日本の伝統と現代美術のコラボ空間出現「フォーエバー現代美術館-祇園・京都」

~草間彌生コレクション、初期作品81点が京都に集結~

In トップ記事小 レビュー by Aki Kuroki 2017-08-13

日本文化は歴史的に見ると外来文化を繰り返し取り入れ、時間をかけて外来の革新的な要素を咀嚼しながら独自の文化を発展させてきました。その在り方に習って、生きた伝統文化の発信をコンセプトに、日本の伝統と現代の融合を試みた「フォーエバー現代美術館-祇園・京都」が2017年秋にグランドオープンの予定です。それに先駆け、プレオープニング展として、コレクションのメイン作家となる草間彌生の『草間彌生 My Soul Forever』展が現在開催中。美術館前では直径5mの巨大なシンボル作品《南瓜(かぼちゃ)》(2007年)が来館者を出迎えます。

建物は伝統文化の殿堂として知られる祇園甲部歌舞練場内の「八坂倶楽部(くらぶ)」。1915(大正4)年に建築された重要文化財指定の伝統的な木造2階建てで、館内は総畳敷き、壁は展示室ごとに京都の五花街で見られる「浅葱(あさぎ)」「弁柄(べんがら)」といった日本古来の色彩が用いられ新しいアート空間になっています。そこで提案される鑑賞スタイルは、なんと驚きの「畳に座す」というもの。日本独自の美術鑑賞スタイルを引き継いだ新鑑賞法は、立ち姿勢が前提の西洋とはまた異なった、作品との新しい関わりを築く可能性をたくさん秘めています。展示位置も通常より低く設置されており、気になる作品に出会ったら好きなところに座ってじっくり眺められるのも特徴です。

フォーエバー現代美術館は30年以上の歳月をかけ約700点に及ぶ美術品を収集、そのうち6割近くが草間彌生の作品で占められています。そのコレクション自体で作家が創り出す作品世界全体が理解できることを目指して、作家協力のもと初期から近作までの作品、特に1990年代に集中して収集されてきました。

テートモダン美術館をはじめとする国内外の美術館にも貸出されてきた《私の魂を乗せてゆくボート》(1989年)、《黄樹》(1992年)などの1990年代の重要な代表作や、《光は地の果てから》(1950年)、《Infinity Nets》(1963年)などの初期作品群ももちろん網羅されています。特筆すべきは、草間彌生が制作した版画作品全372点のうち(《愛はとこしえ》を除く)、およそ95%にあたる352点を収蔵していることです。これらの版画作品により、作家の1979年から2016年までの制作活動を包括的に眺め見ることが可能になっています。

そして草間彌生作品コレクション以外では、ヨーゼフ・ボイス、アンゼルム・キーファー、リチャード・ロング、宮島達夫、大岩オスカール幸男など国内外の現代美術作品が収蔵され、これらが日本人の個人コレクターによるものだということに驚きが隠せません。

タイトルの「My Soul Forever」は、美術館名のForever、作家の作品制作の重要なテーマのひとつである「永遠」、そして本展のテーマを掛けたものです。

展覧会では、コレクションの中から81点を4つのテーマに分けて展示。1950年ごろの初期作品から草間彌生作品の重要な要素「網(Nets)」「水玉(Dots)」が現れていることが見て取れるほか、植物や靴、ドレスといった身近な品をモチーフにした作品、最初の版画《靴をはいて野に行こう》(1979年)から、近作《七色の富士》(2015年)までを見ることができます。

注目作は2階の大広間の舞台に展示された《私の魂を乗せてゆくボート》(1989年)。既製品の手漕ぎボートの表面に布製の突起物で覆い尽した立体造形で作家考案の「ソフトスカラプチュア(柔らかな彫刻)」のひとつ、無数の突起物が思い起こさせるものは終りのない増殖、反復。永遠を追い求めてやまない作家の魂と作品、建物が内包する時間と舞台効果もあって、草間的幽玄の世界がそこに生じているようにも思えてくるのです。

作品鑑賞に疲れたら、日本庭園の散策もできるほか、広縁の「庭園ギャラリー」でゆっくりとお庭を眺めることもできます。またおススメなのは、お洒落で気持ちいい広々としたミュージアムカフェ。大阪の青果店「ハナフル」が手掛けるカフェ&ダイニング「ノースショア」がプロデュースするだけあって、新鮮なフルーツと野菜が盛りだくさんのヘルシーフードが充実。草間彌生オリジナルの食器を使い、草間作品をオマージュしたドット柄のあんみつや、ジェラート、ロールケーキは可愛さ炸裂、ぜひお試しあれ。

隣接するミュージアムショップでは草間彌生作品をモチーフにした《南瓜》の手ぬぐい、マグネットなど約120点をグッズ展開して販売しています。

『草間彌生 My Soul Forever』展は今秋10月29日まで。その後は、常設展示室(現在工事中。こちらが完成してグランドオープンとなります)で草間彌生の作品が常時見られるようになるほか、年に数回、企画展として現代美術作家たちの作品を日本家屋の新しい展示スタイルでご覧いただけます。

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フォーエバー現代美術館 プレオープニング展
「フォーエバー現代美術館コレクション展 草間彌生 My Soul Forever展」
【会 期】 2017年6月10日~10月29日(→会期延長2018年2月25日まで)
【会 場】 フォーエバー現代美術館
【時 間】 10:00~18:00(入場は17:30まで)
【休館日】 ※期間中無休
【観覧料】 一般1,200円、中高生800円(プレオープン期間のみ)
【 H P 】 http://fmoca.jp/index.html

※美術館のグランドオープンは2017年秋の予定、詳細はHPにてご確認ください。
(→グランドオープン2018年3月以降に変更になりました)
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Aki Kuroki

Aki Kuroki . 兵庫県出身。広告代理店にてアカウントエグゼクティブとして主に流通業を担当、新聞・ラジオ・テレビ・雑誌などのメディアプロモーション、イベント・印刷物などを手掛ける。神戸アーバンリゾートフェアではイベントディレクターとしてフェア事務局に赴任。 その後、10年間心理カウンセラーのかたわら、ロジャーズカウンセリング・アドラー心理学・交流分析のトレーナーを担当。神戸市 保険福祉局 発達障害者支援センター設立当初より3年間カウンセラーとして従事。 2010年よりフリーランスライターとして、WEBや雑誌の編集・インタビュー・執筆などを手掛けた後、現在は美術ライターとして活動。アートの世界のインタープリターとしての役割を果たしたい。 ≫ 他の記事

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