東アジア文化都市 2017 京都 アジア回廊 現代美術展

~世界遺産二条城に、日中韓のアーティストによる巨大現代アート出現~

In トップ記事小 レビュー by Aki Kuroki 2017-10-05

『アジア回廊』ではコア期間となる8月から11月にかけて、伝統的な文化芸術、現代美術、舞台芸術、音楽、マンガ・アニメなど多様なイベントを予定しており、なかでも現代美術展は世界遺産でもある「元離宮二条城」の全域と、元明倫小学校の建物をリノベーションした国の登録有形文化財「京都芸術センター」が会場です。アートフェアといえば点在する複数の会場を見て歩くものが多い中、本展はぎゅっと中味濃く2会場のみ。主会場の二条城の建物や庭園はほぼ回廊式になっているので、ゆったり城内散策をしながら作品鑑賞を楽しめるのがうれしいですね。

参加作家は、日中韓のベテラン世代の草間彌生、蔡國強(ツァイ・グオチャン)、チェ・ジョンファ。また、キムスージャ、何翔宇(ヘ・シャンユ)、ヤン・フードン、ルー・ヤンらなど国際的に活躍する中国・韓国のアーティストたち。日本からは、やなぎみわ、宮永愛子、久門剛史、今村源らなど、京都を拠点に国内外で活躍するアーティストたち。総勢25組を紹介しています。

まずは、京都芸術センターの展示作品から。傾向としてはコンセプチュアルな作品が多く見られます。

 

京都芸術センターから二条城へ移動、徒歩だと約20分、タクシーだとワンメーターほどで到着。会場が世界遺産ということもあってか “場”を意識した作品が多く見られ、京都の古の文化と現代アートの融合に思わす引き込まれてしまいます。


二条城/ツァイ・グオチャン(蔡國強)と作品。


二条城/チェ・ジョンファ 《フルーツの木》 オープニング・イベントが行われた場所でひときわ目立つ、1本の木にたわわに実のる色とりどりのフルーツ。バルーンの果物は呼吸するかのように揺れている。


二条城/三嶋りつ惠 《光はいつでもそこにある》 二条城の堀に着想を得た作品。ヴェネツィアのガラス職人と協働で制作した600個のガラスのオブジェが水面に浮かび、風に揺らぎ、光を受け、天候や時間によって表情を変え続けるインスタレーション。

京都の地に平安京が造営されたのは794年。唐の都長安(現在の西安)を倣い、平安京の開発に大きく関わった渡来氏族の秦氏は様々な文化や生活様式をはじめ、土木、釜業など多くの技術を日本にもたらしました。京都には、「銅駝」「陶化」「崇仁」など長安に由来する町の名称が今もなお残っており、東アジアとのつながりを強く感じることができます。また、遣唐使や遣明使の派遣や、朝鮮通信使の来訪などを通じて東アジアと人々や文物が往来し、京都の豊かな文化芸術が育まれてきました。中国や朝鮮半島から伝わった資料や技能が、今日では日本だけで受け継がれているものも多くあり、反対に中国や韓国などから日本に学びに来ることもあるのだとか。文化交流や相互理解の必要性などが叫ばれるずっと大昔から、先人たちは関わりを持ち続けてきました。

おりしも、来年2018年から二年おきに東アジアで3期連続、集中的にオリンピックが開催される予定です(※1)。不穏なニュースや情報が飛び交う現代ですが、だからこそ今、スポーツや文化・芸術、民間レベルの交流など、これらが大きな意味を持つのではないでしょうか。『アジア回廊 現代美術展』をはじめとするアートフェアは祭典にすぎないかもしれませんが、そこから垣間見える世界は国境を軽々と越え果てしなく広いといつも実感させられています。

会場の展示が見られる時間は、二条城は17時(最終入場は16時)、京都芸術センターは20時までなのでご注意を。なお、「東アジア文化都市 2017 京都」コア期間事業の舞台芸術部門にあたる『KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2017』は10月と11月、音楽部門にあたる『京都市交響楽団 meets 珠玉のアジア』は11月5日、漫画・アニメ部門にあたる『京都国際マンガ・アニメフェア2017』は9月から11月にかけてそれぞれ開催予定、こちらも合わせて要チェックです。


(※1)2018年 平昌冬季オリンピック(韓国)、2020年 東京夏季オリンピック(日本)、2022年 北京冬季オリンピック(中国)

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東アジア文化都市 2017 京都「アジア回廊 現代美術展」

【会 期】2017年8月19日〜10月15日
【会 場】二条城、京都芸術センター
【住 所】京都府京都市中京区二条城町541(二条城)、京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2(京都芸術センター)
【時間等】二条城会場 8:45〜17:00(最終入城 16:00)なお二の丸御殿台所・東南隅櫓は 9:00〜16:45      ※休城日は要問合せ / 京都芸術センター会場 10:00-20:00 ※会期中無休
【観覧料】 600円(有料エリア展示単独チケット) / 1200円(二条城+有料エリア展示セットチケット) ※京都芸術センターは無料
【参加作家】西京人、草間彌生、堀尾貞治+現場芸術集団「空気」、今村源、中原浩大、三嶋りつ惠、やなぎみわ、伊藤存、宮永愛子、花岡伸宏、久門剛史、谷澤紗和子、ヒスロム、中村裕太+谷本研、キムスージャ、チェ・ジョンファ、オ・インファン、ハム・キョンア、ミックスライス、ヒョンギョン、蔡國強(ツァイ・グオチャン)、楊福東(ヤン・フードン)、陸揚(ルー・ヤン)、何翔宇(ヘ・シャンユ)、陶輝(タオ・フイ)
【 H P 】http://asiacorridor.org/
【 TEL 】075-661-3755(京都いつでもコール 年中無休 8:00-21:00)/075-222-2733(事務局)075-222-2733
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Aki Kuroki

Aki Kuroki . 兵庫県出身。広告代理店にてアカウントエグゼクティブとして主に流通業を担当、新聞・ラジオ・テレビ・雑誌などのメディアプロモーション、イベント・印刷物などを手掛ける。神戸アーバンリゾートフェアではイベントディレクターとしてフェア事務局に赴任。 その後、10年間心理カウンセラーのかたわら、ロジャーズカウンセリング・アドラー心理学・交流分析のトレーナーを担当。神戸市 保険福祉局 発達障害者支援センター設立当初より3年間カウンセラーとして従事。 2010年よりフリーランスライターとして、WEBや雑誌の編集・インタビュー・執筆などを手掛けた後、現在は美術ライターとして活動。アートの世界のインタープリターとしての役割を果たしたい。 ≫ 他の記事

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