1980年代に開館した日本の多くの美術館は今、耐震工事や配管工事といったリニューアルをするところが多い。富山市にある富山県美術館は、場所も建物も一新し、前身である富山県立近代美術館のコレクションを引き継ぎながら、新たな美術館として今年8月26日に全面開館した。
富山県美術館 入口から見た外観
もはや美術館が作品を見る場所だけではないとき、富山県美術館は、幅広い層に向けて積極的な取り組みを行うようにしている。
ガラス張りの建物は内藤廣(関西ではとらや京都一条店を手掛けている)、ロゴマークは永井一正(デザイン界の巨匠)など著名な建築家、デザイナーが関わっている。自治体主導の美術館にありがちなダサさは見当たらない。
まずは作品を見てみよう。
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 《マンジの肖像》1901年 富山県美術館所蔵
11月5日まで「富山県美術館開館記念展 Part 1 生命と美の物語 LIFE - 楽園をもとめて」展を、また、11月14日まで「コレクション展 I」を開催している。
コレクション展示室では、作品だけでなく、その横に、
作品横にある、作品説明、作品キャプション、QRコード
コレクションの主要作品の一部作品に対して、作品キャプション(タイトルや作家名、制作年などの情報)だけでなく、丁寧な作品の説明、QRコードがある。専用のアプリを入れたスマートフォンでQRコードを読み取ると、
スマホでQRコードを読み取ると、作品の解説を読んだり聞くことができる。
とても詳しい作品の解説を、文字情報として読むだけでなく、イヤホンガイドのように聞くこともできる。
コレクション(美術館の所蔵作品)は、Toyama Prefectural Museum of Art and Designという美術館の英語名が示す通り、美術とデザインの作品が並ぶ。デザインといっても幅広いので、展覧会場はこんな感じだ。
3階デザインコレクション 展示室(展示室5)
2017年9月に私が行った際にしていた「デザインコレクション I」は、収蔵される13,000点を超えるポスター、1990年から収集し始めた椅子から、テーマに合ったものが選ばれて、展示室に並んでいた。どこかのショップかと思ってしまうほど!
富山県美術館は、作品だけでなく、空間にも「いいな」と思ってしまう部分が多い。
例えば、京都出身の三沢厚彦の作品が点在していて、この大きな作品には「会えて良かった」と心が休まる。そこで、作品の周りをぐるっと見渡してほしい。
三沢厚彦 《Animal 2017-01》2016-2017年 富山県美術館蔵
作品周辺、つまり壁や天井などに使われている木材、アルミ材、は富山県産!そう、富山県はいろいろなマテリアル産出県であったのだ!!
窓から外を見やると、
3階から立山連峰をのぞむ(天候による/本画像は4月中旬すぎに撮影)
こんなに立山連峰がきれいだなんて!卒倒するぐらい、ナイスビュー! !
さらに屋上へ行ってほしい。屋上庭園「オノマトペの屋上」として開放し、オノマトペ(擬音語や擬態語)を元につくられた、佐藤卓氏デザインの子ども向け遊具が置かれている。
屋上庭園「オノマトペの屋上」のようす
もちろん大人、子ども向けに、アトリエ、授乳室が備わったキッズルームといった施設も充実している。
富山県美術館は、富山県富岩運河環水公園の一角に位置し、その公園もとても居心地が良かった。関西からだと、片道3時間前後、とちょっとした小旅行にうってつけ。行くなら今、かもしれない。
【展覧会名】「富山県美術館開館記念展 Part 1 生命と美の物語 LIFE - 楽園をもとめて」、「コレクション展 I」「デザインコレクション I」
【会場】富山県美術館
【会期】「富山県美術館開館記念展 Part 1 生命と美の物語 LIFE - 楽園をもとめて」2017(平成29)年8月26日(土)~11月5日(日)
「コレクション展 I」および「デザインコレクション I」は~11月14日(火)
【公式サイト】http://tad-toyama.jp/