「奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2016 」

古き良き城下町で感じる 案山子(かかし)×アートという新たな芸術体験

In KABからのお知らせ トップ記事 by Mari Endo 2016-10-12

10月1日より「奈良・町家の芸術祭 はならぁと2016」が高取土佐町並みエリア(はならぁと こあ)を皮切りに、歴史ある今井町エリア(はならぁと ぷらす)、八木札の辻エリア・吉野町国栖エリア(はならぁと あらうんど)で開催されています。これまで5年間「はならぁと」は奈良県内15の地域で開催され、地元密着型のアートフェスティバルとして定着してきました。

今回訪れた「はならぁと こあ」が開催されている高取土佐町並みエリアでは、担当キュレーターに遠藤水城氏(HAPS 代表/インディペンデント・キュレーター)を起用。展覧会タイトルを「人の集い」と題し「町家の案山子めぐり」とのコラボレーションによる新しい芸術体験への挑戦が行われています。

古墳時代から飛鳥時代の貴重な遺跡が残る高取町。日本三大山城と称えられた高取城の城下町では、まるでタイムスリップしたかのような懐かしい光景に出会えます。また「日本書紀」に推古天皇が”くすりがり”に訪れたとあり、1400年以上経った今もなお「くすりの町」として美しい野草が訪れる人を癒してくれます。

そんな高取町で現在「第8回 町家の案山子(かかし)めぐり」が開催されています。地域の方々が協力して作った案山子が町内のいたるところに存在し、子供から年配の方まで参加する町をあげてのお祭りとなっています。

今回は「はならぁと」との同時開催という初の試みとなっており、風情溢れる街並みにひときわ際だつ案山子達が「一体どうアートと結びつくのか。」
そんな疑問を持ちながら、MAPに記された順序で会場へ。

本企画では、案山子を立体作品として捉え、展示作品は意図的に平面の絵画や写真が中心となっています。

会場の一つである西川ガレージでは、アーティストの石垣克子さんが案山子ファミリーとともにお出迎え。風情豊かな町家の土壁には、当時の住民が貼っていた昭和初期の新聞紙がそのまま残っており、その壁を生かす展示がされていました。

石垣さんの絵画作品に描かれた”黄色い人”は、人の体温を表しており、沖縄に在住されている作家さんならではの鮮やかな色彩や、なだらかな曲線で描かれた絵画は訪れる人をあたたかく迎え入れてくれます。


また町家の梁には、コルクでできた”サンゴコルク人”がお行儀良く並んでおり、作品について石垣さんにお話を伺うことができました。

「頭頂部に刺さったサンゴでそれぞれのコルク人に個性を持たせています。”サンゴコルク人”は、海に存在するサンゴと、山の素材でできたコルクを掛け合わせていることで、自然界における海と山の切るに切れない関係性を表しており、山陸から出た産廃物が海洋汚染に繋がっていることを暗示しています。」

遠藤氏の勧める順序で最後の会場にあたる「地域の居間」では、現在ドイツ在住の雨宮庸介さんの作品インスタレーションが展開されています。

15、16世紀に描かれた西洋のデッサンを思わせる平面作品が、自然光がほんのりとさす日本家屋の居間に、エレガントに溶け込んでいます。また、数台の扇風機を作品を見る鑑賞者のように見立て、微風を放ちながらひっそりと佇ませています。


2階は、曇りガラスの窓を通じて一本の蔦がスーっと部屋にまで伸びている素朴な”間”。作品や案山子などを省いた”間”であるからこそ、これまで見てきた人々が写り込んだ作品や、案山子の持つ一種の人の”気配”のようなものを感じ取ることができました。

雨宮さんに2階の展示空間に伸び入った蔓(つた)も作品なのか否かを伺ったところ、少しだけ蔦に手を加え、あえて作品を置かないことで”間”の持つ魅力を最大限に活かすことに専念されたそうです。

今回訪れた高取土佐町並みエリア(はならぁと こあ)では、エリア内各所にて10月22、23、29、30日に捩子ぴじんさんによるパフォーマンスが行われます。

今井町エリア(はならぁと ぷらす)

公募作家10組と地域連携プロジェクト4企画による展覧会を美しい町並みと共に楽しむことができます。期間中には、狩野宏明×奈良教育大学絵画研究室の絵画ワークショップ、公開制作や、池田不玖さんによる実験的な即興演奏ライブ「言葉のない朗読会」など関連イベントも。


八木札の辻エリア(はならぁと あらうんど)

「地域と写真」を軸に地元の人たちから古い時代の写真を集め、複数のプロジェクトをスタート。10月16日には「まち歩き&撮影イベント」、11月1日〜6日は、畝傍駅での写真展が開催されます。

吉野町国栖エリア(はならぁと あらうんど)

10月9日には「国栖の里灯り展」に合わせて栗田咲子さんのライブドローイングが開催されました。

歴史ある美しい街並みで開催されている「はならあと 2016」。地域コミュティーの活力や素朴であることの素晴らしさが、展示されているアート作品や案山子という一種の立体作品によって、引き立てられた芸術祭となっています。また山間部特有の美しい野草にも創造力を掻き立てられます。炭で焼きたての美味しいみたらし団子や、地域に暮らす人々とのふれあいなどから、アート以外にも大切な何かを発見することができます。

奈良のプリミティブな秘境でのんびりと、アートという枠組みを超えて楽しまれてみては?

Mari Endo

奈良・町家の芸術祭 はならぁと2016

【公式サイト】▶︎http://hanarart.jp/2016/

【会場/会期】
高取土佐町並み(はならぁと こあ) 10月1日〜21日(10:00〜16:00)
今井町(はならぁと ぷらす) 10月22日〜31日(10:00〜16:00)
八木札の辻(はならぁと あらうんど) 11月1日〜11月6日 ※地域ページにて更新中
吉野町国栖(はならぁと あらうんど) 10月9日(14:00〜20:00)
【関連イベント】http://hanarart.jp/2016/event
【料金】入場無料 ※関連イベントは内容により異なる
【交通機関】各会場へのアクセスはこちら→http://hanarart.jp/2016/access
【公式ガイドブック】1冊500円(税込み) ※景品当たるスタンプラリー台紙付

Mari Endo

Mari Endo . Mari Endo (遠藤 麻里) --------------------------------- 京都市生まれ。立命館大学産業社会学部 情報メディアコース卒。IMIグローバル映像大学 グラフィックデザイン、アート・マネジメント、映像音響科卒。学生時代にはラップへの強い好奇心から、NYに滞在しポエトリーリーディングの会に所属するものの、松尾芭蕉の俳句や日本語の美しさを再発見し、古語をベースにしたラップをお寺で行う(おてラップ)。 広告代理店で紙媒体のグラフィックデザイナーとして勤務後、東京で大手WEBサイトでのデザイン、執筆、海外向けゲームプロデューサーなどメディアコンテンツの企画・制作経験を持つ。フリーランスのデザイナーとしても活動中。 ≫ 他の記事

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