「のっぴきならない遊動」展

われわれはどこからやってきたのだろうか?人類の拡散や創造の起源を問う企画展示。

poster for Inevitable Nomadism

黒宮菜菜+二藤建人+若木くるみ 「のっぴきならない 遊動」

京都市中京区エリアにある
京都芸術センターにて
このイベントは終了しました。 - (2017-05-25 - 2017-07-02)

In トップ記事小 フォトレポート by Reiji Isoi 2017-06-27

只今、京都芸術センターで「のっぴきならない遊動」展が開催されています。

本展示は、今年度より京都芸術センターが導入し、展示企画を公募し、作家と京都芸術センターが共同で実施する「KAC TRIAL PROJECT / Co-program」カテゴリーB(展覧会事業)の第1回目となるものです。同プログラムは作家と京都芸術センターのスタッフの連携をより強め、もともと小学校だった京都芸術センターという場の持つポテンシャルをより発揮する作品制作や展示を行う目的のもと展開されています。

同プログラムの初回となる本展示では、京都を拠点に絵画制作を続けている黒宮菜菜氏の「人間はなぜ創作するのか」という素朴かつ根源的な問いを「人類拡散」「遊動」「身体」といったキーワードから考える「のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ」が選定され、黒宮氏のほか二藤建人氏、若木くるみ氏の3名の作家が制作した作品を公開しています。

油画を専門とし、近年では画仙紙や水墨画用紙などの和紙素材に染料による滲みや暈しを表現手法とする黒宮氏は、身体の輪郭の曖昧さや希薄さを「イメージとしての身体」として捉え制作を行っており、普段は「遊動」というキーワードをさほど意識することはなかったそうです。本展示の企画にあたり「実際に身ひとつで世界を駆け回り、這い回り、遊動している人たち、身体そのものを使って表現している人たちの参加を構想しました。自分とは違うアプローチで作品を発表している二藤建人さん、若木くるみさんの2名、『遊動』や『身体』的表現の要素が強い方たちに参加していただき、一緒に考えてみたかったのです」と語ります。

「のっぴきならない遊動」という本展覧会のタイトルについて伺うと、人類進化学研究者の海部陽介氏が著書「日本人はどこから来たのか?」で提唱する人類のアジア拡散ルートについての仮説が企画の大元となったそうです。ヒマラヤ山脈を挟んで南北に別れた人類が、その後西から東へと横断し1万年後東アジアで再会。その後、草舟を作って海に乗り出し人力渡航で日本までやってきたという話について、作家三人で想いを巡らせ会話するうちに「遊動というと、その日その日でフラフラと気ままな感じを受けるけど、わたしたちの祖先が行った遊動はもう少しとんでもないテンションの遊動、、、、退っ引きならない方の遊動だよね」という言葉が出てきて本展覧会のタイトルへと結びついたそうです。

二藤建人氏は、接触や運動の新たなバリエーションの提案や、人類史上淘汰・忘却された事象の数々を意識した「生」への思想的アプローチによる制作活動を行う作家です。本展示では、「重力は地球からの愛である」というテーゼをもとに作品化した映像インスタレーションや、12トンもの土を運び込み制作した「山を包囲」する作品ほか、雑巾をつなげ合わせてつくったコスチュームを纏い、全身を使って拭くという「雑巾男」というパフォーマンス活動を韓国、東京、ヨルダンなどの国内外の各地で実践したときの模様を伝えるドキュメント映像を展示しています。

若木くるみ氏は、版画制作や自身の身体を用いて版画の転写行為を拡張させるライブ・パフォーマンスを始め、近年は自らが「走る」という行為を作品として表現する活動などで知られる作家です。今回若木氏は、遊動の反対である「定住」をテーマに、独創的な作品の数々をもともと茶室のための部屋に展示しています。ギリシャで開催されるスパルタスロンという246キロを無休無眠で走り続ける過酷なマラソンレースに参加し日本人女子1位という成績を残したことや、TVのバラエティー番組に出演し作家として審査されグランプリを獲得するなど自身のユニークな体験を基に制作した作品を鑑賞できます。その他、鯖街道と呼ばれるコースで開催された77KMのウルトラマラソンを、若木氏が完走した際の体験は最新作「鯖を運ぶ」というドキュメンタリー映像として、回廊に展示されています。

本展示会場の京都芸術センターの建物は、明治初期に開校し124年の歴史を持つ明倫小学校の校舎として使用されていました。当時の姿をほぼ残し、講堂・大広間・和室「明倫」、教室は、かつてのように現在もたくさんの人が学び、想像し憩う、文化的拠点として現在も開かれています。

気鋭の若手作家3人が人類の「遊動」をテーマに創作活動の根源に迫る共同の企画展示、懐かしい佇まいの校舎内を遊動しながらイマジネーション溢れる独創的な表現、作品群を鑑賞できるこの機会に是非足を運んでみてはいかがでしょうか?

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【開催概要】
『のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/仁藤建人/若木くるみ』

開催期間:2017年5月25日[水]—7月2日[日]
展示時間:午前10時~午後8時 
会場:京都芸術センター内ギャラリー北・南、和室「明倫」を巡回
入場料:無料、詳細は以下をご覧ください
イベント詳細:http://www.kac.or.jp/events/21126/

Reiji Isoi

Reiji Isoi . 1978年生まれ。00年代前半より音楽業界を中心に写真の撮影活動を始め、音楽・美術・文芸誌に写真・インタビュー記事等を寄稿するほか、映像撮影・制作の仕事に携わる。仲間と突発的に結成した『宇宙メガネ』からも不定期に発信することがある。各地で起こる皆既日食、米国のバーニングマン、インドのクンブメーラ祭、古代遺跡でのイベントなど、津々浦々で出会う作品や表現者たちとの交流を通じ、森羅万象の片影を捉えようとカメラを携え日々撮り続けている。 http://razyisoi.jp/ ≫ 他の記事

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