世界遺産 ポンペイの壁画展」
【会 期】2016年10月15日(土)~12月25日(日)

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Aki Kuroki

Aki Kuroki . 兵庫県出身。広告代理店にてアカウントエグゼクティブとして主に流通業を担当、新聞・ラジオ・テレビ・雑誌などのメディアプロモーション、イベント・印刷物などを手掛ける。神戸アーバンリゾートフェアではイベントディレクターとしてフェア事務局に赴任。 その後、10年間心理カウンセラーのかたわら、ロジャーズカウンセリング・アドラー心理学・交流分析のトレーナーを担当。神戸市 保険福祉局 発達障害者支援センター設立当初より3年間カウンセラーとして従事。 2010年よりフリーランスライターとして、WEBや雑誌の編集・インタビュー・執筆などを手掛けた後、現在は美術ライターとして活動。アートの世界のインタープリターとしての役割を果たしたい。 ≫ 他の記事

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