バス停・千本北大路駅を降りると目の前に、テント型の白いカーテンが目に入る。通り往く人が、気軽に中を覗いていける開けた空間。ここが、京都を拠点に活動する建築家グループ「STUDIO MONAKA」のオフィス兼ギャラリーだ。
メンバーは、岡山泰士・森田修平・仲本兼一郎の3名で、それぞれがみな1987年生まれの同級生。彼らの活動は幅広く、建築設計のみにとどまらず、アーティスト展覧会の会場構成、京町家の再生事業、ワークショップやイベントの開催など、ジャンルを超えて様々な「空間づくり」に携わっている。柔軟な思考とジャンルを超えたフットワークの軽い活動をみせるSTUDIO MONAKA。そんな彼らに、建築的な目線からどうアートを捉えているのか、建築の面白さやこれからの可能性などざっくばらんに聞いてみた。
ーSTUDIO MONAKA 結成のきっかけ
「STUDIO MONAKA」というチームは、沖縄出身の仲本が加わってからの名前なのですが、その前身となった岡山と森田が組んでいた建築チーム「mono.」は、アトリエがあった場所は、工房のロフト空間を借りてやっていたんです。その時に工房に出入りしている色々な作家さんと知り合いになったことがきっかけで、「展示空間を一緒に考えてくれない」などの話がでてくるようになって。次第に、アート界隈の方々と繋がりが生まれていきました。
ー昨年は、映像作家である林勇気さんとインスタレーションを行われていましたね。
とても興味深い体験でした。展示建築と映像で、内と外の境界を、光と時間が行き来するという試みを行いました。
出演者みんなで頭を付き合わせて、一緒に考えながらつくりあげました。そういう新しい魅せ方があるんだなと発見や気づきも多く、とても面白かったです。
ー例えば、どんなところでしょうか?
作家さんは、素材の捉え方がとても柔軟だと思います。鉛筆という素材を使う意味とか、作品をつくる上で深く考えていらっしゃいますよね。作家さんが普通だと思っている考えや発言が、僕たちからするとショッキングな考え方だったりすることもあって。ふむ、それでもいけるかもしれないとアイデアをもらって、僕たち自身も建築的にトライする時もあります。例えば、壁をあえて断面構造が見えるように施工したりとか。
ー作家さんとの空間作りは、その他の建築の仕事にも変化をもたらしましたか?
僕たちは主に、空間構成が先にあってから、その中に置かれるものについて考えますが、作家さんはそのオブジェクトに対する強い想いありきなので、それらの情報を整理してから構成を組み立てるというのは勉強になります。なんといっても、作家さんの考え方と自分たちの意見をぶつけあいながら、つくりあげていく過程が面白いです。以前からアートには興味がありましたが、美術館やギャラリーに見に行って、アイデアを拾いにいくという感じで。それとは、また違う体験ですね。お互い調和しながら組み立てる、という感じでしょうか。
ーSTUDIO MONAKAさんって、色々イベントも企画されていますよね?
コミュニケーション作りから入っていくのも、建築家の仕事だと思うんです。ものをつくるだけでは、だめだというのが僕たちの考え方。人の動きがあって始めて場が生まれる。色んなイベントに携わっているのも、そこにいる人たちがどういう動きをするかを実験している、という意味合いもあります。
ー最近ではどんな活動をされていますか?
地域に入り込んで、かかわり合いながら共につくっていく、というようなことに今チャレンジしています。先日、京都の京丹後にある倉庫で、会場構成して、一日限りのイベントを行いました。倉庫の持ち主の工務店のお爺ちゃんがもともと木材コレクターで、その廃材を使って何かできないかというのがオーダーだったのですが。朝っぱらから、地域の人と協力しながら準備をしました。
そうすることで、人と人との繋がりが自然と生まれてきて、近所の人がご飯を持ってきてくれたりして。僕たちはプロのライティングデザイナーを呼んで、ライティングを施して上質な空間をつくって、環境を整えました。とても盛り上がりましたよ!
ーイベント後、地域の方との関係は繋がっていますか?
もともとは、5年後10年後にこの場所をリノベーションして、村みたいにしようという話から始まったもの。地域の方々と繋がって、別のスペースをシェアアトリエにしてみたりとか、アイデアが生まれ始めています。第一段階として、イベントをつくって、人の流れをまず見てみようというところです。
ーSTUDIO MONAKAのこれからについて聞かせてください。
僕たちの仕事は、時間軸にとらわれずに、場や空間を作ること。「時間軸」というのは、例えば、大きな建築物だと100年以上耐えうるようなものでなければいけないし、店舗だと5〜10年というスパンだったり、イベントだと1〜2週間、場合によっては、たった数時間の場合もあります。けれど、”空間をつくる”という意味では建築という行為には変わりないと考えて、同じ目線で考えてつくっています。
今は、ジャンルを超えていくことがテーマの時代。ジャンルを超えて活躍する人が増えてるなと、最近感じています。そういう意味では、建築っていい意味で「器」だと思っているんです。アートも食も、全てに自然に関われる。そういう意味で、関わっている幅が多岐にわたっているということは、いい仕事をさせていただいていると思います。
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