最近「インスタ映え」「フォトジェニック」という言葉をよく耳にするようになりました。例えば「インスタ映えスイーツ」、「インスタ映え旅」など、SNSを通じて「フォトジェニック」な人・モノ・場所を知ることが出来る時代です。
では、アートに関してはどうなのでしょうか。コンテンポラリー・アートを扱う展覧会やアートフェアにおいては撮影可の作品が多いですが「フォトジェニック」なアートとはどのようなものなのでしょうか。
また、SNS(Instagram / Twitter)の流行によって、展覧会及び作品への感想に簡単にアクセスことが出来るようになった今、アートの鑑賞体験、鑑賞者の作品への参加は、どのような形をとるのでしょうか。「インスタ映え」的鑑賞と呼べるものが存在するのでしょうか。
今回は、SNSでよくシェアされている「開館40周年記念展 『トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために』国立国際美術館」、「横浜トリエンナーレ2017『島と星座とガラパゴス』」、「『サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで』国立新美術館 × 森美術館」の3つの展覧会をリサーチしてみました。
作品と私 -Instagram-
いずれの展覧会においても、食べ物や景色と同様、カラフルな芸術作品がよく撮られており、自分自身が映りこんだ写真が多く見られました。また、コンテンポラリーアートは政治的なテーマの作品も多いですが、それが作品のモチーフとしてはっきりと表れているものはあまり投稿されておらず、「かわいい」「きれい」な印象を与える作品がよくシェアされていました。
すごい! 難しい!の先に -Twitter-
Twtiterから見える鑑賞者の思考プロセス
撮影可能な作品が少ない展覧会では、テキストベースのTwitterで、個人の「理解」の形、自由な感想が見られました。一方、撮影可能な作品が多い展覧会では、Instagramと同様、Twitterにおいても、作品を独創的に、あるいは美しく撮影することへの熱意が感じられました。そこには、作品をイメージとして感覚的に見る、いわば「インスタ映え」的鑑賞と呼べるようなものが存在すると言えるのではないでしょうか。
「難しいけど面白い」
コンテンポラリーアートの鑑賞者の感想で、よく見られるのが「難しい」という感想です。その「難しさ」について思考をめぐらせた先に、「面白さ」が存在するようです。
行ってきました #横浜トリエンナーレ2017
現代アートは、わけわからん!てなればなるほど、腹の底から笑いと共に力が湧いてきます。
今回もたっぷりのわけわからん!を堪能できました😋 pic.twitter.com/OLgXrr8KLk— アユ・ヤマネ (@ayu_ymn) 2017年10月22日
開館40周年記念展「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」@国立国際美術館。見応えありすぎで、わかりそうな問題から解くみたいな見方になってしまったけどそれでも面白かった。歯が立たないような作品もあったので、もう一度行けたら音声ガイドつきで見ようと思う。
— たかこ (@harinezutaka) 2018年3月4日
そういえばすこし前ですが、行ってきました。六本木でやってる現代美術展!
謎解きのような現代アートは、解説を読んで、自分なりに考えて、という繰り返しなので疲れます。そしてムズい。でも面白いです。(´・ω・`)#森美術館 #サンシャワー展 pic.twitter.com/SjqUkyAQOY— 桑島明大 “平成生まれFolkSinger” (@akki_kji) 2017年10月13日
「コアなアートファン / ライトなアートファン」
「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」展には、作品や展覧会全体について論理的に語るアートファンもいれば、「素人お断り」な雰囲気を感じ取りながらも、作品についての理解を深めようとするライトなアートファンもいます。
大阪国立国際美術館の『トラベラー まだ見ぬ地を踏むために』展、インスタレーションやパフォーマンス、「聖なる一回性」を含むアートを美術館で展示する手段について考えさせられた。異様なまでの非現実性に精神を持っていかれる pic.twitter.com/wTDqIY5uH3
— PG (@mou_ittyou) 2018年2月3日
国立国際美術館、トラベラー。
あまりに前衛的な作品群、その作品に一切説明なしの強気な展示室。考えすぎて頭が疲れました💦
でも、学芸員さんのギャラリートーク聞いたら一気に見え方が変わった。再び作品見て回り結局計5時間半滞在。
毎度思うけれど、ここの学芸員さんの企画って素人お断りすぎる…— とり。 (@tori_sah) 2018年2月18日
「フォトジェニックを求めて」
テキストベースのTwitterですが、撮影可能な作品が多いと、文章からも作品撮影へのこだわり、熱意が見られます。写真撮影という新たなアートの楽しみ方は、文章中心のSNSにも広がっています。
パーティーの前に #サンシャワー展 見てきた✨✨
前衛的というか、国も文化も宗教も違うから解説見てもわけわかめだった💧純粋に作品としていいな、と思うのを撮ってきた📷#森美術館 #東南アジアの現代美術展#写真 #写真好きな人と繋がりがたい #お洒落 #お洒落さんと繋がりたい pic.twitter.com/JqP1G3yfey— めめ美 (@mufumufu1923) 2017年8月26日
サンシャワー展内容は難しかったけどSNSに映える内容となっていて写真取り放題だった!(一部除く)
自分がその文化の世界に溶け込めて写真撮れるっていうのが魅力的だったな~
これは正直一人じゃなくて誰かと行きたかったw
#サンシャワー展
#森美術館
#国立新美術館 pic.twitter.com/d0S3CV9FYe— SUNA-Cola (@suna_tg) 2017年10月23日
【 まとめ 】
今回は写真を中心としたInstagramと、テキストを中心としたTwitterとの比較を通じて、鑑賞者とアート作品とのかかわり方を分析してきました。Instagramの台頭によって、アートを感覚的に、あるいはイメージとして鑑賞し、独創的な写真を撮影してシェアするという新たな楽しみ方が生まれています。そして作品がSNSでシェアされることによって、展覧会がフォトスポット化・観光地化する現象も起きています。Twitterでは、これまで可視化されなかった個人の感想や意見が自由に交わされています。
一方で、Instagramのアイキャッチや色彩表現、Twitterの140字という短い文字情報の制約によって、即時的な感想に留まっており、その投稿だけでは私たちはその人の深い思考プロセスまでは読み取れないかもしれません。
ただ、SNSはこれまでコンテンポラリーアートの展覧会に足を運ばなかった人々が、気軽に鑑賞しようと思うきっかけでもあります。これから、「難しい」「きれい」などの即時的な印象の先にある、「自由な思考」をより活性化させるような新しいSNSが出現するかもしれません。私たち鑑賞者とアート作品の関わり方は、より多様化していくことでしょう。
【 H P 】
「開館40周年記念展 『トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために』国立国際美術館」
「横浜トリエンナーレ2017『島と星座とガラパゴス』」
「『サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで』国立新美術館 × 森美術館」
<KABインターン>
ナイトウリコ:京都で美学芸術学を専攻する大学院生。鑑賞者と作品、アーティストとの関わりに興味あり。
[インターンプロジェクト]
本企画はKansai Art Beat(以下略KAB)において、将来の関西のアートシーンを担う人材育成を目的とするインターンプロジェクトの一環です。インターンは六ヶ月の期間中にプロジェクトを企画し、KABのメディアを通して発信しています。