今年は、日本とスイスにおける国交樹立150周年にあたります。この節目となる年に「スイス ヴィジュアル|スイス現代写真、映像芸術の現在と過去」展は、西枝財団の助成事業第2弾として開催しています。京都の上賀茂神社にほど近い瑞雲庵(ずいうんあん)。
この展覧会は、スイスの写真、映像芸術の現在と過去に注目し、スイス国内において活動する若手から著名なアーティスト、そしてジュネーブ市現代美術コレクションからセレクトされたビデオアートも加え、会期を前後期の2期間にわたって開催されます。
展覧会会場となる瑞雲庵は、築100年以上の元両替商邸宅であり、茶室や蔵、美しい庭園を持ち、京都らしい風情を持ち合わせています。この京都らしい町家を会場に、スイスのアーティストの作品がところ狭しと並べられているところが、この展覧会の面白みの一つかもしれません。
会場に入ると、出迎えてくれるのがコレクティフ・ファクトによる映像作品です。アナロイ・シュナイダーとクロード・ピゲによる二人組のユニットです。大きなスクリーンに映し出された映像と音声によって、ここが展覧会会場である事を教えてくれます。
コレクティフ・ファクト《The Course of things》2012
奥の部屋に進むと、一転して静かな装いの部屋が現れます。シルヴィ・ロドリゲスの作品は、白いハンカチと写真(図版)を構成した作品が展示されています。ハンカチ(布)の持つ繊細さが、作品に静寂を与えています。またトマ・メゾンナスの作品は、どこか外国の景色を思わせる写真ですが、日本の掛け軸という形式に落とし込む事で、空間にとけ込み、それでいて異彩を放つ作品に仕上がっています。
マシュー・ガフスの作品は、作家の故郷であるアルプスの山々を撮影したものです。作品の風景が、瑞雲庵の庭園の緑と相まって、よりいっそう青々と感じる事が出来ます。
茶室には、エルベ・グローマンとアンドレアス・クレシグの作品が展示されています。写真作品ですが、実像を読み取る事は困難であり、その実像を伴わない図像からは、色彩だけが認識できます。色のない和室で、色彩が際立ち、作品の生々しさを感じさせます。
エルベ・グローマンの作品は、会場の廊下奥と蔵にもあり、廊下の作品はマチュー・シェルビニとの共作となります。ゆらゆらと風になびき、くるくると回る作品に思わず脚を止めてしまいます。
この作品は、《raoulpictor》というデジタルアート作品を作れるアプリのアナログバージョンです。このアプリでは、登場する画家が描いた絵画を画面に表示させ、あたかもその場所にあるかのような写真を撮影する事ができます。つまり何もかかっていない壁に、絵画を飾っているような写真が撮影できる訳です。このアプリを体験してから作品を鑑賞すると、また一層作品の面白みが理解できます。
蔵には、エルベ・グローマンの作品と共に、パトリック・ワイドマンの刺激的な作品が飾られています。
また母屋の2階には、ピピロッティ・リストの作品が展示されています。屋根裏の部屋にスクリーンがあり、ノイズまじりの映像が流れています。屋根裏という場所性と作品のもつ力強さによって、1階とはまた違った展示空間となっています。
その他にも、ペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイス、アラン・ジュリアー、ジェレミー・シュヴァリエなど、13人の作家による14点の多彩な作品を鑑賞する事が出来ます。
本展覧会の企画者である天野雅景は、「展覧会を企画をする立場として、新しいモノを提案する。今までに見た事のないビジュアル、キュレーションを心がけている。将来性豊かな若手から巨匠まで、なかなかこのようなラインナップの展覧会は実現する事が出来ない。この展覧会は、日本とスイスの文化の架け橋になっていく」と語っています。
瑞雲庵という日本の風情を残す会場で、スイスのアーティストたちが織りなす、まさに文化の架け橋となっている展覧会。後期には作家も入れ替わり装いも新たに展示がスタートしますので是非脚を運んでみてはいかがでしょうか?
写真撮影:山田毅
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スイス ヴィジュアル – スイス現代写真、映像芸術の現在と過去 –
場所:瑞雲庵 (上賀茂)
会期:4月25日~5月11日 (第1期)5月16日~6月1日(第2期)
11:00-17:00|木~日曜日
*5月5日(月)は、開館いたします
サテライト企画|アンドレアス・クレシグ展《ソープ スケープ》
場所|白沙村荘橋本関雪記念館(銀閣寺近郊)
11:00-17:00|会期中無休
*懶雲洞のみ無料、茶室倚翠亭展示の鑑賞は入館料要